世界中のマクドナルドグッズを集めたかった
デザイナーとコレクターの二足の草鞋を、三十年近く続けている永井ミキジ。幼い頃、そんな彼を最初に“コレクション道”へと誘ったのは、年の離れた二人の姉だったという。
「10歳上と6歳上のお姉ちゃんたちが、喫茶店のマッチを集めていたんですよ。長女が10個集めたら次女がそれを引き継いで10個集め、それをまた僕が引き継いで1万個にするみたいな、そんな感じでしたね」
そしてその後、永井少年を本格的にコレクターの道に引きずり込むアイテムが現れる。マクドナルドの看板セット商品「ハッピーセット」だ。
「まだお子様セットって言われていた時にお姉ちゃんたちが買ってきて家に置いてあったやつをちょっと見て『あっ、こうい うモノがあるんだ』と買い始めたのが最初でした。ハンバーガーやポテトを食べて集めるのが普通だと思ってたので。当時のハッピーセットは2週間で6〜8種類出てたのかな…。風邪をひこうが海外に行こうが、全部食べてたんです。その後大人になってから、アメリカのマクドナルドでは『ハッピーミールトイ』っていうのがあるのを知りそれにも手を出して。そこから広がって、知り合いのバックパッカーの人たちに、世界中のマクドナルドのグッズを買ってきてもらってましたね」
ただグッズを集めるだけではなく、メインであるハンバーガーやポテトなどもすべて食べていたとは、SDGsの精神の鑑と言える。しかし集める量が尋常ではないだけに、食べ切るのもひと苦労だったようだ。
「僕はもともとジャンクな物は食べなかったので、2週間に6食マクドナルドはつらい。そうは言っても食べきれないのは嫌だから、ナゲットは冷凍保存したり、セットドリンクには保存できるミルクを選んだりするなど、それも込みでコレクションすることは大変だと思ってましたね」
コレクションの果てに直面。ハッピーセットの真実
しかし、そんな永井にある出来事が起こった。
「ある日、自称マックコレクターという方が僕に自宅の部屋を見せてくれたんです。彼のマックトイコレクションを見て『すごいですね! 食べるの大変ですよね』って素直に訊いたら、その人が『いや、食べてないですよ、先月、ヴィンテージショップでまとめて買ったんですよ』って言うんですよ。えっ、そういうものなのか…とハッとして。
すべてのマクドナルドグッズを集めようと、コレクションに勤しむ日々。永井がグッズのなかでも特に気に入っていたのは、少年時代に集め始めたドナルドやハンバーグラーといったオリジナルキャクター(※)であった。 ところが、年を追うごとになかなかオリジナルキャラがオマケにならなくなった。
「昔はセットにしなくてもドナルドたちオリジナルキャラが、単品で90円くらいで買えたんですよ。当時少年だった僕には、“100円でこんなに精度のあるものが作れるんだ”っていう感動があったんですね。でも(ハッピーセットの)回を重ねるうちに、ドナルドたちが出てこなくなるんですよ。代わりに出てきたのが、ドラえもんやポケモン。それでも我慢して買い続けるんですよね、今までのコンプが崩れると嫌だから。いつかはまたドナルドが出ると思ってるんで。そのうち冷凍庫がナゲットでパンパンになっちゃって、他の食材が入らなくなってて自分でも『何やってるんだろう?』って。
ところがある時、僕の友達がマクドナルドの関係者にインタビューをした際に、僕がコレクションをしていることをその人に伝てくれえたんです。そうしたら、『もうやめた方がいいと言ってあげて』と言われたんです。友人が理由を聞くと『世界のマクドナルドで最もハッピーセットが売れるのは日本だけど、逆にドナルドの知名度は最低なんです。だからドナルドはもうおそらく出ないので、申し訳ないけどやめてください』と…」
関係者から偶然聞かされた驚愕の真実。
「ドラえもんとかピカチュウとかディズニーがめちゃくちゃ売れる、でもドナルドは売れない…。それを聞いてハッピーセットのコレクションをやめたんですよね。我が家には全部の未開封セットがそのまましまい込んでありますけど(笑)」
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