撮影協力:クリーンファイターズ山梨 https://clean-fighters.jp/
望遠レンズはお安くない
ご存知のように望遠レンズは、高価なものが多い。
たとえば『RF100-500mm F4.5-7.1L IS USM』はどんな動体でも押さえられて100-500という広大なズーム領域を持つが41万5800円という価格。F2.8という明るさの『RF400mm F2.8L IS USM』に至っては172万4800円である。
そんな中、筆者が愛用している『RF100-400mm F5.6-8 IS USM』は、性能の割に非常にリーズナブルなレンズだが、それでも9万3500円。筆者も仕事で使うからなんとか出せる金額だ。

そんな中で登場した『RF75-300mm F4-5.6』は、なんと3万5200円。望遠レンズとしては破格の安さである。
ちなみに、今回使ったボディでいうとフルサイズのEOS R6 Mark IIでは75-300mmとして使えるが、APS-CのEOS R10では120-480mmとなる。性能と価格のマッチングでいうと、どちらかといえばAPS-C機で使われることが多いと思うが、となると120-480mmとかなり激しく長いレンズになることは留意いただきたい。

安さの理由と、実際に使ってみた印象
このレンズ、調べたところによると1999年に発売されたEFレンズ『EF75-300mm F4-5.6 III』の光学設計を流用しており、言ってしまえば焼き直しである。最新設計のレンズと比べると当然ながら性能は劣る。それでも、標準ズームしか持っていないユーザーにとって、70mmや105mmまでしか届かない世界から、300mmの世界に足を踏み入れられるというのは非常に大きな変化である。多少画質が甘かろうと、ブレやすかろうと『撮れなかったものが撮れる』、この価値は圧倒的だ。

実際に借りて試してみたが、結論としては『ないより絶対にアリ』である。望遠レンズを一本も持っていないのであれば、まずこれを買っておくべきだ。
当然、手ブレ補正はない
ただし、安さゆえに削られている機能も多い。最大の弱点は、手ブレ補正がないことである。望遠撮影ではほんの少しの軸ブレが大きく影響するため、手ブレ補正がないとかなり厳しい。

たとえば筆者が愛用するRF100-400mmは、R6 Mark IIとの組み合わせで最大8段分の手ブレ補正が効く。8段分というとは、ざっくり言えば1/8秒で切っても1/2000秒で切ったぐらい止まるということだ。これにより、手持ち撮影でも安定して遠くの被写体を狙うことができる。しかし、RF75-300mmにはそれがない。

EOS R6 Mark IIであればまだ本体内の手ブレ補正に頼れるが、EOS R10だとそれもない。さらに焦点距離も最大480mmとなってしまうからさらに厳しさが増す。この点は留意したい。

動体に対する追従はオートフォーカスはカメラ側の機能に依存するため、EOS R6 Mark IIやR10との組み合わせであればかなり良い。ちゃんと人物や瞳に対して追従する。ただし、モーターの駆動が遅いため、ピントが合うまでにやや時間がかかる。今回も素早く追従して欲しいが、間に合わないシーンはあった。
「とりあえず持っておく」には最適な選択肢
もちろん、プロユースに使うのは無理だが、運動会などの明るい屋外で、子どもの姿を少しでも大きく撮りたいというニーズに対して、本レンズは十分な働きをしてくれる。前述の理由から、シャッター速度は速くせざるを得ないが、運動会ならそれでもいいだろう。

またシャッター速度を速くするためには光量も必要ということで、十分な明るさが必要であることも理解しておきたい。つまり、子どもの体育館での発表会などで明るさが足りないと、厳しくなってくる。
それでも、明るい場所であればシャッタースピードを速くしてブレを抑えやすくなるし、何より顔がバシッと写っていればそれだけで嬉しいというユーザーなら、十分に満足できると思う。

AFが多少遅くても、多少レンズのニジみがあっても、「とにかく望遠が欲しい」という段階では十分以上に役立つ。R10やR50といった軽量APS-C機との組み合わせであれば、重量は1kg以下に収まり、持ち運びも苦にならない。
もちろん、撮影に対するこだわりが強くなれば、本レンズの限界はすぐに見えてくる。手ブレ補正なし、AF遅め、開放F値も暗めという中では、どんな場所でも安定した性能を発揮するというのは難しい。筆者が使ってるから言うわけではないが『RF100-400mm F5.6-8 IS USM』は本当に性能のバランスのいいレンズである。
価格はRF75-300mm3倍になるが、画質、AF速度、手ブレ補正、すべての面で満足度が段違いだ。Lレンズに比べてコンパクトで軽い点も美点だ。
RFマウントでもここまで安くなった
キヤノンのRFマウントは、しばらく高級レンズばかりで、価格的には多くの人にとって手が出しにくかったと思う。サードパーティへのライセンス提供も限られており、ほぼ純正レンズしか選択肢がないという不満もあった。そうした中で、こうしたエントリー価格帯の望遠ズームが出てきたというのは歓迎すべき流れである。
『とりあえず望遠を試してみたい』『今すぐには高いレンズを買えない』というユーザーにとって、RF75-300mmは新たな撮影の可能性を開いてくれる一本である。ぜひ、お子さんの運動会で活用していただきたい。
(村上タクタ)
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