1936年、生死の境から生まれた、世紀の大発明「スカイライナー」誕生
なによりアウトドアを愛した創業者エディー・バウアーは、1935年の冬、ワシントン州西部にあるオリンピック半島へ、いつものように釣りに出かけた。極寒のなか、ずぶ濡れになったエディーは大量のスティールヘッド(ニジマス)を入れたバックパックを抱えて、たちまち凍りついた。すぐに激しい眠気に襲われた彼は、その時のことをこう回想する。
「木に背を向けて座り、うとうとしていると、釣り仲間がやってきて私を揺り起こした。今でこそ、あれは低体温症とわかっているが、もし相棒が来てくれなかったら、私は死んでいただろう」
九死に一生を得たエディーは生涯をかけて、グースダウンを使用した暖かく軽量なジャケットを製造することを決意した。彼は伯父から日露戦争の話を聞き、ダウンの良さを知っていたのだ。そして、翌1936年に発表したのが、アメリカ初のダウンジャケット[スカイライナー]。ウールより圧倒的に軽く暖かく、かつ蒸れにくいダウンは当時のアウトドア用防寒着に革命を起こした。
全米有数の狩猟・釣り雑誌『Field & Stream』に掲載された小さな広告から数百件以上の注文が届いたという。1940年にはキルティングデザインに関する特許をアメリカで取得。エディー・バウアー=ダウンジャケットのイメージを確固たるものとした。
今季リニューアルして再び登場した現行スカイライナーがこちら!
今季リニューアルして再び登場した現行スカイライナー。当時の仕様書やデザインを参考に特徴的なダイヤモンド型キルティングデザインを忠実に再現。表地には撥水性があり、ヴィンテージ感のある綿ナイロン素材を採用。ダウンは700フィルパワーでタウンユースでは十分な保温性を発揮する。3万8500円(水甚TEL058-279-3045)
【ディテール①】ラベル
1940~60年代頃に使用されていた通称「日の出タグ」を再現している。
【ディテール②】ジッパー
旧い“デカタロン”を彷彿とさせる、大きな引き手が特徴のタロン社製の真鍮ジッパー。
【ディテール③】リブ
袖口がリブニットとなるのはバウアーダウンの特徴的なディテールだ。
【ディテール④】キルティング
裾の両脇はエラスティック仕様で外気の侵入を防ぎ保温性を高める。
ヴィンテージも気になる! キルティング細部に年代ごとの変遷がある
【Early 1940s】1940年にアメリカで特許を取得したダイヤモンドキルト
1935年に誕生したスカイライナー。最初期型はこのように100%コットンのアウターシェルを採用していた。シアトルにある産業博物館には黒リブにむき出しのジッパーなど、これと同様の仕様が展示されている超絶希少種。この個体には1941年製のタロンジッパーが使用されていることから、第二次世界大戦以前のものと推測できる。(参考商品)
【Late 1940s】表地が綿ナイロンに変更、シルエットも改良
表地が綿ナイロンに変更、シルエットも改良された1940年代後半。襟のリブニットが折り返しになっていないのは、当時、別売りでフードを取り付けられるカスタムサービスが存在したため。(参考商品)
【1950s】別会社「アークティック・フェザー&ダウン」のネームが付く
ダウンを輸入していた別会社「アークティック・フェザー&ダウン」のネームが付く50年代製。バネ式のクラウンジッパーやハンドウォーマーポケット裏に赤いウールフランネルが充てられている。(参考商品)
【Late 1950s】別売りの脱着可能なフードもあり
発売当初から襟はニットリブとテーラードクロスの2種から選べた。別売りの脱着可能なフードもあり、フード口にファーやフード内をムートン張りにもオーダーできた。7万8000円(CA. TEL03-3313-1710)
【Late 1970s】ハンターレッドと記されるレッドカラー
1960s中期頃から襟はニットリブのみになったと思われる。ハンターレッドと記されるレッドカラーは1950sに入る頃にラインナップされた。70s製。4万3780円(バックストリートTEL042-720-0355)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2024年2月・3月合併号 Vol.202」)
撮影協力/ウエアハウス
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