Buzz Rickson’s(バズリクソンズ)が歩み続ける飛行服の継承。

  • 2024.10.21

我々が日常使いするフライトジャケットは、戦前である1930年代から軍用飛行服として米軍が歴史を発展させてきた。中でもプリミティブとも言える馬革製で仕立てられたA-2は、シンプルながら飛行服の色気が感じられる。米軍の飛行服には馬革、羊革、山羊革などのそれぞれ表情豊かな個性と特性を持った皮革が使われ、戦後になるとナイロンをはじめとした化学繊維へと素材が移り変わっていく。Buzz Rickson’sが今季展開する新作でも、歴史と誇り漂うフライトジャケットの世界は顕在である。

JACKET, FLYING, SUMMER TYPE A-2 / BUZZ RICKSO CLO. CO. CONTRACT No. W535 ac-21996

米陸軍航空隊が採用するA-2を製造したコントラクターの中で最多の7度もの納入を誇ったエアロレザー社。その中で1941年に製造した5度目の生産ロットに当たる“赤リブ”モデルが登場。4度目までの納入分では台襟が付いた仕様であったが、この5度目からは台襟を省略した仕様へと変更されたのが特徴で、このモデルは左右の前見頃が同じ型紙を使用しているため、ポケット位置を水平に移動して正面から見た時のバランスを保っている。

またスナップボタンにはリングスタッド型を使用するため、着込んだ時にドーナツ状に擦れやアタリが浮き出るのも個性的だ。赤いリブニットを装着したA-2は、全コントラクターである18社の中でエアロレザー社だけである。BR80644 / ¥231,000_

JACKET, FLYING, SUMMER TYPE A-2 / WERBER SPORTSWEAR CO. ORDER No. 39-2951P

1930年代に型紙が誕生したA-2は1943年まで指定されたコントラクターが39度もの生産ロットで対応した。中でもウェーバースポーツウエア社は、戦前の1933年から1941年まで4度にわたりA-2を軍に納入した、歴史ある旧いメーカーの一つ。このモデルは1939年に製造した3度目のロットに当たるモデルを再現。

ジッパーには、身頃とジッパーのエンド部分をアイレットでかしめた、1930年代に主流だった鳩目ジッパーが装着されている。メインマテリアルには樹皮から抽出した渋液で鞣した後、職人の手で丹念にワックスを擦り込み、オリジナルレシピで製作したホースハイドを使用している。BR80646 / ¥264,000_

JACKET, FLYING, INTERMEDIATE TYPE B-6 / A.C. CONTRACT No. 42-5110-P BUZZ RICKSON CLO. CO.

1939年に正式採用された初のインターメディエイトゾーン(中温域用)のジャケットであるタイプB-6。マテリアルには毛足を短く刈り込んだシープスキンを採用する。背面にはアクションプリーツを設けているため、狭い機内での運動性を重視した設計となっている。腰の両脇にはフィット感を調整するためのジッパーがデザインされ、締めると優れたフィット感(機密性)が得られる。

フライトジャケットの黄金期を支えた重要素材であるムートンは、インターメディエイトゾーンの歴史を語る上で外せないマテリアルである。BR80652 / ¥572,000_

JACKETS, LEATHER FLYING TYPE AN-J-3A / BUZZ RICKSO CO. INC. HORSEHIDE MODEL

米海軍で使用されていたM-422Aの後継モデルとして開発されたAN-J-3AとAN6552。開発当初は陸軍航空隊との共通使用を目的としていたため、襟裏には“US”とマーキングされている。しかし実際には海軍での採用に終わってしまい、陸軍航空隊ではこの型をコットン製のインターメディエイトフライトジャケットであるB-10に置き換えて採用している。

このAN-J-3Aはウィリス&ガイガー社が1946年に納入したモデルを忠実に再現。本来ならゴートスキンがメインマテリアルに使用されるが、このロットのみホースハイドが使用された、希少性の高いモデルだ。BR80647 / ¥242,000_

JACKET, FLYING, INTERMEDIATE TYPE B-15C (MOD.) / B. RICKSON & SONS. INC. 334th FTR. BOMB. SQ. “EAGLES”

ジェット機の到来によりフライトジャケットを含む航空装備の見直しが図られ、ヘルメットなどヘッドギアの大型化により、それまでのムートン襟を装備したフライトジャケットでは襟に干渉してしまう問題が起こる。そのためB-15シリーズは襟にウールニットリブを付け替える改修を加えた“Modified(MOD.)”モデルが製作される。

こちらのモデルは多数のエースを輩出した朝鮮戦争時代の第334戦闘飛行隊のもの。使用されるスコードロンパッチは当時日本で製作されたローカルメイドパッチで、左胸に第334戦闘飛行隊パッチ、右に第4爆撃戦闘航空団章がデザインされている。BR15570 / ¥107,800_

“BUZZ RICKSON’S”דKOSHO & CO.” SOUVENIR JACKET / SPECIAL EDITION 334th FTR. BOMB. SQ. CHITOSE JAPAN

1950年代当時、日本国内の米軍基地周辺には、卓越した横振り刺繍技術を持つ刺繍店が点在しており、日本に駐留した米兵達はこぞって刺繍店へと足を運んで“スカジャン”を特別にオーダーしていた。当時は為替相場が1ドル=360円であったことから、米兵は安価で豪華な刺繍を依頼することが可能なことで人気を博した。

こちらのスカジャンは第4爆撃戦闘航空団の第334爆撃飛行隊“イーグルス”に所属する“チャック”なる人物が所有していたもの。背面には当時の最新鋭ジェット機F-86セーバーと、韓国、米国、日本の平和を願う思いが刺繍される。BR15536 / ¥121,000_

【DATA】
Buzz Rickson’s (Toyo Enterprise)
Tel.03-3632-2321
https://www.buzzricksons.jp

(出典/「CLUTCH Magazine 2024年11月号 Vol.97」)

 

 

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