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MA-1の歴史とは? 1950年代に生まれたフライトジャケットの傑作。
MA-1は1950年代にB-15Dという前身のモデルから引き継ぐカタチで登場したナイロン製フライトジャケットだ。航空機技術が飛躍的に発展していた当時のパイロット用ジャケットとしては異例のロングセラーモデルとなる。1950年代〜’80年代まで現役で活躍しており、制式な軍用品規格番号がMIL-J-8279〜8279Gまであることから、計8回の仕様チェンジが繰り返され納入されてきた実績を持つ。
当然のことながら、’50年代の初期型と’80年代の後期型ではナイロンの色味やライニングの仕様違い、ポケット形状の変化などが見受けられるが、基本的な規格は変わっていないので見た目のデザインにも大きな違いはない。コックピット内で様々な機器に干渉しないよう、左肩に設けられたユーティリティポケット以外は無駄な突起がほとんどなく、背面の裾丈が短いのは着座した際に腰がつっぱらないようにするためなど、街着には不釣り合いなミルスペック(軍規格の仕様)にこそロマンが詰まっている。そんな側面を楽しみながら着用するとMA-1の魅力は倍増するに違いない。
フライトジャケットの傑作となったそのワケは?
先にもの述べたように、極めてシンプルなその外見からもわかる通り、狭い軍用機内で様々な機器に干渉しないように、無駄を一切省いた機能的なデザインが採用された。また機内に着座した際に尻と腰の間に生地が挟み込まれないように、後ろ身頃が前身ごろよりも裾丈が短めに設定されたことなど、登場当時からフライトジャケットとしての完成形を見たことでロングセラーとなった。
なぜ今になって再びMA-1 が脚光を浴びることになったのか?
近年リバイバルブームが盛り上がっているMA-1。実は30年ほど前に、映画『トップガン』を筆頭とする航空映画があり、この頃を起点に一度人気は到来していた。再燃のきっかけは、“女性が男性のアウターを着用する”という大きなファッショントレンドの流れがきっかけ。シルエット改良やモディファイを施したMA-1が人気に拍車をかけたのだ。
今人気のMA-1、どう着こなすのが正解?
ジーンズ&ブーツの鉄板的な着こなしはもちろんのこと、昨今はビッグシルエットのTシャツをわざと外に垂らし、不釣り合いと思われがちなフェルトハットを合わせる上級テクニックも。もちろん、細目のチノパンにスニーカー、スウェットパンツにブーツなどというアンバランスな組み合わせを楽しむ潮流もあるが、いずれもスタンダードなMA-1は欠かせない。
ひとえにMA-1 と言っても様々な仕様と役割がある。
それでは実際のMA-1をもとに、ディテールをチェックしていこう。無駄のないシンプルな形状こそMA-1の魅力だが、要所要所に採用されて仕様は要チェックだ。
タブ
初期型のMA-1 に見られるこのタブ、実はパイロットが高高度で飛行する際に必要な、酸素マスクのホースを固定するパーツなのだ。
コードループ
機内通話装置(ICS)の音声プラグコードを固定しておくための「コードループ」。ヘルメットの発達により中期以降は排除される。
ファスナー
大型のフロントファスナーに加えコットン製の引き手も装備。グローブのままジップの開閉ができるように設計されているのが特徴。
比翼(前立て)
風の侵入を防ぐ遮風フラップの役割を果たすフロントの比翼(前立て)はファーストモデルのみ角型、2 代目以降が丸型になる。
タグ
MA-1 は計8 回の仕様チェンジを誇る。ミルスペックは初代のMIL-J-8279 からMIL-J-8279G まであり、各々を襟裏のタグで確認できる。
ポケット
飛行中は当然禁煙が義務だが、ペン差しやシガレット用のポケットが装備されている。これはMA-1の最も特徴的なディテールだ。
リブ
継ぎ目のない輪編みが特徴のリブで、袖口と袖裾で編みが切り替えられている。バージンウールが主で、独特のシャリ感がある。
階級章
肩口に配されることが多い階級章。ちなみにこれは大尉(キャプテン)。これより上の階級は、少佐~大佐、少将~大将,空軍元帥となる。
カスタムパッチ
MA-1 でもよく見られるカスタムパッチ。所属する部隊や記念行事、搭乗機の種類やスキル(経験値)を示すものなど様々ある。
ライニング(裏地)
ライニング(裏地)の色も初期のグレーから、遭難した際にリバーシブルにして助けを求めるレスキュー色まで仕様違いが存在する。
「アルファ」を筆頭に、MA-1を出しているブランドに注目!
MA-1は多くのブランドから発表されているが、その道のプロ、ミリタリーウエアに精通しているブランドのものはやはり仕様も着心地も格別だ。MA-1といえばココと言われる、定番ブランドの定番MA-1をピックアップ!
ALPHA INDUSTRIES(アルファインダストリーズ)
軽量で柔らかいナイロン素材を使用したモデル。中わたのプリマロフトはダウン並みの保温性を持ち、防寒着としても活躍すること間違いなし。また圧縮性も高いのでコンパクトに畳むことも可能で旅先にもぴったりだ。
ポリエステルを使用した二段のリブ。手首部分はしっかりと織り込みぴったりと締まるので冷たい空気が袖口から入ってくることもない。
細番手30 デニールのナイロン100%を使用しているため柔らかい感触が特徴。本物の色も忠実に再現している。また薄手なのですっきりとしたシルエットで着こなせるのも嬉しい。
1950 年代のヴィンテージMA-1のレプリカで、胸元に第20爆撃飛行隊のワッペンが付いたモデル。第20 爆撃飛行隊は虎がモチーフで、当時ヴァージニアを拠点にしていた。1958 年製をベースに忠実に再現している。(中田商店)
ショルダーには大尉を示す階級章をシルバーの糸で刺繍したパッチを付け、ベースになったモデルを忠実に再現し
ている。
本物にはミルスペックという軍の規格をクリアした証明タグが付いている。そのタグを模倣してサイズやストックナンバーなどを表記したタグを再現。
The REAL McCOY’S(ザ・リアルマッコイズ)
1961 年からライニングがリバーシブルを目的としたオレンジになった、ミルスペック「8279」のD 型のモデルをベースに、ベトナム戦争時のB-52 爆撃隊のパッチを配したモデル。中でも腕に縫い付けられたローカルメイドのパッチはファンシーなイメージを与える。
D タイプのMA-1 には、史実に基づいたクラウン社製最終期を代表するCC ジッパーのデッドストックが取り付けられている。ヘリンボーンツイルのテープとともに重厚感のある表情が特徴的だ。
AVIREX(アビレックス)
映画『トップガン』でトム・クルーズ扮する主人公マーヴェリックが着用していたタイプG-1 のフライトジャケットをMA-1 に落とし込んだ1 着。多彩なワッペンや独自のスコードロンパッチなど、AVIREX ならではの本格的な味付けが秀逸だ。
米軍の制式納入業者だった実績を持つAVIREX ならではのリアルな部隊章などがワッペンとしてボディの随所に配されている。
ライニングはMA-1 の中期以降に採用されるレスキューカラーのオレンジを採用。表地の色味とのコントラストが絶妙だ。
BUZZ RICKSON’S(バズリクソンズ)
1950 年から1962 年の12 年間、欧州で非公式の活動を行っていたエアロバティックチーム「スカイブレイザース」のパッチをあしらった、初期型MA-1 を再現。この部隊は後の米空軍アクロバットチーム「サンダーバーズ」の原型にもなった。
’50 年代当時、米空軍アクロチームで流行していた9 インチ近いサイズのバックパッチが縫い付けられる。欧州エリア上空を飛ぶ戦闘機が、スカイブレイザースのパッチの意匠だ。
フロントジッパーは、ヴィンテージ同様に、10 号サイズのクラウン・スプリング・オートロック式ジッパー。ワイヤー製に変更され、コットンテープの引手が付く。
TEDMAN(テッドマン)
テッドマンのルーツともいえるMA-1。お馴染みの立体ワッペンを主体に、刺繍とプリントを駆使して、プロペラ機から爆弾投下の狙いを定めるボンバーテッドマン。シャレの利いたユニークなデザインは、ぜひチェックしておきたい。
MA-1 の初期型の角張ったフロントフラップを採用。細部のデザインにもこだわり、テッドマンらしい仕様だ。
立体ワッペンとチェーンステッチ刺繍、プリントをうまく組み合わせて仕上げた背中のテッドマン
デザイン。様々な技法を取り入れた仕上がりは、さすがの出来映え!
◆
まだまだ多くのブランドが手掛けているが、今回はここまで。MA-1のディテールの再現などチェックしてみると、面白いはず。いろいろ見比べてみてはいかがだろうか。
▼MA-1のお手入れ方法はこちら!
▼フライトジャケットをはじめミリタリージャケットについてはこちらの記事をチェック!
※サイズ表記は、各ブランドの表記に準じています。
※情報は取材時のものであり、現在販売されていない場合があります。
(出典/「Lightning Vol.270」「Lightning Vol.271」)
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