バイク乗りに! 過酷な環境に! 機能美の傑作「フライトジャケット」は“ゾーン”で選ぶ。

  • 2023.07.14  2019.08.31

フライトジャケットはその名のとおり、飛行機のパイロットが着るものとして作られた。我々がファッションとして取り入れているのは主に、米軍のものがモチーフとなっているが、アメリカ以外の世界各国の軍もまた、威信にかけてフライトジャケットに最新技術を投入してきた。

そんなフライトジャケットの魅力は、意図したものではないからこそのデザイン性。機能性を求めた結果としてのデザインは、やはり男心に響くものだ。だから、もしフライトジャケットをこれから買うのであれば、まずはそれぞれのジャケットが誕生した時代背景と求められた機能性を知っておきたい。

米軍のフライトジャケットは、防寒性や機能など目的ごとに「ゾーンタイプ」で分類していた。主なものとしては「ライトゾーン(摂氏10℃~30℃)」「インターミディエイトゾーン(摂氏‐10℃~10℃)」「ヘビーゾーン(摂氏‐10℃~‐30℃)」に分けられる。それぞれの環境に対応したフライトジャケットを系譜を追って見ていこう。

ライトゾーン (摂氏10℃~30℃) 【米陸軍航空隊/米空軍】

MA-1と似た容姿で間違いやすいのがL-2B。大きな違いはゾーンタイプにあり、こちらは10℃~30℃対応なので、中にウールパイルが施れていないのが特徴。1920年代後半にフライトジャケットとして初めて制式採用されたA-1 は、まだ仕様が統一されておらず、1931年になって初めて統一仕様のA-2が誕生。1945年にナイロン素材を使ったL-2に変更となり、L-2A、L-2Bへと変化した。

  • 【ライトゾーンの系譜】 A-1→A-2→L-2→L-2A→L-2B

TYPE A-1

1927 年に米軍が初めて採用したフライトジャケットであるA-1。特徴はリブのスタンドカラーとフロントがボタン留めであること。フラップポケットは後のA-2に引き継がれた。こちらはウィリアムギブソンコレクションのA-1 で、素材をレザーからウールにアレンジ。

TYPE A-2

レザー製のフライトジャケットを代表するモデルとして、広く知られるA-2。中でも人気のあるラフウエア社の1942 年契約の3 番目となるモデルを、イタリア産のホースハイドで仕立てた。アニリン仕上げなので素晴らしい経年変化を期待しよう。

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TYPE L-2

実はL-2 がA-2 の後継モデルであるということを知らない人は意外と多い。こちらは、アメリカンパッド&テキスタイル社のモデルを実名復刻したもの。第323 爆撃戦闘航空団のもので、右胸には第454爆撃戦闘飛行隊章も付く。

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TYPE L-2A

スーペリア・トグス社製のモデルを実名復刻したもの。N-2、N-3 と同じく、L-2 シリーズもエアフォースブルーはA タイプとなる。昨今のネイビーブームの中では、このL-2A が最も取っ付きやすいのでは?

TYPE L-2B

MA-1と間違う方も多いL-2B。細かな仕様の違いは多数あるが、大きいのはウールパイルが施されていないこと。よってサラッとスウィングトップ感覚で着用できる。

インターミディエイトゾーン (摂氏-10℃~10℃) 【米海軍】

G-1は米海軍のフライトジャケットの代表格。1930年代のM-422に始まり、その系譜はAN-6552、1940年代初めにAN-J-3Aとなり、1947年に「55J14」のスペックナンバーを持つ初代G-1 が誕生した。その後は細かな仕様変更はあったが、デザインは大きく変わることなく、1980年代までずっと採用されていた。

  • 【インターミディエイトゾーン(米海軍)の系譜】 M-422→AN-6552→AN-J-3A→G-1(55J14)→MIL-J-7823→7823A~7823E

TYPE AN-J-3A

ANとは「ARMY / NAVY」の略で、陸軍航空軍と海軍の共用だったことを示す。ライバル関係にあった両者だが、物資不足からこのようなAN品番が存在した。

TYPE G-1

1947年に誕生した初代G-1である「SPEC.55J14」。その後継として、1950年代初期に誕生したのが「MIL-J-7823」。その完成度の高さから、細かな仕様変更をしながら7823A~7823E と1980年代まで作られていた。

インターミディエイトゾーン(摂氏-10℃~10℃)【米陸軍航空隊/米空軍】

米海軍のインターミディエイトゾーン仕様のフライトジャケットの代表的なものが「AN-J-3A」「G-1」であるならば、米陸軍航空部隊/米空軍のフライトジャケットのなかで、最も馴染み深いものは「MA-1」だろう。これは米空軍が制定したもの。1943年にその祖先となるB-10が採用され、すぐにB-15に変更。B-15Aまではコットン素材だったが、B-15Bからナイロンになり、細かな仕様変更を経てMA-1へと進化した。

  • 【インターミディエイトゾーン(米空軍)の系譜】 B-6→B-10→B-15シリーズ→MA-1(MIL-J-8279)

TYPE B-6

ヘビーゾーンに対応したムートンを使った「B-3」。動きにくく重たかったB-3を改良したのが「B-6」。ムートンの毛足を短く刈り込み軽量化し、背中にアクションプリーツを設け機動性を重視。その分、保温性は低くなるが、それでもインターミディエイトゾーンに対応。いわばB-3の軽量版的な存在だ。

TYPE B-10

主にA-2のコントラクターとして知られるラフウエア社製のB-10を実名で復刻したもの。「B-6」の後継モデルとして、1943年に誕生。コットンシェルにムートン襟、アルパカ&ウールパイルのライニングが施される。

TYPE B-15

B-10に改良を加えたB-15シリーズの原点。中心から右にオフセットしたファスナーが特徴で、この仕様はB-15Bまで受け継がれる。こちらはバズリクソンズ20周年限定品で、ブランド誕生のきっかけとなった初代モデル。

TYPE B-15C A.F.Blue

エアフォースブルーのナイロンシェルが特徴のCタイプ。米空軍の第6147戦術統制飛行隊のスコードロンが左胸に付属。実は1954年2月、日本に新婚旅行中だったマリリン・モンローは、突然韓国に駐留していた米軍を慰問。その時彼女もこれを着た。

TYPE B-15C Olive[Modified]

大戦後、ジェット機の投入によってパイロットのヘルメットが大型化。それにより動きの妨げになるムートン襟を取り外し仕様変更されたのが、この「モディファイ」と呼ばれるモデル。元々の黒ラベルの上から白い改修ラベルが付く。

TYPE MA-1

1950 年代後半に登場したMA-1初代モデルである「MIL-J-8279」。ライオン・ユニフォーム社の実名復刻で、第50 爆撃戦闘航空団のスコードロンパッチと少佐階級章が付く。右腕には最小単位の編成ユニットを示すフライトパッチも付属。

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