アウトドアに革命を起こした3大名品を知っているか? まずは「スカイライナー」について語ろう

1920年にアメリカ・シアトルで創業したアウトドアブランド 「エディー・バウアー」。ここ数年、日本からは撤退していた比類なきヘリテージブランドがアイコンモデルを引っ提げて再上陸を果たした。ウール全盛の時代に軽くて暖かいグースダウンを封入したアメリカ初のアウトフィッターの発明はまさに革命。さらに、そこから端を発した偉大なブランドヒストリーは1世紀を超えても止まることはなく、この機会に深く掘り下げることとする。 まずは、3大名品の1つ「スカイライナー」を見ていこう。

1936年、生死の境から生まれた、世紀の大発明「スカイライナー」誕生

なによりアウトドアを愛した創業者エディー・バウアーは、1935年の冬、ワシントン州西部にあるオリンピック半島へ、いつものように釣りに出かけた。極寒のなか、ずぶ濡れになったエディーは大量のスティールヘッド(ニジマス)を入れたバックパックを抱えて、たちまち凍りついた。すぐに激しい眠気に襲われた彼は、その時のことをこう回想する。

「木に背を向けて座り、うとうとしていると、釣り仲間がやってきて私を揺り起こした。今でこそ、あれは低体温症とわかっているが、もし相棒が来てくれなかったら、私は死んでいただろう」

九死に一生を得たエディーは生涯をかけて、グースダウンを使用した暖かく軽量なジャケットを製造することを決意した。彼は伯父から日露戦争の話を聞き、ダウンの良さを知っていたのだ。そして、翌1936年に発表したのが、アメリカ初のダウンジャケット[スカイライナー]。ウールより圧倒的に軽く暖かく、かつ蒸れにくいダウンは当時のアウトドア用防寒着に革命を起こした。

スカイライナーは1940年代にアメリカで特許を取得。これはジャケットにダウンを封入したことではなく、あくまでキルティングデザインに関して。動いてもダウンが偏らない、視認できるダイヤモンドキルトが画期的だった

全米有数の狩猟・釣り雑誌『Field & Stream』に掲載された小さな広告から数百件以上の注文が届いたという。1940年にはキルティングデザインに関する特許をアメリカで取得。エディー・バウアー=ダウンジャケットのイメージを確固たるものとした。

今季リニューアルして再び登場した現行スカイライナーがこちら!

今季リニューアルして再び登場した現行スカイライナー。当時の仕様書やデザインを参考に特徴的なダイヤモンド型キルティングデザインを忠実に再現。表地には撥水性があり、ヴィンテージ感のある綿ナイロン素材を採用。ダウンは700フィルパワーでタウンユースでは十分な保温性を発揮する。3万8500円(水甚TEL058-279-3045)

MINERAL GREEN
NAVY

【ディテール①】ラベル

1940~60年代頃に使用されていた通称「日の出タグ」を再現している。

【ディテール②】ジッパー

旧い“デカタロン”を彷彿とさせる、大きな引き手が特徴のタロン社製の真鍮ジッパー。

【ディテール③】リブ

袖口がリブニットとなるのはバウアーダウンの特徴的なディテールだ。

【ディテール④】キルティング

裾の両脇はエラスティック仕様で外気の侵入を防ぎ保温性を高める。

ヴィンテージも気になる! キルティング細部に年代ごとの変遷がある

【Early 1940s】1940年にアメリカで特許を取得したダイヤモンドキルト

1935年に誕生したスカイライナー。最初期型はこのように100%コットンのアウターシェルを採用していた。シアトルにある産業博物館には黒リブにむき出しのジッパーなど、これと同様の仕様が展示されている超絶希少種。この個体には1941年製のタロンジッパーが使用されていることから、第二次世界大戦以前のものと推測できる。(参考商品)

【Late 1940s】表地が綿ナイロンに変更、シルエットも改良

表地が綿ナイロンに変更、シルエットも改良された1940年代後半。襟のリブニットが折り返しになっていないのは、当時、別売りでフードを取り付けられるカスタムサービスが存在したため。(参考商品)

【1950s】別会社「アークティック・フェザー&ダウン」のネームが付く

ダウンを輸入していた別会社「アークティック・フェザー&ダウン」のネームが付く50年代製。バネ式のクラウンジッパーやハンドウォーマーポケット裏に赤いウールフランネルが充てられている。(参考商品)

【Late 1950s】別売りの脱着可能なフードもあり

発売当初から襟はニットリブとテーラードクロスの2種から選べた。別売りの脱着可能なフードもあり、フード口にファーやフード内をムートン張りにもオーダーできた。7万8000円(CA. TEL03-3313-1710)

【Late 1970s】ハンターレッドと記されるレッドカラー

1960s中期頃から襟はニットリブのみになったと思われる。ハンターレッドと記されるレッドカラーは1950sに入る頃にラインナップされた。70s製。4万3780円(バックストリートTEL042-720-0355)

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年2月・3月合併号 Vol.202」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

Pick Up おすすめ記事

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...