大工道具からミュージックは生まれる。 〜大工さんを知ろう[ショート動画付き]〜

民俗や地域伝統文化のあれこれに没頭しがちなエディターが、あなたの日々の暮らしに、とても小さなときめきをお届けしましょう。言葉だけは知っている作法や行事、未来をひらく温故知新、興味はあるけどよくわからない民俗のことなどについてわかりやすく紹介します。

大工さんを知ろう① 「大工さんの神様」が最新大工道具を日本にもたらした

大工さんの神様は、長い間お札の肖像にも選ばれていた聖徳太子です。

聖徳太子は、木材の長さや角度が測れ、目盛によっていわゆる計算機の機能も備えたL字形の大工道具「さしがね」を中国から持ち込んだり、現存する世界最古の木造建築である法隆寺(奈良県)を始めとした寺院建立に尽力したりしたことで、大工さんや土木建築の神様とあがめられている。

かつて大工さんと話していたとき、「大工ってのは、さしがねをまたいじゃダメなんだよ」なんて話にあがったことも。

ちなみに、聖徳という文字は没後のおくりなで、生前は厩戸王(うまやとおう)と呼ばれた有力な王族であったといわれている。

大工さんを知ろう② 太子講ってなんだ?

太子講(たいしこう)とは、聖徳太子を祀り、大工さんを始めとした建築関係者が行う法要(仏教で、供養のための儀式)や宴会のこと。簡単にいえば、大工さんたちが1年間の無事故を祈願する行事だ。古代存在する「講」とは、信仰集団や、経済的な相互扶助などを行える民間の金融集団を指している。

聖徳太子の命日は、旧暦222日。

そのため太子講は、現代の暦に置き換えた近い日程や、月命日22日などが選ばれやすく(結果、冬季が多い)、全国各地で日本の伝統のひとつとして毎年開催されている。

ちなみに、1122日は記念日「大工さんの日」に制定されている。112本の柱を表しているという。

大工さんを知ろう③作業音で踊りだせそうなYouTubeショート「大工のシゴト」

コロナ禍前までは、日本の子どもたちにとって将来なりたい職業のひとつとして人気があった大工さんも、近年の統計では人気もやや低下傾向の様子。

そこで、大工さんという日本の伝統あるシゴトを、より多くの皆さんにまず知っていただきたい思いで、このたびショート動画を作ってみました。

①ショート動画「大工のシゴト」

②ショート動画「大工のシゴト2」〜伝統大工の作業音・限定版〜

ショート動画①の冒頭に登場している図面は、社殿群が世界文化遺産に登録されている日光東照宮の五重塔の断面図。1815年に落雷火災で五重塔が消失し、1818年に再建された当時の原本資料だ。ここで採用されている建築構造が、なんと現代の東京スカイツリーの耐震構造としても採用されている。この図面を代々所持され(=当時の建築作業に先代が携わり)、300年以上続く大工さん一家のお力添えを、この動画制作ではありがたくもいただくことができた。

動画では、2本の材を釘を使わず継ぎ合わせながら屈強な強度を保持する「継手(つぎて)」の工程を目で追いながら、耳はすまし、木の奏でる音色をご堪能ください。

この記事を書いた人
中川原 勝也
この記事を書いた人

中川原 勝也

民俗と地域文化の案内人

エディター。地域伝統文化のこと、民俗のあれこれ、古民家・民藝・暮らしのこと、などを当サイトでは担当。これまで日本カルチャーを主なフィールドにしながら、国内の法人・自治体・商品のブランディングにまつわるメディア等を手掛けてきた。温故知新好きが募って、ただいま、月刊古民家誌『じゃぱとら』編集長。
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