米軍ヴィークルが揃い踏み。圧巻のガレージがここに!
ガレージ――乗り物をはじめ、自分の好きなモノを詰め込んだ趣味空間。現実から離れ好きなモノに没頭できる隠れ家のような場所だろうか。群馬県藤岡市にあるこのガレージは、見ての通りアメリカ軍の軍用車が所狭しと詰め込まれた秘密の格納庫だ。オーナーは「KTアーツ」という建築会社を経営する塚田恭平さん。
小学生の頃に軍用車のフィギュアに興味を抱き、最初はドイツ軍からスタートしたが後にアメリカ軍の奥深さに気づいたのだという。そして、21歳で初めてのウィリス・ジープを手に入れ、今や第二次世界大戦中のアメリカの軍用車を6台所有。さらに、全てがバッテリー充電などの簡単な準備で走れる状態にあるから驚きだ。
「実際普段から乗るのは二台くらいですが、イベントで使うこともあるのでいつでも動くようにしています。軍用車は丈夫なので、一度しっかり整備すればそんなに壊れないんですよ。長いクルマはもう20年以上乗り続けていますね」
第二次世界大戦中のモデルなので、ここにあるほとんどのクルマはサイドバルブエンジンを積んでいる。サイドバルブはフォードが1908年からモデルTに搭載した機構で、’50年代にはOHVが主流となり、現代のエンジンに比べ
れば極めてアナログな機構なのだ。
アップデートしているクルマもあるが、オリジナルに忠実にレストアしているクルマもある。それをほぼ自分の手で整備しながら乗り続けている情熱こそ趣味人の鏡と言えるだろう。塚田さんがそこまで熱中する軍用車の魅力とは?
「クルマだけでなくミリタリー全てに言えることですが、何より機能美だと思います。デザインされた美しさではなく、機能から生まれた美しさ。それは流行で変わらないし、色褪せないですよね」
塚田さんのミリタリー愛はクルマだけでは収まらない。ガレージに続いて事務所を見せていただくと、そこには不稼働の実銃や制服、ヘルメットやキャンプ道具などありとあらゆる米軍グッズが並んでいる。仕事で造形モルタルやデザインコンクリートを駆使した内装を手がけるだけに、その全ての部屋がコンセプトごとに分けられた空間として作り込まれていて、映画の特殊な撮影スタジオのような部屋がいくつも続いている。
今でこそサバゲーブームでエアガンに興味を持つ人は増えたが、塚田さんの銃コレクションはほぼ全て実銃ベースの不稼働銃。様々なシチュエーションに合わせられるように豊富に種類を揃えている。
「サバゲーもやりましたが、撃つより当時の銃の本物の重さや感触を知りたい気持ちの方が強いですね。音もこだわっていて自分でガスプロップを作った銃はかなり本物の音に近いと思いますよ(笑)」
また、イベントにも積極的に参加し、ミリタリー仲間と世界観を共有する塚田さんだが、ミリタリーに興味を持つきっかけは子供の頃に見た映画『コンバット』から受けた影響が大きいという。
「原点はまさに『コンバット』。だから私のコレクションはほとんど第二次世界大戦のアメリカ軍のモノです。イベントは仲間内で相談して制服を着る人間の背景まで考えて装備を用意します。小学生の頃にプラモデルやジオラマを作るのが好きで、『コンバット』を見て米軍の世界観にハマって、クルマや道具、装備も子供の頃から趣味が全然変わってないですね(笑)」
塚田さんの米軍ヴィークルコレクションを拝見!
1942 Willys MB
写真中央が1942 Willys MB。米国陸軍の発注に対して開発された初めてのジープだ。悪路を平然と走り抜ける4WDで、砂漠の長距離パトロール、除雪、電話線敷設、製材用車両、消防ポンプ車、戦場救急車、トラクターなど様々な役割を果たした。写真左に映る幌付きのジープは’58年式の三菱エンジンを搭載するウィリスで、塚田さんが20代の頃から街乗りで走り続けている車両。
1944 FORD GPW
ウィリス MBの設計をベースにフォードが生産した軍用車。基本的な装備やデザインはMBと共通だが、ラジエターグリルのデザインやボディのプレスなど、フォードの量産技術の高さが見受けられる。各部のパーツに“ƒ” の刻印が入っているのも特徴だ。現代のジープにまで受け継がれるグリルデザインは実はGPWが元になっているのだ。
1945 WHITE HALF-TRACK
ボロボロの不動車で手に入れて、塚田さん自らレストアした米軍のハーフトラック。装甲板をアルミで製作し、キャタピラーはリプロパーツ、エンジンは日産の4Lガソリンエンジンをスワップし、ミリタリーイベントなどに自走で参戦している。
1942 DODGE WC57
第二次世界大戦時ダッジで開発されたコマンドカー。WC57は後部座席を有するソフトトップの乗用車型で、指揮車両や偵察車として使用された。奥に見えるのは’45年式WC52で、オープントップのウェポンキャリアと呼ばれるモデル。
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(出典/「Lightning 2020年12月号 Vol.320」)
Text/Y.Kinpara 金原悠太 Photo/S.Ise 伊勢悟 撮影協力/ KT アーツ http://www.ktarts.jp
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