【手書きの一筆箋】でお世話になったあの人へ季節の挨拶。

お中元などの季節の贈り物や残暑お見舞いといった時候の挨拶など、日本古来の季節ごとの挨拶の文化が失われつつある。絶え間なく働く方やパソコンに向かって集中している方にとって電話は非効率的な表現手段。贈答品は荷物の受け取りのために特定の場所にいなくてはならない。また、贈り物が受け手の好みや環境に合わない場合などもある。つまり、デジタルメッセージやSNSでの挨拶の方が効率的であり、さらに相手に対しての気遣いにもなっているという。年賀状すらも元旦にお届けできない不精者の私ではあるが、これらの理屈に一切の疑問も抱かないほど脳みそが効率化されているわけはなく、いささかの不安を感じてしまう昭和世代。

オンラインとオフラインを使い分けることが大事。

かくいう私も、会議ではラップトップを広げ、キーボードを叩きながらメモをとるし、会議中に話題に出たことをその場で調べることは多い。議題と資料はあらかじめペーパーレスで共有されているという環境にも慣れ始め、リモートでの会議の方が効率的な場合があることも理解している。

SNSやデジタルツールを介したメッセージにも行間はある。写真や絵文字といった感情表現も多彩になり、それらからの便りで簡便に近況を知ることができるのもありがたいことだ。

また、マニュアル化された取引先からの贈り物にありがたみを感じづらい自分もいる。宛名はデジタル管理され担当者の名前が印字されただけで、取引量や額によって自動的に振り分けられた贈り物にはいささか疑問を感じることはある。

デジタル表現の多彩さも否定しないが、手書きの情報量もすごい。

ただ、一方で夏になると家には毎年同じ包装紙の同じ大きさの包みが届き、夏休みにしか食べたことがないゼリーがあったり、普段はあまり飲ませてもらえなかったのに年末に届く小さな缶ジュースだけは許してもらえたり、あの年の一度くらいしか顔を合わせないおじさんからの残暑見舞いが楽しみだったなぁなんて記憶を蘇らせたりと、贈り物のやり取りから季節や特定の人物を感じることがあったことを覚えている。年賀状を送る段になってから、「あの人は引っ越しをしたっけな」などと思うことも然り。贈り物に添えられたわずかな手書きの文字や、限られた紙幅の中での表現に相手の環境や人となりを知ることもあった。

手書きの便りは、送る側にも受け取る側にも贅沢な時間。

そこで、お世話になったあの人への気持ちを伝える手段として「手書きの一筆箋」という選択肢はいかがだろうか。毎年、それらのタイミングの大型文具店に行けば、その時季に合わせたさまざまな便箋や封筒、メッセージカードなどが置かれている。

一筆箋のほか便箋のサイズやデザインは豊富で、縦書き、横書きは言うに及ばず、原稿用紙型も。季節を感じさせる意匠や挿画もある。相手を思い浮かべて選ぶだけでも時間がかかる上に、内容を考え、手で文章をしたためることになる。返答が面倒だと思いそうな人には「返事は不要です」と書けばいい。そうやって相手を思う時間こそが贈り物や手紙の醍醐味。相手を思い浮かべるその時間を割いたことは、受け手にはきっと伝わる。普段はパソコンに占領されているデスクを片付け、筆記具を選ぶ。紙を選んで内容を考える。文章には絵を書き添えてもいい。封筒を選んで宛名を書く。切手を選んで送る。とても贅沢で嗜好性に富んだ時間だ。この現代において手書きの文通を提案する「ボトルレター」なるサービスだってあるのが、その証左。「文具女子」なる言葉があるように、手で文字を書くことそのものに喜びを感じるという風潮もかなり強くなっている昨今。私も手書きのマイクロ5なるサイズの手帳を手に入れ、日々手書きを楽しんでいる

季節の挨拶もたまにはいいかもと思った人、SNSに疲れてしまった人もお中元を送るのをうっかり忘れてしまった人も。
うだるような夏の夕刻をそんな時間に割いてみても、取引先も上司も親戚も友人も、許してくれると信じたい。

この記事を書いた人
おすぎ村
この記事を書いた人

おすぎ村

ブランドディレクター

『2nd』のECサイト「CLUB-2nd」にて商品企画・開発を担当。貴重なヴィンテージをサンプリングした人気ブランドへの別注などを世に送り出している。2nd、Lightningの元編集長にして現在は2ndのブランドディレクター
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