今回は塊根植物のなかでも冬型に分類されるオトンナ属にスポットを当ててみる。
140種類ほど存在する多種多様なオトンナ属。
冬型塊根の代表的な存在でもあるオトンナ属の植物たち。暑い夏の間は休眠していたオトンナも、涼しくなるにつれて次々と目覚め、鮮やかな葉や可愛らしい花を見せてくれます。
オトンナはキク科の塊根植物で、南アフリカには140種類ほどが生息しており、その姿も多種多様なことで知られています。
今回は、そんなオトンナ属の植物の中でも、国内で種から育成された実生(みしょう)株の入手がしやすい品種をいくつかご紹介します。
オトンナ属の代表種オトンナ・ユーフォルビオイデス。
オトンナ・ユーフォルビオイデスは、数あるオトンナ属のなかで最も知名度の高い品種だと思います。
種小名のユーフォルビオイデスは「ユーフォルビアに似た」という意味を持ちますが「黒鬼城」という和名でも呼ばれています。
これは成長によって現れてくる特徴的な黒い表皮と特徴的な棘に由来します。こちらの実生株はまだ若いため、黒鬼城と呼ばれるような色はしていませんが、先端に比べると株元の表皮は僅かに茶色く色付き始めています。
成長とともに塊茎は太さを増し、枝が分岐することで迫力のある樹形となります。
実生株の流通も多く入手しやすいので、オトンナ属の植物をまだ育てたことがない方には最初の1株としてもオススメです。参考価格5500円
棘の正体は開花後に残る花茎。
黒い肌と棘が特徴的なユーフォルビオイデス。この棘は花が咲いた後に残る花茎が硬化したもので、開花の回数を重ねることで棘の本数も増えていきます。
和名は蛮奇塔、ゴツゴツとした姿のオトンナ・ヘレー。
ゴツゴツとした塊茎が特徴的な、オトンナ・ヘレー。
種小名のヘレーは、ドイツの多肉植物学者ハンス・ヘレー氏に由来します。蛮奇塔という和名も付けられていますが、ゴツゴツとした塊茎を分岐させて成長する姿は、まさしく奇妙な塔の様な雰囲気を持ちます。
南アフリカ北部の限られた地域に自生しますが、自生地の個体は激減している稀少な品種です。成長速度は非常に遅く、最大で40~50㎝となる中型種。休眠期で葉の無い姿でも存在感のある品種です。参考価格6600円
滑らかな肌質が特徴的なオトンナ・トリプリネルビア。
滑らかな肌の質感と、のっぺりとした塊根部が可愛らしいトリプリネルビア。
乾燥地帯に自生するオトンナ属のなかでは、やや降水量のある地域に自生しているためか、他の種よりも水を好む感じがあり、生育期には枝をぐんぐんと伸ばし成長します。
大きな株に成長すると枝は1ⅿ以上にもなりますが、トリプリネルビアは強剪定(きょうせんてい)にも耐える品種であり、剪定後の治癒も早いことで知られています。
また、適度に剪定することにより塊根部も太りやすく、枝も分岐しやすくなると言われています。参考価格4730円
美しい紫色の葉裏。
生育期には枝先に沢山の葉を付けますが、葉裏は美しい紫色をしています。オトンナ属では、他にも葉裏が薄紫色になる品種はありますが、トリプリネルビアはこの紫色がしっかりと出やすいのも特徴です。
可愛らしい樹形と薄紫の葉裏、生育期に咲かせるオトンナ特有の小さな花も相まって女性からの人気も高い品種です。
白い綿毛を持つオトンナ・シクロフィラ。
成長点付近がビロード状の白い綿毛に覆われるオトンナ・シクロフィラ。
自生地では1ⅿ前後まで生長する品種です。生育期には先端からギザギザとした波打つような葉を展開しますが、葉の見た目はちょっとレタスっぽい感じです。
ちなみに、こちらのシクロフィラも自生地では個体数が激減している品種です。参考価格6600円
灌木状の小型種オトンナ・クエルシフォリア。
灌木(かんぼく)状の小型種であるオトンナ・クエルシフォリア。
種小名のクエルシフォリアは「カシのような葉」といった意味を持ちますが、これは、楕円形の葉の形がカシの木の葉に似ていることに由来するようです。
蝋質の表皮はツルっとした滑らかな質感で、この表皮がめくれながら生長していくのも特徴です。
今回ご紹介しているオトンナ属の中では、実生株の流通もやや少ない印象です。参考価格4730円
乾燥地帯に自生するオトンナ・プロテクタ。
プニプニとした多肉質の細長い葉が特徴的な、オトンナ・プロテクタ。
プロテクタは南アフリカからナミビアに広がるナマクアランドの乾燥した土地に自生します。乾燥から身を守る蝋質の表皮と水分を蓄える多肉質の葉からも、乾燥した厳しい環境に適していることが伺えます。
実生株であっても水遣りは控えめにし、やや乾燥気味ぐらいで育成したほうが調子よく育つ品種です。参考価格3850円
花も楽しめるオトンナ属の植物。
キク科の植物であるオトンナ属は、キク科らしく黄色い小さな花を咲かせます。花付きも良く、生育期には何度も花を咲かせることもあるので、初心者の方でも開花を楽しめるはずです。
複数の株を育成していると、同じタイミングで開花していることも多く、自分の手で受粉させて種を取り、その種を撒いて実生株を楽しむことができるかもしれません。
ちなみに、同じオトンナ属同士での交配も可能なため、違う品種と交配させたくない場合は受粉させないようにするのが無難です。
今回は実生株の流通も比較的多く、入手もしやすいオトンナ属の植物をご紹介させていただきました。
高価な現地球と比べると、価格的にも手頃な上に育てやすい実生株。暑さも落ち着き涼しくなってくるこの時期は、オトンナの育成を始めるのにも丁度良いタイミングです。
【DATA】
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