「パームスプリングス」代表・長崎海彦さん
名古屋のカルチャータウン大須の外れにあるアンティーク&ミッドセンチュリー家具専門店「パームスプリングス」代表。自身も少年時代よりアメリカンカルチャーに感化され、20代の頃からイームズのシェルチェアをコレクトする愛好家でもある。自宅もミッドセンチュリー家具で統一され、店頭に並ばないレアなアイテムも多数あるそう。いずれ自宅も登場予定?
プロダクツデザインの歴史を変えたイームズ。
第二次大戦中にアメリカ軍需産業が生み出したプライウッド(成型積層合板)やFRP(ガラス繊維強化プラスチック)は、戦後になると様々な分野で応用されるように。そこで数々のプロダクトデザイナーが家具を生み出した。
この1950年代に登場した家具を総称して「ミッドセンチュリー(家具)」と呼ぶが、名品揃いのなかでその代表格といえばチャールズ&レイ・イームズ夫妻が考案したハーマンミラー社のシェルチェアで異論はないだろう。
それまでの木製家具とは異なり、FRPを素材に採用。また、明るく開放的な時代を反映するかのようなビビッドな色使い。そしてコンピュータではなく手や身体で確かめながらデザインされたシルエットはオーガニックと形容され大きな話題を呼び、オフィスや学校、公共施設など各方面に多数導入されるだけでなく、現代に至るまでの工業デザインに大きな影響を与えてきた銘品だ。
日本でも’90年代後半から2000年代初頭にミッドセンチュリーブームが巻き起こったことを覚えていて、いつか家を建てたときや引っ越したときに入手したいと思う読者諸兄も多いはず。だが、ここ数年、特にコロナの影響でヴィンテージ界の様相が大きく変わってきているという。
コロナの影響で品薄&高騰、国内でも扱う店舗数も激減。
イームズのシェルチェアは過去にこの連載でも取り上げているのだが(2018年3月号)、ここ数年で市場が大きく変動している。
「アメリカに買付けにいっても最近の値上がり方は異常ともいえます。モノによっても差はありますが、数年前に比べて数倍近くになっていることもあります」
そう話すのは、愛知県名古屋市にあるミッドセンチュリー家具の専門店「パームスプリングス」代表の長崎さん。
「ここ最近はアメリカ本国やヨーロッパだけでなく、アジア諸国、特に韓国でも人気が高まっていて世界的に価格が上昇していることに加えて、コロナの影響で一気に価格が上がりましたね。アメリカ車と同じく、かつては日本国内にたくさんあった在庫も海外の人たちに買われていって国内の在庫も少なく、オークションサイトでもあまり見かけなくなりましたね」
と、かなり寂しい状況のようだ。今ではリプロダクト品も手軽に買えるだけに、あえてヴィンテージにこだわる人でなければなかなか手が出せないだろう。
今後価格が大幅に下がることもなさそうなので、どうしても欲しい人はお店やネットをこまめにチェックして安価な出物があれば即入手すべし!
市場価格を知る!
年代や状態はもちろん、カラーのレア度で価格は大きく異なるが、在庫数の多いカラーの場合、初期から作られている(1946年〜)アームシェルチェア、後年(1951年〜)作られたサイドシェルチェアともにシェルのみで5〜8万円程度、レアカラーともなると10万円から20万円を超えるものも珍しくない。また、合皮や生地を貼ったファブリックと呼ばれるモノの方が比較的安価で入手可能だ。
アームシェルチェア
サイドシェルチェア
ラフォンダチェア
◆
かつてはミッドセンチュリーの家具だけを扱う専門店も数多く存在したが、ネット通販の台頭やアメリカでの人気再燃、諸外国での人気高騰、そして、コロナの影響により国内市場は低迷期。在庫数も少なく価格も高騰しているイームズのシェルチェア。今後さらなる価格上昇が見込まれるので狙うなら今のうち?
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「Lightning2022年3月号 Vol.335」)
Text/M.Terano 寺野正樹 Photo/M.Kato 加藤政憲 取材協力/ パームスプリングス www.palmsprings.jp
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