イームズのシェルチェア2022年現在の市場価値は?

  • 2022.05.25

ミッドセンチュリーを代表する名作ファニチャーとして今なお世界中に愛される”イームズ・シェルチェア” こと、アメリカ・ハーマンミラー社のシェルチェア。ここ数年、コロナの影響で業界は激変している様子。そこで改めて時代に潮流をもたらした世紀の銘品、イームズのシェルチェアの最新事情をチェックしよう!

「パームスプリングス」代表・長崎海彦さん

名古屋のカルチャータウン大須の外れにあるアンティーク&ミッドセンチュリー家具専門店「パームスプリングス」代表。自身も少年時代よりアメリカンカルチャーに感化され、20代の頃からイームズのシェルチェアをコレクトする愛好家でもある。自宅もミッドセンチュリー家具で統一され、店頭に並ばないレアなアイテムも多数あるそう。いずれ自宅も登場予定?

プロダクツデザインの歴史を変えたイームズ。

チャールズ&レイ・イームズ夫妻の代表作として知られるシェルチェアが誕生したのは’40年代後半。画期的なデザインに加えて、軽量 で高い実用性や快適性、そして、当時の最新素材だったガラス繊維で補強した強化プラスチックFRPを使ったことも話題を呼び瞬く間に有名になった。現在、正規販売を行うハーマンミラー社では環境面を考慮してリサイクル可能なポリプロピレンに変更している

第二次大戦中にアメリカ軍需産業が生み出したプライウッド(成型積層合板)やFRP(ガラス繊維強化プラスチック)は、戦後になると様々な分野で応用されるように。そこで数々のプロダクトデザイナーが家具を生み出した。

この1950年代に登場した家具を総称して「ミッドセンチュリー(家具)」と呼ぶが、名品揃いのなかでその代表格といえばチャールズ&レイ・イームズ夫妻が考案したハーマンミラー社のシェルチェアで異論はないだろう。

それまでの木製家具とは異なり、FRPを素材に採用。また、明るく開放的な時代を反映するかのようなビビッドな色使い。そしてコンピュータではなく手や身体で確かめながらデザインされたシルエットはオーガニックと形容され大きな話題を呼び、オフィスや学校、公共施設など各方面に多数導入されるだけでなく、現代に至るまでの工業デザインに大きな影響を与えてきた銘品だ。

日本でも’90年代後半から2000年代初頭にミッドセンチュリーブームが巻き起こったことを覚えていて、いつか家を建てたときや引っ越したときに入手したいと思う読者諸兄も多いはず。だが、ここ数年、特にコロナの影響でヴィンテージ界の様相が大きく変わってきているという。

コロナの影響で品薄&高騰、国内でも扱う店舗数も激減。

イームズのシェルチェアは過去にこの連載でも取り上げているのだが(2018年3月号)、ここ数年で市場が大きく変動している。

「アメリカに買付けにいっても最近の値上がり方は異常ともいえます。モノによっても差はありますが、数年前に比べて数倍近くになっていることもあります」

そう話すのは、愛知県名古屋市にあるミッドセンチュリー家具の専門店「パームスプリングス」代表の長崎さん。

「ここ最近はアメリカ本国やヨーロッパだけでなく、アジア諸国、特に韓国でも人気が高まっていて世界的に価格が上昇していることに加えて、コロナの影響で一気に価格が上がりましたね。アメリカ車と同じく、かつては日本国内にたくさんあった在庫も海外の人たちに買われていって国内の在庫も少なく、オークションサイトでもあまり見かけなくなりましたね」

と、かなり寂しい状況のようだ。今ではリプロダクト品も手軽に買えるだけに、あえてヴィンテージにこだわる人でなければなかなか手が出せないだろう。

今後価格が大幅に下がることもなさそうなので、どうしても欲しい人はお店やネットをこまめにチェックして安価な出物があれば即入手すべし!

FRPを使った最初のモデルがこちらのアームシェルチェア。1950年〜
アームシェルチェア発売から数年後に登場したサイドシェルチェア

市場価格を知る!

年代や状態はもちろん、カラーのレア度で価格は大きく異なるが、在庫数の多いカラーの場合、初期から作られている(1946年〜)アームシェルチェア、後年(1951年〜)作られたサイドシェルチェアともにシェルのみで5〜8万円程度、レアカラーともなると10万円から20万円を超えるものも珍しくない。また、合皮や生地を貼ったファブリックと呼ばれるモノの方が比較的安価で入手可能だ。

アームシェルチェア

1970 年代らしい明るめのブルーが特徴のアームシェルチェア。ポップな雰囲気を求める人に人気のカラーだ。16万5000円
アームシェルチェアに合皮(ナウガレザー)を合わせたナウガ。シェルとレザー、パイピングのカラーの組み合わせも多数あるが、これは全部がレッドで統一されたレアモデル。13万2000円
1970年代に作られたサイドシェル。ローアンバーと呼ばれる渋みのある落ち着いたカラー。ややレアなカラー。13 万2000円
1970年代製造のアームシェルチェア。深みのあるグリーンで木製家具などとの相性もいいので、長く愛用できそう。16万5000円
濃いグレー〜黒っぽい落ち着いた色合いのチャコールカラーのアームシェルチェア。シックな色合いは和室にも似合いそう? 1960年代製造。16万5000円

サイドシェルチェア

こちらもイームズらしい明るめのレモンイエローのようなイエローカラー。置いておくだけでも部屋の雰囲気を明るくしてくれる。1970年代製。8万8000円
1970年代製造のサイドシェルチェア。ネイビーカラー。重ねて収納できるスタッキングベース付。価格も控えめ。4万6200円
イームズといえば原色カラーというイメージを持つ人も多いのでは。そんなイメージ通りのビタミンカラーであるオレンジが目を引くサイドシェル。5万5000円
恐らく1970 年代製のサイドシェルチェア。グレーとベージュをミックスしたグレージュというオリジナルカラー。控えめな色合いで定番人気のひとつ。5万5000円
淡いブルーのファブリックにダークなグリーンのパイピング。ファブリックは生地などが破れたら交換できないこともあり若干安め。意外と狙い目かも。1977年製。5万5000円

ラフォンダチェア

1960年にNYに開業したレストラン「ラ・フォンダ・デルソル」のためにイームズ夫妻がデザイン。同名のテーブルに収納しやすいよう背もたれ部分が低くなっている。13万2000円

かつてはミッドセンチュリーの家具だけを扱う専門店も数多く存在したが、ネット通販の台頭やアメリカでの人気再燃、諸外国での人気高騰、そして、コロナの影響により国内市場は低迷期。在庫数も少なく価格も高騰しているイームズのシェルチェア。今後さらなる価格上昇が見込まれるので狙うなら今のうち?

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「Lightning2022年3月号 Vol.335」)

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