このカテゴリーの先陣となったのはフォード・マスタングだけど、その急先鋒として追撃したのがGMがシボレーブランドから発売したカマロの存在。
一時期はラインナップから落ちたけど、2010年に復活。現在までその長い歴史を再び紡いでいるアメリカを代表する名車のひとつだ。
そんなシボレーを代表するモデルの歴史をおさらいしてみる。
コンパクトなボディは若者や女性オーナーもターゲットになった。
フォード・マスタングに遅れはしたが、シボレーも1967年にカマロを投入したことが歴史の始まり。マスタングが1965年に登場し、爆発的な人気を誇ったのは、乗り手に合わせた多くの仕様(エンジンの種類や、足周り、快適装備などの有無)が選べたことと、当時は巨大なフルサイズカーやインターミディエイトサイズのモデルが主流で、コンパクトでスポーティなルックスのモデルが少なかったことがその理由。
カマロもマスタング同様、スポーティなルックスで、マイルドな仕様からマッスルなグレードまでラインナップし、若者から女性までをターゲットにすることで、シボレーを代表するモデルへと成長していった。ちなみに、兄弟車としてGMはポンティアックブランドからファイヤーバードも同時期に登場させ、ポニーカーという存在がアメリカで認知されていった。そのなかでもカマロは現在も発売されている歴史的な名車になっていった。
第一世代 1967-1969年

1966年の秋に1967年式としてデビューしたカマロ。ボディスタイルは2ドアクーペとコンバーチブルの2種類で、搭載されるエンジンは2種類の直列6気筒からV8は5種類の排気量がチョイスできたことで、幅広い層にアプローチできる仕様が用意された。
最強モデルは375馬力の396ci(約6500cc)のV8だけでなく、当時のSCCAトランザムレースのホモロゲーションモデルとしてZ/28オプションも登場した。
これはレースのレギュレーションに合わせたハイパフォーマンスな302ci(4900cc)のV8を搭載。エンジンも4バレルのキャブレターやアルミ製のインテークマニホールドなどで武装され、パワーディスクブレーキや4速マニュアルを搭載した市販レースカーだった。また1969年式は、INDY500のオフィシャルペースカーに選ばれている。
カマロはデイリーユースから週末のレースまで楽しめるクルマとして、多くの世代にアプローチできる車種として存在していた。



第二世代 1970-1981

1960年代後半から1970年代初頭のマッスルカームーブメントによって、フルモデルチェンジした第2世代のカマロ。ロングノーズが強調され、ボディも先代よりも大型になり、より戦闘的なスタイルに生まれ変わった。ボディタイプはコンバーチブルが無くなり、2ドアクーペのみという設定に。左右のドアもリアシートへのアクセスを考え、初代よりも延長された。
エンジンは初代同様、直列6気筒からV8まで、10種類の排気量をチョイスでき、中でもスペシャルパフォーマンス・パッケージとして存在したZ/28パッケージではシボレーの名機といわれるLT-1エンジン(5700ccのV8で360馬力を発生)が搭載された。
大きく口を開けたフロントデザインは、後期モデルになると、安全基準をクリアするためにワンピースの大きなバンパーに変わり、最後期ではフロントマスク一体型のデザインへとマイナーチェンジされた。


第三世代 1982ー1992

ハッチバック式のボディスタイルにフルモデルチェンジした第三世代。時代の流れも手伝って、直線基調のデザインへと大幅にスタイリングが変わり、ボディサイズも先代よりもひと回り小さくなった。ボディスタイルにはコンバーチブルモデルが復活し、エンジンは直列4気筒、V6、V8とバリエーションを誇っていた。
最強モデルだったZ/28パッケージには1885年から1990年まで、さらなるオプションとしてIROC-Z(Interational Race of Championsの頭文字)が登場。これはアップグレードされたサスペンションや、コルベットと同じインジェクションシステムを搭載したホットバージョンだった。さらに1987年式には20th アニバーサリー・コメモラティブエディションや、1992年の最終モデルには25th アニバーサリー・ヘリテージエディションが登場している。

第四世代 1993-2002

先代のハッチバックスタイルを踏襲しながらも、曲線基調へと生まれ変わった第4世代。ボディスタイルはクーペ(Tバールーフもあり)とコンバーチブルがラインナップされた。搭載されるエンジンはV6とV8の2種類ながら、それぞれ排気量のラインナップを並べ、計5種類のエンジンをチョイスできた。ハイパフォーマンスなZ/28モデルに搭載された350ci(5700cc)のV8エンジンは275馬力を誇っていた。
1998年式でマイナーチェンジされ、フロントには大きく口を開けたグリルがデザインされる。
しかし、SUVなどの台頭によって、この世代のカマロだけでなく、いわゆるスポーティカーのセールスがアメリカ各メーカーで不調に。そのため2002年式でカマロの生産は終了することになった。最終モデルの2002年式には35th アニバーサリー・トリムパッケージがSSモデルでチョイスでき、ブライト・ラリーレッドの塗装に、シルバーでチェッカーフラッグ模様のレーシングストライプが入った仕様が存在した。

第五世代 2010ー2015

フォード・マスタングや復活したダッジ・チャレンジャーといったライバルブランドの同カテゴリーのモデルを追撃するべく、8年ぶりに復活した第五世代モデル。デザインは現代のカーデザインの主流ともいえるレトロ・モダンなデザインを採用し、初代カマロのディテールを取り入れたスタイルで登場した。
初めてカマロに乗る人だけでなく、往年のファンにも親しみやすいスタイリングだけでなく、映画『トランスフォーマー』での活躍も手伝ってプロモーションも成功したモデルとなった。当初は2ドアクーペのみの設定だったが、2011年式からコンバーチブルモデルも追加。エンジンはV6とV8をラインナップ。2012年式では580馬力を発生するV8(6200cc)にスーパーチャージャーで過給したZL1モデル、2014年には7000cc自然吸気V8エンジンを搭載したZ28を登場させるなど、現代版マッスルカーともいえるホットバージョンも生まれた。
第六世代 2016ー

キャデラックのCTSやATSとプラットフォームを共通化することでフルモデルチェンジした第六世代。先代よりもサイズ的にはほぼ変わらない(若干コンパクトになった)が、全体で90kg近い軽量化が図られたことでパフォーマンスは向上している。デザインは先代をシャープにしたようなレトロ・モダンなスタイルを踏襲。エンジンラインナップは大幅に変わり、直列4気筒ターボ(2000cc)、V6(3600cc)、V8(6200cc)、スーパーチャージャーで過給するV8(6200cc)になり、カマロ史上初めてターボエンジンがラインナップされた。
世界的な流れが小排気量+過給器という低燃費設計に向かっていることで、カマロも世界基準に。ただしスーパーチャージャー付きV8を搭載するZL1モデルは650馬力を発生させるという、アメリカ車らしさも忘れていない奥行きのあるモデル構成になっている。ボディスタイルは2016年式から2ドアクーペとコンバーチブルがラインナップする。