レッドウィング(RED WING)の定番「アイリッシュセッター」ってどんなブーツ? 「875」とは何?

1905年創業のレッドウィング。アメリカのワークブーツの第一人者として今日、世界中で認知されているが、その地位に登り詰めるまで、様々なワークブーツを手掛けてきた。その歴史の中でも、特にアーカイブ性の高いプロダクツといえば「アイリッシュセッター」であろう。アイリッシュセッターの誕生から875の登場の歴史、年代の見極め方、現在販売されている種類、そしてコーディネイトまでご紹介しよう。

アイリッシュセッターの歴史とは? 誕生から初期の展開をまずは解説!

ワークブーツの主峰として、本国アメリカではもちろん、日本でもブランドを代表するモデルとして知られるアイリッシュセッター。白く底の平なトラクショントレッドソールが、このモデルのアイデンティティである。

【1950年誕生】854 Irish Setter

#854 Irish Setter (1950年代前半)

「877」が世に登場する2年前に誕生した、最初期のアイリッシュセッター「854」。

当時カリフォルニアのタンナーで開発された、美しいオレンジがかった茶色のフルグレインレザーの独占使用権を得たレッドウィングは、そのレザーで8インチ丈のハンティングブーツをつくった。モカシンタイプのつま先や、靴の側面下部に縫い目が入らないオールアラウンドバンプ、そして当時ハンターたちに人気のあったグロコード「キングB」ソールを組み合わせたこのハンティングブーツのベロ裏には、ハンターの姿をあしらったグリーンのタグが縫い付けられていた。

1950年、「854」という品番で発売されたこのブーツは、そのレザーの色が猟犬のアイリッシュセッターの毛並みに似ていたことから、カタログ上で初めて「アイリッシュセッター」というニックネームが付けられたことで知られる。

その2年後にこのモデルを進化させ、靴底がフラットな厚いクッションクレープソール(のちのトラクショントレッドソール)を装着した877が誕生し、全米で大ヒット。その潮流は現在まで継続されている。ちなみにこの854は、1958年に終売となった。

オハイオ州のリマ・コード・ソール&ヒール社が開発したソールパターン。ヴィンテージ市場でも見かけることはなく、非常に珍しいものと なっている
1950年、最初のアイリッシュセッターに付けられた通称「ハンタータグ」。アイリッシ ュセッターがハンティング用途として誕生したことを物語る

【1952年誕生】#877 Irish Setter

#877 Irish Setter (1950年代後半)

先に紹介した「854」をベースにアッパーデザインを改良し、ソールにクッションクレープソール(今日のトラクショントレッドソール)を採用した「877」。

男性用の靴で初めて快適性と静音性に優れた、クッション性に富んだ底の平らな白いソールを採用した事は、当時としては冒険であったが、これが大ヒットした。このヒールがないフラットソールのブーツは、本来のターゲットであったハンターだけではなく、ワーカーも屋根の梁上や梯子で作業する際の、抜群の安定性を高く評価した。

1954年には猟犬をデザインしたタグが開発され、6インチやオックスフォードなど、いくつかのバリエーションが誕生し、今日に続くアイリッシュセッターの形ができあがった。

ちなみに、当時アイリッシュセッターのラインに使われていたオロラセットレザーは色が安定せず、赤茶に近い濃いものからゴールドの色調を持つ明るい色のものまでさまざまな色合いのものがあった。このサンプルはオロラセットが明るい色に仕上がった時のもの。

現在のアイリッシュセッターに使われている革色のゴールドラセット・セコイアは、当時のオロラセットレザーの色目のなかでの、こうした明るいものをベースとして開発された。

当時はトラクショントレッドソールという 名称はまだなく、底のトレッドパターンも 現在とは異なるクッションクレープソール であった
初期のアイリッシュセッターに付けられる犬タグは刺繍製で、手の込んだ造りをしていた。その後1960年代に入るとプリントのタグに変更される

1958年、「875」ついに登場! 「877」の6インチのバリエーションとして誕生。

#875 Irish Setter(1960年代前半)

「877」の6インチのバリエーションとして1954年に登場し、現在まで続くロングセラーである「875」。この「875」も、「877」も、デザインは発売当初から基本的に変わっていないが、「875」に関しては1960年代の一時期(’63年〜’65年)のみ、つま先のモカシン縫いの方法が変更された時期がある。

この靴はその時期に作られたもので、つま先が通常の「おがみモカ」でなく、甲のU字型の部分の縫い目に革をかぶせた「かぶせモカ」で作られている。止水性を狙ったこのデザインはハンティングブーツによく見られる。またレッドウィングでも、一部のハンティングブーツにこの製法を使っており、その応用でもあった。

ワーカーからの需要が多く、ハンティングブーツというよりもワークブーツとして履かれた「875」の場合、この製法はそれほど必要とされなかったようで、’66年には元の通り、二つの革パーツの縁を両側から縫い合わせた「おがみモカ」に戻されている。写真の「875」は「かぶせモカ」でつくられた当時の、極めてレアな逸品である。

「かぶせモカ」仕様となったつま先部分。 ハンティングシーンでの止水性能の向上を図った、特徴的なデザインである

「875」と同時期に誕生した「877」の派生モデル、「895」。

#895 Irish Setter(1960年)

1954年に「877」のバリエーションとして誕生したモデルの中に、6インチブーツである「875」などと共にこの短靴(オックスフォード)があった。

ふたつの革パーツの縁を両側から縫い合わせた「おがみモカ」製法、そして腰革にライニングなしの一枚革を使用するなど、「875」のショートカット版ともいえるこのオックスフォード「895」は、1964年まで製造された。のちのアイリッシュセッター「9895」は、この「895」を再現したもの。

1990年代に消滅したアイリッシュセッター、2011年日本市場の要望で復活。「875」は6インチ クラシックモックに。

#875 6” Classic Moc

1990年代の日本で爆発的な支持を得た「アイリッシュセッター」だったが、その裏で本国アメリカでの販売が鈍化した影響により、1998年にその名称は消失してしまう。それにより、「875」は「6インチ クラシックモック」として知られる存在に(名称はたびたび変更)また日本市場で特に人気の高かった赤みの強いカラーを再現したレザー、オロラセット・ポーテージを使った6インチ クラシックモック「8875」が「875」のバリエーションとして1996年に誕生している。

しかし日本が「アイリッシュセッター」に大きな思い入れをもっている事が理解され、2011年に日本が望む形で復活。レザーは「6インチ クラシックモック」で使用されているオロ・レガシーではなく、かつて若者を熱狂させた履き込むほどに味わい深くなるオロラセット・ポーテージの中でも明るいものをベースにして開発されたゴールドラセット・セコイアを採用しているが最大の特徴。

アイリッシュセッターの年代の見極め方。犬タグに注目!

製造年代を判別するのに最もわかりやすいのがタグのデザイン。ヴィンテージ市場でも特に人気の高いアイリッシュセッターのタグはある程度の年代判別が可能となる。

~1953

’40年代〜’53年までに使われた初期タグはグリーンの地に猟銃を持ったハンターが描かれた刺繍タグ。

1954~

描かれるモチーフもハンターから犬へと大幅に変更された2世代目のタグ。こちらも刺繍タグとなる。

1970s 初期~1980s

’60年代に入るとタグは刺繍からプリントへ変わり、’70年代初頭からタグの右側に「MADE IN AMERICA」の文字が追加された。

1980s~

デザインに大きな変化はないが右側の「MADE IN AMERICA」だった表記が「MADE IN U.S.A.」へと変更となる。

1990s~

デザインが刷新され半円型のタグに。タン内側に付けられるが、後に外側へ変更となり細部の仕様が少しずつ変更される。

1996~1999

’96年頃からアンクル部分に犬の刻印が施されるようになり’99年頃まで採用されていた。

▼年代の見分け方がわかったら、その価値が知りたくないですか? この記事も合わせて読もう。

レッドウィングの「アイリッシュセッター」の中古市場での価値とは? 犬タグの見分け方もチェック!

レッドウィングの「アイリッシュセッター」の中古市場での価値とは? 犬タグの見分け方もチェック!

2022年12月05日

「アイリッシュセッター」にはどんな種類がある? 「8165」後継の黒も気になる!

数々のモデルが復活後にも登場したアイリッシュセッター。現在基本となるのはカラバリ含めて3種類。デザインだけでなくレザーの違いもチェックしよう。

※ここでは875など6″ CLASSIC MOCは通称で使用されているため除外します。

1.Irish Setter 6″ Moc(アイリッシュセッター 6インチモック)9875

アッパーの色が猟犬に似ていることから名付けられた「アイリッシュセッター」。1997年にそのシンボルとなるタグは外されたが、2011年に復活。オロラセットレザーを思わせるゴールドラセット・セコイアを採用している。

  • レザー:ゴールドラセット「セコイア」
  • 製法:オールアラウンド・グッドイヤーウエルト
  • ソール:トラクショントレッド
  • ラスト:No.23

2.Irish Setter 6″ Moc(アイリッシュセッター 6インチモック)9874

「Irish Setter 6″ Moc」の茶芯が楽しめるブラック・クロンダイクを採用したモデル。黒のアイリッシュセッターでモックならこれ。

  • レザー:ブラック「クロンダイク」
  • 製法:オールアラウンド・グッドイヤーウエルト
  • ソール:トラクショントレッド
  • ラスト:No.23

3.Irish Setter 6″ Round(アイリッシュセッター 6インチラウンド)9870

アイリッシュセッターの6インチラウンドトゥは様々なバリエーションを生んだが、1990年代のストリートファッションで爆発的な人気を獲得したのがブラックレザーの「8165」だった。履き込むほどに茶色の芯地があらわれる「茶芯」仕様。そんなヒット作を再現すべく開発されたのが「9870」だ。

  • レザー:ブラック「クロンダイク」
  • 製法:オールアラウンド・グッドイヤーウエルト
  • ソール:トラクショントレッド
  • ラスト:No.8

▼レッドウィングのモックトゥが好きな方はこちらの記事もチェック!

「レッドウィング」の大定番“モックトゥ・ブーツ”に再注目! 6インチクラシックモック以外にもあるんです。

「レッドウィング」の大定番“モックトゥ・ブーツ”に再注目! 6インチクラシックモック以外にもあるんです。

2022年12月06日

この記事を書いた人
モヒカン小川
この記事を書いた人

モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

夏を装いが物足りない時のひと工夫。涼しげな素材と優しい配色で気軽に“レイヤード”を楽しむ

  • 2026.04.16

シャツとジーパン。それだけで成立することは分かっていながら、やっぱりちょっと物足りない、と感じたときに思い出してほしいキーワード。それは、レイヤードだ。ぜひ夏の装いのひと工夫に加えてもらいたい。 涼しげな素材×優しい配色のレイヤード 夏に着るトップスはシャツとインナーだけになりがち。だが、シャツの下...

これが“未来のヴィンテージ”。綿、糸、編み機……すべてに徹底的にこだわる唯一無二のカットソー

  • 2026.04.27

綿、糸、編み機……。素材から製法まで徹底的にこだわり、唯一無二のカットソーを創り続けるライディングハイ。「FUTURE VINTAGE(未来のヴィンテージ)」を目指す彼らのフィロソフィは如何にして形成されているのか。プロダクトの根幹をなす代表・薄 新大さんの“アイデアの源”に迫る。 More tha...

横浜発アメカジブランド「HEATH」による、定番アメカジのマストアイテム5選はこれだ!

  • 2026.04.03

横浜を拠点に、定番からちょっとアレンジの効いたアメカジを提案するHEATH。人気ブランドのアイテムをセレクトするだけでなく、オリジナルのモノづくりにも注力しており、そのコストパフォーマンスの高さには定評がある。今回はその中から絶対に手に入れておきたいマストアイテム5選を紹介しよう。 【横濱デニム】デ...

Pick Up おすすめ記事

夏を装いが物足りない時のひと工夫。涼しげな素材と優しい配色で気軽に“レイヤード”を楽しむ

  • 2026.04.16

シャツとジーパン。それだけで成立することは分かっていながら、やっぱりちょっと物足りない、と感じたときに思い出してほしいキーワード。それは、レイヤードだ。ぜひ夏の装いのひと工夫に加えてもらいたい。 涼しげな素材×優しい配色のレイヤード 夏に着るトップスはシャツとインナーだけになりがち。だが、シャツの下...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

100本限定生産の「エイトG」大戦モデルは、春にぴったりの履き心地とメリハリのエイジング

  • 2026.04.02

無骨なまでに肉厚なデニムで知られるエイトG。その中でも比較的穿きやすく、この時期にぴったりの一本が、第二次世界大戦期のディテールを落とし込んだ大戦モデルだ。特濃インディゴで染め上げた糸ならではの、メリハリの効いたエイジングは、自分だけの一本になること間違いなしだ! ワイドシルエットが生む、クラシカル...

「バンソン」のタフネスを、春夏へ。伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボアイテムにも注目だ

  • 2026.04.02

バイカーブランドの代名詞、VANSON。今春は軽やかな布帛アイテムでイージーな装いを提案。そして伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボレーションも登場。自由なスピリットを、そのまま服に落とし込んだラインナップを紹介する。週末のライドにも、街の散歩にも、着ることで体感できるフリーダムさを、VAN...

これまでで一番“アイビー”なクラークス誕生! 2026年春夏の新作にペニーローファーやボートシュー ズも登場

  • 2026.04.27

「クラークス」が2026年春夏の新作として発表した「デザートアイビーコレクション」。ブランドのアイコンである[デザートブーツ]や[ワラビー]、[デザートトレック]はアイビーらしい配色に落とし込まれ、アイビーの定番靴であるペニーローファーやボートシューズも顔ぶれに加わる。英国、アメリカ、日本。各国のカ...