創業91年。紺地の「大衆酒場」と赤地の「中華そば」の二つの暖簾が並ぶ。
1932(昭和7)年の創業時はなんと茅葺屋根だった。都営地下鉄新宿線が一之江まで開通したのは’86年。元は都電が走り、’68年には全廃となったトロリーバスが走っていた。現在は3代目の夫婦が切り盛りし、女将の浅野頼子さんは「当初は駄菓子屋でした」と、昔を振り返る。
名物の煮込みのパンチのある風味にビールが捗る。焼酎ハイボールには氷が入っていない。微かに感じる甘みは生のレモンや砂糖で作ったエキスの賜物。この組み合わせが昭和へのタイムスリップを加速する。
紺地の「大衆酒場」と赤地の「中華そば」の二つの暖簾にも、街道筋の茶屋だった来歴を感じる。とはいえ、中華メニューといえば、ラーメンにワンタンのみ。後者を所望すると、煮干しの効いた深いスープに感嘆する。ワンタンをつまみに飲む熱燗。癖になりそうな味わいだった。
【DATA】
カネス
東京都江戸川区一之江6-19-6
TEL03-3651-0884
営業/16時半~22時、日曜・祝日14時~22時
休み/水曜、毎月第3木曜
※値段など情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/別冊Lightning Vol.209「TOKYOノスタルジック横丁」)
Text/ R.Suzuki 鈴木隆祐 Y.Takeuchi 竹内佑騎 Photo/ A.Kuwayama 桑山章 Y.Amino 網野貴香
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