自家焙煎のチョコレートを求めて佐渡へ。

新潟港からフェリーで2時間半ほど。東京23区の1.5倍の大きさで、沖縄に次ぐ面積を持つ離島・佐渡島。暖流の対馬海流が流れている影響で、新潟県本土よりも冬の気温が1~2度高いというから驚きだ。また1601年から1989年まで操業していた佐渡金山や、京都から流罪された文人や政治家によってもたらされた伝統芸能が受け継がれ、貴族、武家、町人文化が一体となった特有の文化を持っているのも佐渡島の魅力といえる。今回は、佐渡に2年前にオープンした、自家焙煎から作るチョコレート工場「莚(むしろ)CACAO CLUB」を訪れてみた。

いま注目されている“Bean to Bar”のチョコレート

“Bean to Bar”──

チョコレート好きならこの言葉を聞いたことがあるかもしれない。カカオ豆からチョコレートバーまで、一貫して製造を行うことだ。厳選した産地のカカオ豆を仕入れ、工房で自家焙煎、外側の皮と内側のカカオニブを分離し、粉状になるまで挽く。チョコレートが完成するまで1週間。とても手間のかかる作業だ。

莚CACAO CLUBは、離島・佐渡に誕生した“Bean to Bar”のチョコレート工房&ショップ。国内を自転車で旅をしていたときに出会った広島のチョコレート工場で修行をした勝田誠さんが、地元佐渡に戻り2年前にオープンした。勝田さんが厳選した産地から仕入れたカカオ豆を自家焙煎したチョコレートはカカオ豆の味わいをダイレクトに味わえるのが魅力で、6カ国の豆を使い、産地によって異なる味わいを楽しめるシングルオリジンのチョコレートや、佐渡食材を使用したチョコレートを製造・販売。

パッケージの成分表を見ると、一番最初に「カカオ」と書かれている。これはチョコレートに含まれる成分の中で一番カカオが多いことを表しているのだ。直に触るとすぐに溶けてしまうのも特徴。口の中に入れた瞬間にとろ~りとカカオの味とほのかな甘さが口いっぱいに広がる。ほとんど砂糖を使わず、大人のチョコレートといったところ。佐渡の食材を使った限定チョコレートもあり、訪れるたびに新しいチョコレートに出会えるのもファンを惹きつける理由。チョコレート好きはもちろん、新しい佐渡土産にも注目されていることは言うまでもないだろう。

焙煎したカカオ豆。皮がついた状態なので、この中にあるカカオニブを取り出す。これがチョコレートになる。

カカオ豆を粉砕するメランジャーという機械。カカオ豆が磨砕され、砂糖を加える。カカオ豆に含まれる脂肪分の働きで滑らかな口当たりになる。

民芸を取り入れたデザインにも魅力

工房兼ショップは、両津港から車で45分ほどのところにある。佐渡市が管理している建物を借りているのだが、山に囲まれ、ポツンと一軒家的な店。昭和の雰囲気を漂わせ、元の空間の作りを活かしながら、三角にカットした廃材を組み木した壁や民芸のインテリアなど、独特の雰囲気が魅力だ。

チョコレートを包むパッケージは沖縄のデザイナーによるもので、佐渡の文化をイラスト化。それを日本古来の包みである折形を採用。切り込みを入れることなく一枚の紙を折り包む形で、「始末」という物事の締めくくりをつけることを大切に考えてきた日本人の美学を表した粋な作りだ。

木々に囲まれた場所に突如現れる古い建物が莚CACAOCLUB。大きな暖簾が目印だ。暖簾には「莚」と書かれている。

暖簾をくぐって左側にショップがある。蔵のような引き戸を開けてお店の中へ。広々とした店内にはテーブル席を間隔を開けて設置。奥には座敷席もある。インテリアとして飾られた民芸品も見応えあり。

【DATA】
筵CACAO CLUB
新潟県佐渡市莚場1100
TEL0259-58-9080
9時~17時(L.O.16時30分)
木・金曜休
instagram:@mushilocacaoclub

この記事を書いた人
めぐミルク
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めぐミルク

手仕事大好きDIY女子

文房具、デザイン、ニッポンカルチャーなどのジャンルレスな雑誌編集を経てLightningへ。共通しているのはとにかくプロダクツが好きだということ。取材に行くたび、旅行するたびに欲しいものは即決で買ってしまうという散財グセがある。Lightningでは飲食、ハウジング、インテリアなどを担当。
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