▼プレッピーってそもそもなんだ?
アイビーのルールの上でプレッピーが成り立つ。
トラッドファッションを語らせたら右に出る者はいないほどの博覧強記ぶりで知られる慶伊さん。自身のスタイルも60年代のアイビーに根ざし、きれいなカラーリングや正統から半歩ずらしたアイテムを取り入れる姿勢はプレッピーマインドそのもの。
「なぜ僕がアイビーやプレッピースタイルを続けているかというと、かっこいいと思えるのはもちろん、若くてフレッシュな感性があるから。やはり学生のスタイルに端を発しているゆえでしょうか。そして、クラシコイタリアや英国のジェントルマンのように完成形がないので、いつまでも追い求められるし、自由度が高い。
今日のファッションでネイビーブレザーの上にコーチジャケットを羽織ったように、誰もやってなかったような組み合わせにも挑戦できる。もちろん、〝スポーツ〟という出自は理解した上で、アイビーのルールに則っています。実用的で機能的であることも重視しています。例えて言うなら、アイビーは伝統を厳守するイーストコースト的で、プレッピーは西海岸的なファジーな感覚。
プレッピーにも学ぶべきアイビーの歴史的背景やルール、ディテールはありますが、ずらし方は自分次第。雑誌セカンドを読んでもらうほかに、私のチャンネルを観ればアイビーの理論武装は完璧です(笑)」
慶伊さんの欠かせないプレッピーなもの。
1.ヴァン
「タイはニットと決めています。愛用するのはほぼ黒。紺ブレにネイビータイではなく、黒にすることで米国の空気が伝わります。プレーンノットで小さく結ぶのが自己流」
2.レザーマン
「ベルトはバックルを中心ではなくあえてサイドにもってきてフレッド・アステア風に小粋な感覚で着けます」。ベルトはアイビー御用達のアメリカブランドでまとめて購入。
3.ステファン ラヒター
クレイジーパターンのシャツはイギリスのシャツメーカーでオーダー。「全体の色味をペールトーンで抑え目にしたのがポイント。袖の刺しゅうの“F”は前の会社名から」
4.バートペックテーラー
パンツとベストはオーダー品。「プレッピーには欠かせないクレイジーマドラスチェックが復権。マドラスはシワ感が大事なので、新品は1度スプレーシャワーをしシワ感を出すことがコツ」
5.ラコステ(左)、フレッドペリー(右)
「ポロシャツはラコステとフレッドペリー以外認めていません。中に柄や色のあるTシャツを着たり、ニットを肩にかけたりするのでシンプルなデザインが好みです」
6.エメ レオン ドレ(右上)、クラウンクラウン(下)、ヴァン(左)
「シャツを外出ししてルーズに着てチノパンを穿き、仕上げにバケットハットをかぶるだけで60年代の薫りが漂います。服の色によって使い分けます」
7.ブルックス ブラザーズ
「最近のお気に入りはマイケル・バスティアンが手がけるBDシャツ。絞りが入っていないたっぷりしたシルエットで、プレッピーにストリート感が加わります。発色もきれい」
8.ジラール ペルゴ
愛機はスイス製のマニュファクチュールブランド。「ベルトはすべてアイビーベルトに替えています。10本くらい所持していて、季節や服装によって付け替え」
9.ブルックス ブラザーズ
「好発色のカシミヤニットは季節問わず着ています。夏の時期は、着るというより肩に掛けたり腰に巻いたりとアクセサリー感覚。冬の専売特許にしておくのはもったいない!」
10.エメ レオン ドレ
「プレッピーを現代的に表現している最高のブランド。後学のために買っています。キャップはかれこれ3年ほど1シーズンに1つ必ず手に入れています」
11.レイバン
40年前に購入したサングラスは今も現役。「昔はこれをかけてクラブに通っていました(笑)。イエローのサングラスはファンキーな感じがして気分も上がるんですよね」
12.ハリウッド ランチマーケット
生成りがかったカツラギのジーンズは30年選手。「プレッピースタイルのジーンズはホワイトが基本です。元々ブルージーンズは労働者が穿くものでしたから」
慶伊さんのプレッピースタイルのルール。
1.ジャケットとシャツの袖をロールアップ。
「アメリカの俳優アンソニー・パーキンスがしていたロールアップのテクニックを取り入れています。軽く折るだけでリラックス感が生まれます。袖口に手垢がつかず、洗濯も楽ですよ」
2.襟は自然な感じで自由に遊ばせる。
「シャツの襟はきっちりしているより、やんちゃな高校生みたいな感じで、ラペルから自然にハミ出てしまった様子を表現。これ見よがしも良くないので、1㎝くらい立てるのが基本です」
3.袖と前のボタンは計5個と決めている。
「当時ボタンは高級品で、付けすぎるのが贅沢だったんです。ダブルのブレザーの場合、ボタンはフロントに4つ、袖に1つと伝統的なスポーツジャケットのルールに則っています」
4.胸ポケットにはチーフ以外のものを挿す。
「ジャケットの胸ポケットにチーフを挿すのは紳士のマナーですが、それはあくまでイタリア流。アイビーを信条とする私はカランダッシュのボールペンをポケットに挿して粋に」
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
Photo/Yuco Nakamura Text/Masato Nachi
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