「ATTRACTIONS」代表・西崎智成さん
’40 ~’50sの革ジャンをこよなく愛するレザー愛好家。タンナーや加工工場を歩き回り、現場から得た知識をビルトバックのレザーにフィードバックしている。
着込んだ先のレザーの質感を左右する鍵は“仕上げ”にあり。
レザーの経年変化は革ジャンを着る醍醐味のひとつだが、新品の状態では着込んで育った先の表情がイマイチわからないのが革ジャン選びの悩ましいところ。もちろん普段のメンテや着方の影響も大きいので、「この革ならこうなる」と一概には言えないのだが、レザーの仕上げの工程は、経年変化の方向性を決めるひとつの指標になる。つまり、思い描く理想の経年変化像があるならば、仕上げには必ずこだわるべきなのだ。
まず、仕上げと言っても想像しにくいかもしれないが、仕上げは簡単に言うと着色時、または着色後に行われる作業工程で、レザーの表面となる部分に何を使ってレザーをコーティングするかというコト。その工程によって、シボの現れ方や退色のしやすさ、柔らかさなど、様々な個性が生まれるので実は経年変化ラバーにとっては非常に重要なポイント。
一生付き合うことになるかもしれない相棒を手に入れるその前に、理想のレザーの仕上げについて真剣に考えてみよう。
透明感が強く、シボが強調されるカゼインフィニッシュ
卵白のような仕上げ材をトップに使用するカゼインフィニッシュ。ラッカーと同様クリアだが、より自然な質感で、レザーがラッカーに比べて柔らかくなりやすいので、肉厚なレザーのライダースなどでよく採用される。表面の膜の透明度が高いため、レザーの本来の表情を大切にしながらも艶感が強く、シボ感や皺がハッキリと現れやすいのが特徴だ。
1940s〜’50sのヴィンテージに多く見られるラッカーフィニッシュ
染料染めの上にクリアのラッカーを吹き付けて仕上げたホースハイド。表面に透明の膜ができるため水に強く、’40s~’50s頃のレザージャケットに多く採用された。膜が厚いため着始めはややハードな着心地で、透明の膜によって銀面の凹凸がキラキラしたような光沢を持つ。擦れやすい部分は染料が剥がれるような荒々しい経年変化が見られる。
艶を抑えたしっとりとした質感のオイルフィニッシュ
天然のオイルでトップを仕上げたレザーはしっとりとしてマットな質感になるのがポイント。レザーが柔らかく馴染みが良いので、細かい皺が浮き出て、擦れる部分は光沢が出やすい。マットなため艶感のコントラストが味わいやすいのがオイル仕上げ特有の色気と言える。オイルの種類によって耐久性は様々だが、乾燥しにくいのも魅力である。
本来のレザーの風合いを味わいやすい素上げ
渋なめしのホースハイドに手塗りで染料の着色を施し、その上に仕上げ材を加えない素上げのフィニッシュ。表面に膜となるモノが何もないため、乾燥しやすく退色しやすいという特徴があるが、その分レザーが本来持っている表情を味わいやすい。色味やシボ感など、着込むほどに現れる経年変化をダイレクトに感じられるのが最大の魅力だ。
【問い合わせ】
アトラクションズ
TEL03-3408-0036
https://attractions.co.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典「Lightning2022年1月号 Vol.333」)
Text / Y.Kinpara 金原悠太 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
関連する記事
-
- 2024.11.21
この冬の相棒必至の革ジャン6選! スポーツジャケット編
-
- 2024.11.20
この冬の相棒必至の革ジャン7選! ライダースジャケット編
-
- 2024.11.15
経年変化とカスタムで、自分だけの一着を作る悦びを味わってみないか?
-
- 2024.11.12
いろんな革製品をゴシゴシしたくなる革専用ブラシ。