“魚柄もの”に偏愛! 「グラウンド・デポ」成山明宏さんの偏愛古着論。

古着愛溢れるがゆえに集めた、一癖も二癖もある古着コレクション。真の服好きは大抵、古着に精通する。古着有識者たちの偏愛蒐集を見れば、そんな偏見にすら頷くしかない。

ファッションに精通した「グラウンド・デポ」成山明宏さんは、趣味の釣りをきっかけに魚柄アイテムに心惹かれたという。一様に鮮やかで美しいデザインが目を引くが魚柄だがそのテイストはさまざま。スローガンからスラングまで表現力に富んだ多彩なメッセージが詰め込まれている。

僕にとってバンドシャツみたいなモノです。

「グラウンド・デポ」成山明宏さん|大手セレクトショップのバイヤーを務めたのち、グラウンド・デポ201の立ち上げとともに移籍。確かな審美眼で西のアウトドアズマンたちを魅了している

ま、大阪のキャンパーがこぞって来訪する店がある。1Fは大阪を代表する老舗セレクトショップ「グラウンド・デポ(大阪・南堀江にあるライフスタイルセレクトショップ)」であり、国内外からセレクトされた感度の高いファッションウエアが揃う。その2階に昨年春オープンし、いまや西のアウトドアシーンには欠かせない存在となっているのがグラウンド・デポ201」だ。

グラウンド・デポ201|グラウンド・デポの2階に2022年3月にオープンしたアウトドアショップ。キャンプ初心者からブッシュクラフトを嗜む上級者まで幅広くアイテムを揃える

フロントマンである成山さんは大手セレクトショップのバイヤーまで務めた人物。ファッション畑のエリートコースを歩んできており、モノに対するこだわりも並外れている。そんな成山さんの趣味は釣り。もっぱらバスか渓流で、休日にはルアーフィッシングやフライフィッシングのタックルを携え釣りに興じる。そんなライフスタイルを彩るアイテムが「魚柄」のアイテムだという。

フィッシングウエアといえば、機能性に富んだジャケットや個性的なスタイルでいまやファッションシーンでも人気を博すベストといった蘊蓄たっぷりな花形アイテムが数多くある。しかし、そこではなくあえてバスやトラウトがプリント、刺繍されたアナログなアイテムを選ぶところに、返って強い偏愛っぷりが感じられる。その点に対する成山さんの答えは明確だ。

魚柄といってもこれが結構奥深いんです。

「音楽のライブに行くとき、Tシャツやパーカなど、そのアーティストグッズを身につけて気分を高めるじゃないですか? それと同じです。僕にとってバンドTシャツみたいなものなんです。例えば1.スウェットシャツ1938年にバージニア州で創業した老舗TULTEX社のボディを使っています。そういう有りものボディ”(プリントTシャツなどギのベースとなるボディ。ブランド名で呼ばれることが多くアンヴィルやギルダンなどが筆頭)を使っているところなんかもすごくバンドTっぽいでしょ?」とのこと。

コレクションは40点近くにものぼるそうで、主に町田のバックストリートやドアマンストア(アウトドア系のアイテムを扱うオンライン限定のヴィンテージショップ)で購入しているというが、フィッシングモチーフだからといって闇雲に買うワケではない。

「メッセージ性があったり、ビジュアル的に優れていたりするものを好んで買っています。例えば2.イラストTシャツはフィッシングをテーマにしたアーティストEN.Evansのイラストで、ブラックジョークというか風刺的な絵柄が特徴です。

EN.Evans|ハンティングやフィッシングをテーマにしたイラストが特徴のアメリカのアーティスト。その作品は90年代のTシャツなどに見られ、一部コレクターが存在する

一方で3.エル・エル・ビーンのTシャツは完全にブランドとハーバーサイドグラフィックス(エル・エル・ビーンをはじめとする一部のアウトドアブランドにグラフィックを提供していたデザイン会社。90年代後半に消滅)のプリントが素晴らしく購入。いまやコレクターズアイテムになっています。

でもってメッセージ性とデザイン性の双方を兼備するのが4.ヌードフライフィッシングTシャツ。その筋では有名なレイトロール(アメリカの海洋学者兼アーティスト。生物をテーマにしたメッセージ性のあるアートを特徴とする)の作品で、全裸フィッシングの危険性を説いた絵柄がプリントされています()あとは純粋にデザインが良くて買ってしまうものも結構あって、いわば『ジャケ買い』ですね。5.オールドタックルのプリントTシャツ6.キャッがそうです」

基本的にはデザイン性、メッセージ性の高いものを選んでいるというなか7.キャップは少し異色だ。

「これはアラスカのアウトドアベースとなる宿泊施設のスーべニアです。一度ツアーを調べたのですが、6日間で100万くらいかかりますね。なのでこのキャップをかぶって釣りをするとき、気持ちだけはアラスカにいます()

またプリントではなく刺繍モノだと「DUMBASS=マヌケ」という意味のスラングが効いた8.キャップと「世界一の釣り人」と刺繍された9.スウェットが目立つ。

「自分の釣りのレベルを揶揄するものって結構多くて、自画自賛する調子乗り系や反対に実力を卑下するものなど、独特な雰囲気を持っています。あとは 10.エル・エル・ビーンのコットンセーターもトラウトとフライタックルが胸にワンポイントで刺繍されていて純粋にお洒落。振り幅がスゴいですよね」

魚柄という切り口で古着にフォーカスすると、それに関連するものも含め実に多様なデザインがあり、しかもそのいずれにも意味やメッセージが含まれているなど、なんとも奥が深い。しかし最後に、これらのアイテムには実は大きな共通点があると成山さんは教えてくれた。

「ここにあるアイテムのほぼすべてが90年代以降のアイテムなんです。それ以前はシンプルなものがほとんどで。おそらくエンターテイメント性を伴ったフィッシングスタイルの成熟や環境意識の高まりが要因だと思いますが、11.と12.のプリントTのような目を見張るような色使いや、ヘタクソ!”といった意味の絵柄をドラスティックに描くことで環境への警鐘も鳴らす13.レイトロールTシャツなどは象徴的ですね」

(出典/「2nd 20233月号 Vol.192」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

ニューヨーク・ブルックリン発! 作業服由来のデイリーウエアはこう着こなす。

  • 2026.09.16

創業1904年、高層ビルの建設が相次ぐ当時のニューヨークでリアルワーカーに向けて、作業服を提供していた「ブルックリンオーバーオール」。そんな確固たる出自に由来する男服は、カジュアルウエアとして現代にDNAを継ぐ。 旧きよきデザインと生地づくりで飽きのこない王道のワークスタイル 40年代の個体をベース...

Why Banana Republic? 2nd編集部イチ押し「バナナ・リパブリック」アイテムと、ブランドの魅力を徹底解説

  • 2026.09.16

1978年にアメリカ・カリフォルニア州で創業したバナナ・リパブリック。クラシックとモダンが共存する唯一無二のスタイルや歴史を紐解くことで、我々が彼らのプロダクトを手に取るべき“理由”が見えてくる。(記事をご覧いただいた方への特典を最後に紹介しています) [caption id="attachment...

イタリア・パルマで誕生。世界屈指のベルト「Anderson’s」、その生まれる場所へ

  • 2026.09.17

1966年、イタリア北部に位置する美食の街・パルマで創業したベルトメーカー「アンダーソンズ」。装いを完成させる“名脇役的存在”のベルトをメインとする稀有な存在にして、世界的な評価を獲得する某ブランドのプロダクトはどのように生まれるのか。その魂が宿る自社工場に足を運んだ。 イタリア・パルマの地に宿る6...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

70を超えるレザーブランドが集う! 「Leathers Day TOKYO 2026」が五反田TOCビルで9月26・27日開催!

  • 2026.08.30

雑誌『Lightning』と兄弟誌『2nd』『CLUTCH Magazine』の3誌による、レザー好きのための大規模イベント。4度目を迎える今年は、初の東京会場での開催が決定! 普段なかなか手に取って実物を見ることができないブランドや、このイベントでしか手に入らないアイテムが揃う特別な2日間。さらに...

Pick Up おすすめ記事

70を超えるレザーブランドが集う! 「Leathers Day TOKYO 2026」が五反田TOCビルで9月26・27日開催!

  • 2026.08.30

雑誌『Lightning』と兄弟誌『2nd』『CLUTCH Magazine』の3誌による、レザー好きのための大規模イベント。4度目を迎える今年は、初の東京会場での開催が決定! 普段なかなか手に取って実物を見ることができないブランドや、このイベントでしか手に入らないアイテムが揃う特別な2日間。さらに...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

Why Banana Republic? 2nd編集部イチ押し「バナナ・リパブリック」アイテムと、ブランドの魅力を徹底解説

  • 2026.09.16

1978年にアメリカ・カリフォルニア州で創業したバナナ・リパブリック。クラシックとモダンが共存する唯一無二のスタイルや歴史を紐解くことで、我々が彼らのプロダクトを手に取るべき“理由”が見えてくる。(記事をご覧いただいた方への特典を最後に紹介しています) [caption id="attachment...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

毎日に、最良の定番。B.V.D.の「GOLD」は昔ながらの良さと、いま欲しいバランスを兼ね備えたTシャツ

  • 2026.09.16

長く愛されてきた定番には、変わらない理由がある。B.V.D.の「GOLD」もそのひとつ。肌着として培ってきた心地よさをそのままに、今の気分で一枚でも着られるリラックスフィットが加わった。昔ながらの良さと、いま欲しいバランス。その両方を備えた、新しい定番のかたちを見ていこう。 変わらない着心地にゆとり...