「BUTTON WORKS」小菅さんにとってのアメリカ、それは1930年代以前のワー クウエアのチェンジボタン。

1930年代以前のワークウエアに付属していたボタンや販促品などの金属パーツをいち早く復刻させたボタンワークス。ディレクターを務める小菅さんにとってのアメリカの象徴は、限られた素材と予算の中で知恵を絞り、個性を見出したボタンだ。

ワークウエアのボタンは、ただの付属じゃない。

“ボタンおじさん”のニックネームで知られる小菅さんは、洋服業界なら誰もが知る存在だ。その理由は、小菅さんが手掛けるボタンワークスにある。当ブランドは、戦前のワークウエアメーカーが心血を注いでいたボタンやノベルティグッズなどの金属パーツにいち早く注目し、日本の高い技術で再構築させた第一人者。その高い技術力とセンスを頼りに、世界中のブランドがオリジナルボタンを作るために、ボタンワークスへオファーしているというわけだ。そんな小菅さんにとってのアメリカの象徴は、1930年代以前のワークウエアのチェンジボタンだ。

「今の仕事に繋がるという意味では、カーハートのチェンジボタンが、自分の中で大きい存在。そもそもチェンジタボンというのは、洗濯する際に金属パーツで衣類が傷つかないように、取り外せる機構となったボタンのこと。衣類を手洗いしていた時代に重宝されたディテールで、’30年代から家庭用洗濯機が急激に普及したことから、その姿を消したんです。’90年代の古着ブームでは戦前のワークウエアに注目されることはほとんどなく、2000年頃から一部のヴィンテージ好きから支持され始めました。僕もそんなタイミングで、戦前のワークウエアに興味を持ち、その頃は安かったので、おもしろいものがあれば買っていたんです。そんな時に出会ったのが、アメリカを代表するワークウエアメーカーだったカーハートだったんです」

日本で’30年代以前のワークウエアが盛り上がったのは、今から17年ほど前あたり。ちょうどボタンワークスがヴィンテージのボタンを復刻させたタイミングであり、そこから本格的に集め始めたそう。

「戦前はアメリカのワークウエアにおける黄金期だったと思います。大手はもちろん、マイナーブランドでもオリジナルボタンを作っていました。そこには自社製品を宣伝するためのアドバタイジングの意味合いも強かったんです。いろんなブランドが変形ポケットの意匠を競ったように、オリジナルのパーツやノベルティも凝っているんですよ。その中でもカーハートのハート型ボタンは、象徴的な存在。実際に復刻させたことがありますが、金型から作り込まないといけないので、本当に大変で(苦笑)。ただ無限に予算を掛けるものでもないし、技術も限られているから、本当に工夫されて作ったんだと感じるものも多く、そこが旧きよき時代のアメリカを感じる部分ですね」

「BUTTON WORKS」小菅淳美|1968年生まれ。埼玉県出身。アパレル勤務などを経て、1994年にB,S&Tを設立。インポーターを手掛ける傍ら、独自でヴィンテージボタンを集め、ボタンワークスを立ち上げる。国内外の有名ブランドも付属を手掛けている。

10~30s VINTAGE CHANGE BUTTON

おおよそ10年代から30年代に使われていたカーハートのボタン。様々なバリエーションがあり、特にハート型は人気が高い。

ハート型ボタンにも様々なバリエーションがあり、このデザインは特に珍しい。またチェンジボタンでも前立てと袖でサイズが異なる。

カーハートがノベルティグッズとして展開していたハート型のボタンをアレンジしたピンズ。各社で独自のアドバタイジングを展開。

世界初のオートロック式のジッパーで知られるスコーヴィルが、多くの有名メーカーのボタンを手掛けていた。これは当時のセールスマンサンプルとなる。

(出典/「Lightning 2025年5月号 Vol.373」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

これが“未来のヴィンテージ”。綿、糸、編み機……すべてに徹底的にこだわる唯一無二のカットソー

  • 2026.04.27

綿、糸、編み機……。素材から製法まで徹底的にこだわり、唯一無二のカットソーを創り続けるライディングハイ。「FUTURE VINTAGE(未来のヴィンテージ)」を目指す彼らのフィロソフィは如何にして形成されているのか。プロダクトの根幹をなす代表・薄 新大さんの“アイデアの源”に迫る。 More tha...

これまでで一番“アイビー”なクラークス誕生! 2026年春夏の新作にペニーローファーやボートシュー ズも登場

  • 2026.04.27

「クラークス」が2026年春夏の新作として発表した「デザートアイビーコレクション」。ブランドのアイコンである[デザートブーツ]や[ワラビー]、[デザートトレック]はアイビーらしい配色に落とし込まれ、アイビーの定番靴であるペニーローファーやボートシューズも顔ぶれに加わる。英国、アメリカ、日本。各国のカ...

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

Pick Up おすすめ記事

これまでで一番“アイビー”なクラークス誕生! 2026年春夏の新作にペニーローファーやボートシュー ズも登場

  • 2026.04.27

「クラークス」が2026年春夏の新作として発表した「デザートアイビーコレクション」。ブランドのアイコンである[デザートブーツ]や[ワラビー]、[デザートトレック]はアイビーらしい配色に落とし込まれ、アイビーの定番靴であるペニーローファーやボートシューズも顔ぶれに加わる。英国、アメリカ、日本。各国のカ...

夏を装いが物足りない時のひと工夫。涼しげな素材と優しい配色で気軽に“レイヤード”を楽しむ

  • 2026.04.16

シャツとジーパン。それだけで成立することは分かっていながら、やっぱりちょっと物足りない、と感じたときに思い出してほしいキーワード。それは、レイヤードだ。ぜひ夏の装いのひと工夫に加えてもらいたい。 涼しげな素材×優しい配色のレイヤード 夏に着るトップスはシャツとインナーだけになりがち。だが、シャツの下...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

これが“未来のヴィンテージ”。綿、糸、編み機……すべてに徹底的にこだわる唯一無二のカットソー

  • 2026.04.27

綿、糸、編み機……。素材から製法まで徹底的にこだわり、唯一無二のカットソーを創り続けるライディングハイ。「FUTURE VINTAGE(未来のヴィンテージ)」を目指す彼らのフィロソフィは如何にして形成されているのか。プロダクトの根幹をなす代表・薄 新大さんの“アイデアの源”に迫る。 More tha...