これは、まさしく恋なんだ。
「愛」と「恋」の違いとはなにか。古今東西の文人や歌人たちが、この謎に迫ってきた。敬愛する長渕アニキはその昔、今では考えられないような透き通る声で“好きです好きです”と「巡恋歌」を歌ってたと思ったら、その20年後に「激愛」をリリースし、絞められた鶏のような声で“舌を噛み切った〜”と壮絶な歌詞を歌いあげていた。
桑田佳祐は「シーサイドウーマンブルース」の中で“愛という字は真心 恋という字は下心”と歌っている。なるほど深い。「初恋」という言葉はあるが「初愛」という言葉はない。そういった意味からも、恋は愛の登竜門的な状態なのかもしれない。だから元気が有り余って「好きです好きです」と連呼するし、「下心」も生まれるわけだ。
俺の革ジャンに対する想いは「愛」である。
最初に革ジャンを買ってから30年以上が経ち、俺と革ジャンの関係は、円熟を通り越してお互い空気のような存在となった老夫婦のような関係を築いている。
革ジャンに目覚めた若かりし頃は、「この革ジャンを着たらモテるかもしれない」とか「みんなにカッコいいと思われたい」などと野暮な下心に塗れていたが、それも昔の話。いまは、ゆっくり自分のペースで、革との対話を続けている。
しかしである。私、久々に革ジャンに「恋」をした。その革ジャンを前に、年甲斐もなくドキドキしちゃった。
その革ジャンとは、分厚い鹿革で作られたダブルライダース「レオンカスタムディア」。
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とにかく革がいいのよ、これ。あらゆる革ジャンを見てきた俺だが、こんなにびっくりしたのは初めて。映画『時をかける少女』で原田知世という少女の透明感にやられた時と同じくらいの衝撃だった。俺が注文したのはブラックとブラウンの2色。それが先週ちょうど俺の手元に届いた。
久々に革ジャンで興奮したよ。今年の秋冬は、恋する革ジャンと一緒に過ごすこととなる。むふふ。
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(出典/「Lightning 2023年8月号 Vol.352」)
Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
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