その歴史と、現在手に入れることのできる車種、そしてユーザーの生の声までお届けする。ちなみに現在クライスラーが販売しているクライスラー、ジープ、ダッジ、ラムの4ブランドのうち日本に販売店があるのはジープのみである。
※写真は3代目JK型 Jeep®ラングラー(2016 Jeep® Wrangler Unlimited RUBICON)と、原点となったウィリスMB(1944 Willys MB)。75年の時を経て、MBからラングラーへとJeep®のDNAはしっかり受け継がれていることがよく判る。協力:タイガーオート
第二次世界大戦中に開発された軍用車がジープの始まり。
高い走破性と堅牢でシンプルな作りが時代を超えて人気を誇るJeep®は、第二次世界大戦最中のアメリカで誕生した。当時のアメリカ陸軍は、ドイツのポーランド侵攻時に活躍したドイツ軍のTYPE-82(キューベルワーゲン)に対抗すべく、小型の軍用車の開発を急いでいた。そこで1940年7月に、アメリカの自動車メーカー135社に開発と試作車の製作を要請する。
軍の要望は「自重1275ポンド以下」「車載工具のみで全ての修理が可能であること」「地雷でタイヤが2本破損しても、スペアタイヤを含めた3本のタイヤで100㎞以上走破が可能であること」と、かなり厳しい基準だった。
その後車重に関しては緩和されたものの、要望に応じたのは、アメリカン・バンタム(以下「バンタム」)、ウィリス・オーバーランド(以下「ウィリス」)、そしてフォードのたった3社、しかもその中で実際にプロトタイプを製造できたのはバンタム社のみという状況だった。
ところが経営不振に喘いでいたバンタム社には大量生産を行なえるほどの設備がなかったため、結局バンタムの基本設計に改良を加えたプロトタイプをもとに3社が改めてプロトタイプを製作し、最終的にウィリスの案が採用される。
さらに生産能力確保のためフォードもウィリスの設計書をもとに車両を生産を要請され、’41年にウィリスMB、フォードGPWという名称でそれぞれが同型車両の製造を行なった。これが75年続くJeep®が誕生した瞬間だ。ちなみにバンタムは大型車両製造を任され、このプロジェクトから外されてしまう。
こうして第二次大戦中に誕生したJeep®は、戦中だけでもフォードとウィリス合わせて64万台以上が製造され、各地で大活躍した。
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戦後、軍用車を民間向けに改良。レジャービークルとして人気に。
戦後、ウィリスはこのMB型の高い性能を民間向けに改良し、CJ(Civilian Jeep の意)シリーズとして市販を開始し、大成功を収める。軍用車として当時の技術を結集し、高性能を誇ったJeep®は、市販車としても革新的なクルマだったのだ。
当初はレジャービークルやSUVとしてではなく、高価な農耕機具を購入できない農家のために農業用の多目的車両として積極的にプロモーションが行われ、別名アグリジープとして発売。その後は高いオフロード走破性
が評判となり、レジャービークルや、オフロードビークルとして新たな活躍をすることとなる。
また’50年にはCJ-3Aをベースとして軍用車もポストウォーモデルに改良され、M38型へと進化を遂げている。
その後、さまざまな需要に応じて、ロングホイールベース版やステーションワゴンタイプなど派生モデルをリリースし、Jeep®はウィリス社の主力商品となるが、ウィリス社は’53年にカイザー社に買収されてしまう。後に何度もの買収劇を経て、現在はフィアット・クライスラーオートモービルズの傘下となるが、Jeep®というブランドと特徴的な縦7本のラジエターグリルは今でも健在だ。
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日本で作られた国産ジープ「三菱・ジープ」。
昭和生まれであればクルマに疎くとも、「ジープは三菱」と記憶している人は多いはず。いまではクライスラーが唯一日本に販売店を持つブランドであるが、1956年から2001年まで「三菱・ジープ」であったことは記憶に新しい。
そもそもは、朝鮮戦争への供給のため、日本国内でジープの生産を請け負ったことが始まりであり、その後エンジンの国産化、完全国産化を達成し、1956年より国産ジープとして生産が開始された。自衛隊でも採用されていたが、パジェロの登場により車種縮小、そして1998年に生産が終了となった。2001年には在庫販売も終了し、国産ジープは日本からなくなったが、いまでも中古市場ではお目にかかることが多い。
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ジープにはどんな種類がある? 1番人気は新型「ラングラー」。
現在大人気のラングラーのほか、Jeep®ブランドでは、ボディサイズやテイストに合わせて、様々なモデルをラインナップしている。その数5モデル。もちろんすべて、Jeep®の名に相応しいオフロード走破性能を持ったモデルばかり。自分の趣味やスタイルに合わせて選べる、さすがSUV、クロスカントリーカーの元祖とも言えるJeep®だ。
1.【Wrangler(ラングラー)】圧倒的人気を誇るクロスカントリーカー。
2007年に登場し、2017年まで販売された3代目JK型によって多くのユーザーを取り込んだラングラー。2018年に登場した現行の4代目JL型によってさらに人気は不動のものに。新たにSTART&STOPシステム機能付2.0ℓ直列4気筒DOHCターボエンジンと8速ATが採用されている。
スポーツ、アンリミテッドスポーツ、アンリミテッドサハラ、アンリミテッドルビコンの4グレードがラインナップされたが、なかでもルビコンは高いオフロード性能が特徴のラングラーをベースに、さらなるチューニングが施されており、まさに地上最強のジープと呼ぶに相応しい一台となっている。
詳しくは下記記事で取り上げているので合わせて読んでみてほしい。
2.【Compass(コンパス)】都会で乗るのにちょうどいいサイズ感が◎。
現在は’17年に登場した2代目モデルとなるコンパス。日本仕様のエンジンは175㎰を発生する2.4リッターの直列4気筒マルチエアのみの設定。SPORTとLONGITUDEは6速AT+FFの組み合わせなのに対して、トップグレードのLIMITEDは9速AT+4×4システムを搭載し、コンパクトな見た目からは想像できないほどのオフロード走破性を持つ。フロントフェイスがグランドチェロキーに似ているため、大きいイメージだが、全長4.4mとサイズも手頃なので、都内で乗るのにもちょうどいいサイズだ。メーカー希望小売価格は329万円〜。
3.【Renegade(レネゲード)】見た目以上にパワフルな最も小さなジープ。
ジープファミリーの中では最もコンパクトなモデルとなるレネゲード。エンジンは全車直列4気筒1331ccインタークーラーターボだが、LONGITUDE、LIMITEDは151㎰にFFの組み合わせなのに対して、TRAILHAWKは専用チューニングを施され179㎰を発生。さらにシリーズ唯一の4×4とオフロード性能も折り紙つき。メーカー希望小売価格は299万円〜。
4.【Cherokee(チェロキー)】伝統の車名を受け継ぐミッドレンジモデル。
’18年に大幅なマイナーアップデートを敢行したチェロキーは、現在LONGITUDE、LIMITED、TRAILHAWK の3 グレード。LONGITUDEは177㎰の2.4リッターSOHCを、それ以外のモデルはラングラーと同じ272㎰の2リッターDOHCターボを搭載。日本仕様のトランスミッションは全車4×4に9速ATの組み合わせとなる。メーカー希望小売価格は449万円〜。
5.【Grand Cherokee(グランドチェロキー)】ジープファミリーのフラッグシップモデル。
ジープのオフロード性能はそのままに、乗り心地や快適性を向上したフラッグシップモデル。現在はスーパーチャージャー付6.2リッターV8を搭載し、710㎰を発生するTRACKHAWKがトップグレードとなるが、一方で限定ながらオフロード性能を強化したTRAILHAWKを販売するなど、ジープに相応しいラインナップを誇る。特にSRT8は高級SUVの最高峰だ。メーカー希望小売価格は524万円〜
カスタムするなら、中古ラングラーのJK型が狙い目!
SUV、クロスカントリー車の代名詞であるジープを手に入れるなら、よりアウトドア仕様にカスタムしたいと思っている人も多いだろう。その際、選択肢としておすすめなのがJK型だ。JL型が登場したことによって、JK型は今後手ごろな価格で中古車がゲットできる可能性が高まっている。
写真のJKラングラーはGOBI製のステルスラックを装着し、ルーフテントを搭載している。これなら砂漠でのテント泊でもコヨーテから守ってくれるはず。足回りやバンパーもヘビーデューティなカスタマイズが施され、どんな悪路だってへっちゃらだ。もはやキャンプ場を必要としなう最強キャンパーと言えるだろう。
ちなみにアメリカにはこんなヤバいオフロード仕様にカスタムをしたラングラーも。カスタムが楽しいのも、ラングラーの魅力なのである。
▼詳しくはこちらの記事をチェック!
ついに! あのワゴニアが返ってくる!?
1962年に登場したワゴニアは、’91年に生産が終了するまで、カイザージープからAMC、そしてクライスラーへと親会社を変えながらも基本コンセプトをかえることなく生産を続けてきたモデルだ。特に丸目ヘッドライトの初期モデルは人気。
そして近い将来ワゴニアが復活するという発表があったのだが、一向に進展しないことから、もはやファンからは「出す出す詐欺」なんじゃないかと言われていたのが、ついに大幅に進展。ほぼ市販車に近いカタチで突然コンセプトモデルが発表されたのだ。
それがこちら! かつての面影は少ない、高級感で埋め尽くされたフルサイズのジープ。車名はグランドワゴニアになるらしい。ジープ最高級のモデルが30年ぶりに帰ってくるとあって、今最も注目すべき一台だ。
▼詳細はこちらの記事をチェック!
このように、誕生から80年近く経っても、オフロードやアウトドアを愛する人から支持されるのは、軍用車からスタートしたブランドならではの安心感があるからだろう。せかっくクロカン車、SUVの元祖ジープに乗るなら、日本中あらゆる場所に出掛けたいもの。向上した燃費、コンパクトなモデルの登場で、日本でも人気車種として不動の存在ジープから益々目が離せない!
(出典/「別冊Lightning Vol.164 オールドアメリカンカルチャー」「Lightning 2019年2月号 Vol.298」)
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