アウトドアウエアの技術が落とし込まれた、 軍用レイヤードシステム「ECWCS」の市場価値を探る!

最終更新日 2021.10.18 公開日 2021.07.10

ヴィンテージウエアのなかでも人気のあるミリタリー。今回その価値を探るのは、寒冷地での使用を考えて誕生した「ECWCS」という拡張式寒冷地被服システムを搭載したウエア。

1980年代に登場し、「レイヤリング」と呼ばれる気温に合わせて重ね着する着用方法となるのだが、ミリタリーウエアのなかでも高い人気を誇る。その中からファッションとして人気を集めるアイテムを取り上げる。

「ECWCS」とは?

アメカジファッションの中でも、絶大な人気を集めるミリタリーウエア。その中でも米空軍のフライトジャケットや、米海軍のデッキジャケットと共にファッションシーンで高い注目度となっているのが、米陸軍のECWCSだ。

ご存じの通り、ECWCSとは日本語で「拡張式寒冷地被服システム」と呼ばれるレイヤリングにて防寒性を高める方式だ。

このECWCSが登場する以前の防寒被服システム(M‐50フィールドジャケットからM‐65フィールドジャケットまで)は、ライナーをアウターシェルにボタンで取り付けるライニング方式が主流。さらに言うと、これよりも前、第二次世界大戦中の’43年に誕生したM‐43フィールドジャケットはECWCSと同様に、インナージャケットとの重ね着であった。これは現在のアウトドア衣料の基本となるレイヤードの考え方と同じだ。

ECWCSを代表する通称ゴアパーカは’86年にM‐65フィールドジャケットの後継として米陸軍が採用。それまで課題であった被服の防水・防風性を解決し、軽量かつ透湿性に優れ、重ね着にて高い防寒性を発揮。ちなみにその考え方は至って単純、それぞれ単体でも衣服として機能する方が、様々な場面での対応力に優れるからだ。

今回はECWCSの代表的アイテムと、そこから派生したPCU(特殊部隊向け)や特殊用途に使用されたアイテムについて、市場価値を調査してみた。

「ECWCS」の市場価値を知る!

キャンプなどアウトドアブームもあり、防寒・防水・防風性に優れる米陸軍のECWCSなどのミリタリーウエアを探す人も多く、またアイテムが市場に出回りにくいという理由もあり、相場は年々右肩上がりの印象を受ける。もちろんコンディションやサイズ、納入時期によって異なる仕様の微差なども、相場に影響してくる。

2000s HAPPY SUIT(WILD THINGS)

アメリカ海兵隊向けのECWCS の中で、寒冷地での軍事作戦時に、山でのツェルト(小型軽量テント)、休息、歩哨活動といった待機行動中に着用するLEVEL7、通称「ハッピースーツ」。その名は2006年9月にテスト生産された初期型モデルのラベルにスマイルマークが描かれたことに由来。その納入数は上下合わせて1000着と、2007年のUSMCのインフォメーションペーパーに記載されている。取引相場は本物であれば10万円以上の値がつくことも。

1980s PARKA, COLD, WEATHER, CAMOUFLAGE(BARRIER WEAR)

1986年に採用されたECWCSパーカとオーバーパンツ。防水透湿素材のゴアテックスを使用したECWCSの第一世代(Gen.1)に当たる。この時代のはまだ5段階のレイヤー設定となり、こちらはレイヤー4に属する。1986年から2006年頃まで採用され続けたことから現存数は比較的多く、プライスも比較的安定。コンディションにもよるがパーカの相場で2〜3万円台、パンツは1万円前後で取引されている。

1990s PARKA, COLD, WEATHER, CAMOUFLAGE(OMNI INTERNATIONAL DISTRIBUTORS, INC.)

ECWCSの第一世代と同時期に生産された、極めて珍しいOPFOR仕様のゴアパーカ。OPFOR(OPPOSING FORCEの略)とは仮想敵部隊の意味で、軍事演習において敵軍を演じる為に編成された部隊のこと。その特殊な用途から生産数も少なく、市場に出回るのは稀だけに5万円以上の値段は付く。

2000s MARS DAS PARKA(PATAGONIA)

アメリカ同時多発テロ事件の報復として開始された不朽の自由作戦。その戦場であるアフガニスタン、ヒンドゥークシュ山脈で活動する特殊部隊員のためにPCUは誕生。様々なアウトドアブランドによる独自規格のレイヤードシステムを採用した。こちらはパタゴニアによって開発されたダスパーカMARS(Military Advanced Regulator System)の後期型。人気故に相場は6万円前後で取引。

2000s MARS R2 JACKET(PATAGONIA)

PCUとはProtective Combat Uniformの略で、特殊部隊を統括する特殊作戦軍(SOCOM)によって制定されたレイヤリングシステムのこと。こちらは市販のR2ジャケットと同デザインであるが、コヨーテブランはMARSのみの展開。市場では5万円以上付くこともある。

2000s PCU LEVEL4 WIND SHIRT(PATAGONIA)

アフガニスタンに展開する米軍特殊部隊に制式採用されたパタゴニア製のウィンドシャツ。部隊が展開するヒンドゥークシュ山脈にて、風冷えを防ぐ目的で着用していた。PCUでは同社がコントラクターとなったのはこのアイテムから。デッドなら4万円前後の相場観。

2000s PARKA,SNOW MARPAT CAMOUFLAGE(STANDARD MFG. CO.)

短命に終わるアメリカ海兵隊が着用していたマーパット迷彩のスノーカモフラージュバージョン。アメリカのミリタリーサープラス市場でも滅多に出ることがないコレクターズアイテムだ。相場観は未知数ながら5〜6万円前後。

2000s PCU LEVEL5 SOFTSHELL JACKET GEN I(ORC INDUSTRIES)

PCUはレイヤーを「レベル」という分類にて区分けし、上半身は7種類のウエアを用意。これは撥水生地のソフトシェルでレベル5。第1世代はORCというメーカーがコントラクターを務めた。第2世代からパタゴニア製に替わる。汎用性の高いアイテムだけに、相場価格は3万円前後が平均値。

2000s PCU LEVEL6 JACKET(PATAGONIA)

こちらはPCUのレベル6となり、防水透湿生地をつかったハードシェルジャケット。市場に出るPCUの中でもパタゴニア製のハードシェルは滅多に放出されないレア物。市場では10万円前後で取引されることが多い。

2000s PARKA, COLD WEATHER, CIVILIAN PROTECTIVE UNIFORM(READYONE INDUSTRIES, INC.)

アメリカ陸軍兵士と、陸軍に従事するアナリストなど民間人を識別するために、1年間トライアルテストを行った、ECWCSの第2世代(Gen.2)。ゴアテックスを使ったレイヤー4に分類される。デッドなら7万円前後の高値を付ける。

2000s MARS CHUTE TO THRILL JACKET(PATAGONIA)

パタゴニアが生産した、特殊部隊のみに採用されていた砂漠型AOR1迷彩のゴアテックスパーカ。PCUのレイヤードシステムでいうレベル6に当たる。この他にも森林型のグリーンベースのAOR2迷彩も存在する。希少価値は高く、相場は7万円近い価格帯。

2000s PCU LEVEL5 SOFTSHELL JACKET GEN II(PATAGONIA)

PCUのレベル5となる撥水素材を使用したソフトシェルの第2世代。寒さをカバーしながら快適に行動できるウエアとなる。開発と生産はパタゴニアが請け負い、READYONE INDUSTRIESという会社が米軍に納入したプロダクツ。相場観は2〜3万円が多い。

2000s PARKA, COLD, WEATHER, DESERT CAMOUFLAGE(TENNESSEE APPAREL CORP.)

米軍が採用したECWCSの第一世代である、砂漠地帯で使用される3Cデザートカモ(通称コーヒーステインパターン)のゴアテックスパーカ。ファッションに取り入れやすい迷彩なので人気が高い。ユーズドなら1〜2万円台、デッドとなると4万円台が付くことも。

近年、ファッションアイテムとして人気を集めているミルスペックのウエア。機能性と機能美を併せ持ったアウターは、寒い季節のメンズファッションには欠かせない存在となっている。モノによっては品薄になっているアイテムも出てきているので、今のうちに手に入れておきたい。

(出典/「Lightning 2021年3月号 Vol.323」)

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