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新世代の先駆け? iPad(第10世代)を見極める【先行レビュー】

  • 2022.10.24

日本時間10月19日午前0時、スタンダードiPadのモデルチェンジが発表された。2010年の初代から12年、第10世代にしてついに、スタンダードモデルのiPadはホームボタンを失い、スクエアなボディデザインとなった。そして、価格は最廉価モデルでも6万8800円(税込)。おそらく教育などに使うには高すぎる。そして、コネクターはUSB-Cなのに、Apple Pencilは第1世代で、変換アダプターを介してUSB-Cケーブルで充電する。この、どこか迷走しているようにさえ思えるiPad(第10世代)に、26日の販売に先んじて触れることができたので、インプレッションをお伝えしよう。

iPad AirとiPad(第9世代)の中間に位置するモデル

結論を先に言う。新しい最廉価製品を模索していることは確かだが、現状はiPad(第9世代)とiPad Airの間を埋める、『2022年のスタンダードモデル』だ。おそらく第9世代は、当分の間並行して販売されるだろう。もしかして、iPad SEなどとして、延命措置さえ受けるかもしれない。そして、変換アダプターを介した充電はそれほど奇妙ではない。多分慣れると思う。

新しいiPad(第10世代)のサイズ感は、ほぼiPad Airに等しい。

正確に言うと、高さも、幅も、厚さも、それぞれ約1mmずつ大きいから、少しもったりした印象を受ける。画面サイズは10.9インチと、iPad Airと同じだから、フチも少し広く厚い。iPad(第10世代)→iPad Air→iPad Pro 11インチ……という順番で薄く、シャープになっていく。

左がiPad(第10世代)、右はiPad Pro 11インチ(第3世代)。

上位モデルの方が集積度が高いパーツを使っているということもあるのかもしれないが、むしろ、下位モデルの方が少し親しみやすくリーズナブルに見えるように、意図的に寸法を設定してるようにも思える。

実際問題、iPad Airは、第5世代において、M1チップを搭載しており、性能的にはiPad Pro 11インチに肉薄している。価格もそれに応じてほどほどに上がっている(最廉価モデルが599ドル)。iPad(第9世代/同329ドル)との間に、iPad(第10世代/同449ドル)という価格のモデルを設定するのは理に適っている(円安のおかげで、日本ではこのドル表記よりかなり高く感じる価格設定になるが、その問題は後述)。

一番安いiPad(第9世代)は文教用としてもしばらくは必要とされるだろう。学校で購入するのに予算が組まれているはずだ。

そうすると、性能のために価格を気にせず購入する本当のプロフェッショナル向けのiPad Pro、一般的な仕事に使うためのiPad Air、廉価な仕事用、もしくは上質な学生用のiPad(第10世代)、児童や家庭用の低価格モデルであるiPad(第9世代)という、4段階のラインナップになるのではないだろうか?

iPad(第10世代)は、リーズナブルながら上位モデルと同じフォームファクターを持ち、性能的にもお買い得なモデルだ。おそらくiPadのラインナップの未来を支えるモデルになるだろう。円安が立場を苦しくしている側面はあるが。

全iPadの中で、初めての横使用前提

コネクターはUSB-Cタイプとして設計されているのに、対応するApple Pencilが第1世代であるため、Apple Pencilを充電するには必ず変換アダプターとUSB-Cケーブルを必要とするという奇妙な仕様が話題になっている。

この奇妙な仕様について理解するためには、まずこのiPad(第10世代)が初めて『横使用』を前提に設計されているということに気付く必要がある。そう、たいていは短辺の中央にあるFaceTimeカメラが、このiPad(第10世代)では、iPad 12年の歴史の中で初めて長辺の中央に用意されているのである。

おそらくこのために、Apple Pencil(第2世代)用の充電用マグネットを装備することができなかったのだと思われる。

なぜ、FaceTimeカメラを長編中央に取り付けたかというと、従来の縦使用を前提としたスタイルだと、スマートキーボードやMagic Keyboardを使った状態でビデオ会議をすると、カメラが中央に位置しなくなるからだ。

従来のFaceTimeは家族での使用を前提としていたので、縦持ちをイメージしていたが、キーボードで仕事をしながらの会議となると、どうしても横使用が前提になってくる。

それゆえ、横使用でのビデオ会議頻度の増加→FaceTimeカメラ位置を長辺中央に→Apple Pencilは第1世代しか使えない……という展開が真相ではなかろうか?

普及したApple Pencil第1世代を無駄にしたくないとか、廉価なiPadを購入する人には、Apple Pencil第2世代は高価過ぎる……という判断が働いた可能性も考えられるが、どうもしっくり来ない。

今後、他のモデルも横使用前提になるのか?

では、このiPad(第10世代)で、キーボードを使ってビデオ会議をすることを考えて横使用を前提にした……とすると、これからのiPad ProやiPad Airはどうなるのだろう? やはり横使用前提になるのだろうか? では、iPad ProやiPad Airにおいても、Apple Pencilは第1世代を使うようになるのだろうか? それは奇妙に思える。

将来的に、横使用前提になるのは本モデルだけなのか? それとも上位モデルも横使用前提になりカメラ位置が長編側に移動するのか? それともさらに新たな充電方法が考案され、Apple Pencil(第3世代)というのが開発されるのだろうか? 現状では分からないが、引き続き観察していきたい。

Apple Pencilの充電方式は、実際に見るとさほど奇妙ではない

というわけで、iPadのコネクターにApple Pencilを直接挿してApple Pencilを充電できなくなったので、ケーブル経由で変換アダプターを使って充電することになる。

サイドにマグネットでくっつけて充電できるApple Pencil(第2世代)から考えると随分不細工な充電方法だとは思う。しかし、やってみるとご覧のように、想像していたほど不自由ではない。

USB-C – Lightningアダプターは、従来のLightning – Lightningアダプターより大きいので扱いやすく、紛失しにくいような気がする。なんなら、Apple Pencilに付けっぱなしにしてしまって、いつでも充電できるようにしてもいいかもしれない。もしくはデザイン的にフィットした固定タイプのアダプターが出るといいのにとさえ思う。

また、旧来のLightning – Lightningアダプターと、iPhoneに付属してるUSB-C – Lightningケーブルを使ってApple Pencil(第1世代)とiPad(第10世代)を接続してみたが、充電は可能だった。しかし、ペアリングはできなかった。現状、筆者には原因は分からないが、検証が必要な事柄だと思う。

不自由だが、現在このクラスのiPadでは、Apple Pencilの利用より、キーボードを接続して横置きし、ビデオ会議をする際のカメラ位置の方が重要という判断ということなのだろう。

全般に、iPad AirとiPad(第9世代)の中間

全体の仕様について確認しておこう。

搭載されているチップセットは、iPad(第9世代)のA13 Bionicから、iPhone 12シリーズに搭載されていたA14 Bionicにアップデートされている。リーズナブルなiPadととしては順当な仕様だし、一般的な用途で不自由ということはないだろう。

カメラは外側は1,200万画素の広角カメラへとアップデートされた(第9世代は800万画素)。内側のカメラは1,200万画素の超広角で、センターフレーム対応。

認証は、iPad Airと同様の電源ボタンを介した指紋認証。マスクをしていて、顔認証されにくい昨今では、Face IDより便利という声も多い。

ディスプレイは500ニトの第9世代とほぼ同じ仕様のものだが、サイズは10.9インチ、2,360×1,640ピクセル解像度とiPad Airと同じ。ただし、iPad Airと違ってフルラミネーションディスプレイ、反射防止コーティング、P3色域は提供されない。

オーディオはiPad Airと同じく横向きの2スピーカーオーディオ。つまり、縦置きした場合はステレオにはならない。まぁ、映画などを見る時には横置きにするだろうから、さほど問題はないと思われる。

Magic Keyboard Folioはユニークだが少々重い

Magic Keyboard Folioはユニークな製品だ。背面のスタンドと、キーボードの部分を取り外すことができる。このためにSmart Connectorの位置が変わっているので、ほぼ同じ本体サイズでありながら、iPad AirやPro用のMagic Keyboardや、Smart Keyboard Folioなどとの互換性は相互にない。

もともと、スマートコネクターは銀行や行政機関など、セキュリティ上ワイヤレス接続が禁じられている場所での接続を目的としたものなので、取り外した状態のキーボードは入力できない。

Magic Keyboard Folioという名前からも分かるように、キートップはスマートキーボード系のものとは違って、ひとつひとつ別パーツのキートップが装着されるタイプとなっている。トラックパッドも装備されており、将来的にこのクラスのiPadでもステージマネージャでの外部ディスプレイ使用が可能となることを思わせる。

しかしながら、しっかりした作りのMagic Keyboard Folioの重量は591g(実測)もあり、iPad(第10世代)と合わせると1kgを超えてしまうという点にも注意したい。意外と重いのである。

つくづく円安が恨めしい

M1を積んでノートパソコンを超えるほど高性能になったiPad Airと、iPad(第9世代)の間を埋める製品ではあるが、少々不思議な部分もある。もしかしたら、過渡期の製品なのかもしれない。

『iPad(第10世代)』と呼称されているのだから、最廉価モデルのアップデートと捉えるべきなのだと思うが、最も廉価なモデルでも6万8800円(税込)となる。

実用的な256GBのセルラーモデルを選択すると11万6800円(税込)。Apple Pencil(第1世代)とMagic Keyboard Folioを組み合わせると17万0480円(税込)となる(さらにアップルケアも必要だ)。

円安の影響ではあるが、これは辛い。

大人なら、頑張ってM1搭載のAirを買って長く使う……という手もあるのだが、小学生、中学生向きにはどうすればいいのだろう。

しばらくの間は、第9世代も併売されるので、これと社外品の廉価なキーボードやスタイラスを組み合わせて、価格を抑えるしかないのだろうか? 文教用ということでもいいから、当分の間、iPad(第9世代)の販売は継続して欲しいところ。

円安が続く限り、なかなか厳しい判断を強いられそうだ。

(村上タクタ)

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