ここ最近人気のヴィンテージ・ギター。その理由とは?
──ここ最近、ヴィンテージ・ギターの人気と価格高騰の勢いがすごいですね。
長島:世界的にそうなっていますね。日本のミュージックシーンでも、音楽番組に出ているようなミュージシャンが、改めてヴィンテージ・ギターを手にしていることも人気が高まった大きな理由だと思います。そういった流れの中で、若い方でもヴィンテージを手にしてみたいという方が増えてきています。例えばフェンダーのジャガーとか。あとジャズマスターの売れ行きもすごい。
──以前はレス・ポールやストラトが人気でしたね。現在はどうですか?
長島:もうそこは揺るぎがない。完全に横綱。ただ、なかなか気軽に買える値段ではないですね。ですがレス・ポールやストラトキャスターを求めてきたお客さんであっても、当店で他のギターを試してみると、違うモデルを気に入って購入される方もいます。やっぱり演奏される方は、自分の頭の中で流れている音のイメージが出るモデルに行き着きます。
──なぜヴィンテージ・ギターに多くの方が、惹きつけられると思いますか?
長島:それは人によって色々な感じ方があると思いますが、僕がこの世界に飛び込んでヴィンテージ・ギターと長年接してきた経験から思うことは、飽きないでずっと弾いていたくなるギターが多いんですよ。僕はそういう感覚です。このギターを弾いていると1日楽しく過ごせる、そんな気持ちにさせてくれますね。今はそこまでは思わないですが、まだ20代の頃にはギターがあれば、ご飯はいらないって思ってました(笑)。その感覚があったからこそ、この世界に飛び込んだと思います。
貴重なモデルが集まる「ハイパーギターズ」。
──ちなみに現在ヴィンテージ・ギターは、いつ頃までに作られたモデルを指しますか?
長島:以前とは少し変わっていると思いますが、自分の感覚ではメーカーがリイシュー・モデルを販売し始めるよりも前ですね。ただリイシューが発売され始めた’80 年代のギブソン・コリーナ・シリーズは、すでにヴィンテージとして認知されています。
──現在これだけの在庫を集めることは大変ですよね。なぜ、ハイパーギターズさんには貴重なモデルが集まるのでしょうか?
長島:これまで築きあげたネットワークもですが、うちのオーナーがヴィンテージ・ギターを好きだからに尽きますね。楽器店ですから商売ではあります。でも、ある意味ではそれを超えた熱量がないと、ここまでの専門店に育てることはできないですね。オーナーも含め、スタッフも同じだけの高い熱量があったからこそ、そこに惹かれたギターや同じように熱意のあるお客様が集まってきてくれたと思います。
──確かに。熱量がないと続かないですよね。
長島:言葉は悪いですが、みんな愛すべき“ギターバカ”なんですよ(笑)。でもその熱量があったからこそ、色々なことを乗り越えられたと話してくださる方も大勢います。
──そうですね。それに1度は所有しないとわからない感覚もありますし。
長島:確実にありますね。自分で大枚を叩いて買ったけど、“何で買ったんだろう”って、自問自答したり(笑)。でも結果的に、ヴィンテージ・ギターを買うことで得ることって、とても多いんですよ。それはモノとしてだけでなく。色々な経験とかモチベーションも含めてですね。だからヴィンテージを買って本当に良かったと言ってくれる方はすごく多い。何かしらの気づきとか、色々なことを感じられたとかね。それにヴィンテージ・ギターを所有したからこそ、普段会わないような方と繋がることができたりします。
──たしかにヴィンテージ・ギターで繋がるコミュニティがありますね。
長島:とにかくヴィンテージ・ギターを愛する心は、ハリウッド・スターだろうが有名ミュージシャンだろうが変わらないんです。だからギターの話をするだけで、面白くてしょうがない。そこで心の繋がりができるので、深い友人になれたりします。なぜアメリカでエレクトリック・ギターが生まれたのかとか、どんな素材が使われてとか、色々な興味が湧いてくるわけです。そうすると時代背景とか、どうしてこのメーカーはこのギターからスタートしたとか、そういう深掘りをしたくなってきて。そういう興味が湧くと、ワクワクするし、心が豊かになりますよね。その感覚を共有できる人と知り合うことで、人生が楽しくなるはずです。そこもヴィンテージ・ギターを所有する楽しさなんです。
──なんだか1本ほしくなっちゃいました(笑)。
初心者に指南する、ヴィンテージ・ギターの選び方とは。
長島:ただ今は価格的に購入するハードルが高くなったので、少し心苦しいところはあります。
──その高いハードルを超え、初めてヴィンテージ・ギターを購入する方にショップとしてのアドバイスをいただけますか?
長島:値段の高い安いは関係なく、自分で弾いてみて、何を感じるかを大切にして選んでみてください。もちろん予算があるので、自分の好みに近いギターが見つかれば、とりあえず所有してみる。まずは最初の1本を手に入れることが大事です。理想を追求し過ぎてしまい、最初の1本が買えないままという人もいますので。
──現在は、常時どのくらいギターを在庫していますか?
長島:以前は400本くらい置いていましたが、今は200本くらいですね。これはコロナで海外に仕入れに行けないことも関係しています。
──これまで販売したギターの中で、最も高額だったギターはいくらですか?
長島:たしか1億円ジャストだったと記憶しています。
──1億ですか! 手に入れやすい入門者向けのヴィンテージ・ギターを教えていただけますか?
長島:お求めやすいのは’70年代に作られたギターですね。試奏してピンとくるものがあれば、ぜひ購入してみてください。’70年代のレス・ポール・カスタムとか、改めて弾いてみると“アレっ、こんなに良かった?”みたいに思うことがありますよ。あと’70年代のテレキャスターも。ヴィンテージ初心者の方は、この辺りから試してみてもいいのかなって思います。ヴィンテージ・ギターを持てば、人生がもっと濃くなるはずです(笑)。ぜひ博物館を見る感覚で気軽に1度ご来店ください。色々とご相談に乗りますよ!
【DATA】
Hyper Guitars
東京都新宿区百人町1-11-23 B1F
TEL03-5386-4910
営業/13:00~20:00
休み/水曜
(出典/「Lightning2022年6月号 Vol.338」)
Text&Photo/S.Kikuchi 菊池真平
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