WWII以前のARMY(陸軍)カバーオール。
1919年に米陸軍が正式採用するプルオーバー式デニムジャケット。胸に付いた2つの大容量パッチポケットが一般的に知られているが、1919年以前でも同形状のデニムジャケットは存在する。しかし3つポケット仕様など細部が異なっていた。
U.S.ARMY(1917年)
黒ラッカーボタンや3つポケット、淡い色合いのデニム生地など、1917年に製造された物は細部が異なっているのがわかる。
兵士の声を受けて仕様変更された。
米陸軍のプルオーバー式デニムジャケットだが、難点はその着脱の煩わしさにあった。兵士の中にはプルオーバーの裾を裁断し前開きにモディファイする者もあった。そのような流れを受け、カバーオール型が誕生する。
U.S.ARMY(1930年代)
U.S.ARMY(1930年代)
民間衣料にも転用されていた。
丈夫さが取り柄である民間で使われていたワークウエアのカバーオールは、兵士が個人カスタムにて使用していたという歴史もある。これはライフルを構えた際に安定させる肩パッドや袖の補強など、シューティングジャケットスタイルへとカスタマイズされた珍品。
SHOOTING JACKET(1930年代)
レザーパーツを使って肩パッドや肘当てなどを後付けされたカバーオール。背面にはNRA(全米ライフル協会)などのパッチで彩られている。
USN(海軍)カバーオールの歴史。
米海軍の軍用カバーオールといえば、1930年代のショールカラーのデニムカバーオールが有名で、主に甲板作業などで使われていた作業着として支給されていた。それ以前のモデルとなると米陸軍と同じく、プルオーバー式のデニムジャケットだった。
USN(1910〜’20年代)
プルオーバー式のデニムジャケットだが、襟はショールカラーとなっている。前開きにはボタンが無く、セーラーシャツに近い作りとなっている。
USN(1920〜’30年代)
プルオーバー式のデザインだが、アンカーマーク入りのボタンが前立てにデザインされている。襟はラウンドカラーで胸ポケットを備えている。
USN(1930〜’40年代)
後年には強風を受けても襟がはためかないようにショールカラーが採用された。一般的なカバーオールに比べこちらは着丈が短いのも特徴。
(出典/「Lightning 2024年11月号 Vol.367」)
Photo/K.Torii 鳥居健次郎(WandP)