時代を超えて語り継ぐべきプロダクツ。Vol. 26「ReSew」の銘品を蘇らせる「匠の技」。

  • 2022.06.18

移ろいゆく時代の中で、凛とした姿勢で時の波に抗いながら、自らの存在理由を証明し続けるプロダクツがある。後世に語り継ぐべきそれらプロダクツを、我々は敬意を込めて『THE LISTED PRODUCTS』と呼ぶ。今回は少し視点を変えて、そんなLISTED PRODUCTSを支えるリペアショップを紹介する。ReSew。洋服の修理、リサイズ、カスタムを行う日本屈指の工房だ。彼らの手に掛かれば、古びたクロージングも、再び命を吹き込まれ、装いも新たに蘇る。「新品を作るよりも難しい」と言われるリペア技術を駆使する職人集団、ReSewの工房を覗いてみた。

「ReSew」修理担当主任・上田剛三郎さん

ウォレットなどを手掛ける革職人として経験を積み、その後、洋服の直しの世界へ転身した。その高い技術と豊富な知識は、他の追随を許さない。

傷んだプロダクツに新たな命を吹き込む「直しのプロフェッショナル」。

諸行無常。

万物は常に流転し、不変なものなどこの世には存在しない。当然、ファッションにもこの言葉は当てはまる。銘品といえども経年で劣化し、着用する毎に傷んでいく。着用者の好みも姿形も変化し、ファッションを取り巻く流行も移ろいゆく。昔はあんなに気に入って愛用していたのに、そこかしこが破れ、ほつれ、いつしか流行が去り、体形が変わり、気が付けば箪笥の肥やしへと〝格下げ〞される――。これでは、あまりに悲しいではないか。

リペアやリサイズに次いでオーダーが多いのがスタッズカスタム。クラシカルな爪式などを含めて約20種類のスタッズを常備する

ReSewは、洋服の修理・リサイズ・カスタムを行う洋服専門の修理工房だ。その守備範囲は広く、レザーアイテムからデニム、ハイブランドのスーツまで扱い、その高い技術力と仕上げの美しさで、全国から依頼が殺到する日本屈指の工房なのだ。レザーアイテムを多く手掛けるAVIREXやSchottの系列店でもあるため、なかでもレザーの依頼が圧倒的に多いという。

「リペアやリサイズを行う際、最も気を遣うのが『仕上がり』ですね。出来るだけ美しく仕上げたい。レザージャケットのリサイズの場合、元々の針穴を目立たなくすることが、非常に難しいんです」

リペアやリサイズの際に、ボディカラーと糸色を合わせるため、ReSewには常時100種類以上の縫製糸がストックされている

そう話すのは、ReSewの修理担当主任である上田剛三郎氏。革職人から服の直しの世界へと入っただけあって、レザーリペアやリサイズの技術に関しては、まさに業界屈指だ。

「リサイズは、服を新しく作るよりも制約が多いんです。この制約が、難しくもあり楽しくもあります。本当は、すべてのパーツをばらして行えば楽なんですが、極力ほどかずに作業を行った方が、美しく仕上がるんです」

スナップボタンやリベット、ジッパーやバックルなど、あらゆるリペアに対応するために多くのパーツも素材ごとに準備

ReSewでは、まず依頼者との相談をした上で、作業が開始される。来店はもちろん、インターネットや電話でも可能。こうした丁寧な応対もReSewの人気の所以だ。対面でじっくり話すからこそ、完成イメージを共有でき、お客の顔が見えているからこそ、いっそうの想いを込めて作業に向かえると上田氏は話す。

「特に、他店で断られたものを持ち込む方も多いです。そんな時は燃えますね(笑)。どうにかして希望を叶えてあげたい。新しく生まれ変わったレザージャケットを前に、喜んでくれるお客様の顔が見たいんです」

ReSew では、Schott純正のパーツも豊富に常備している。もちろん星型スタッズも用意しているが、こちらはワンスター以外に打つことは出来ない

昨今流行りの「アップサイクル」という言葉。創造的再利用とも呼ばれ、不要となった製品に、新しい価値を付け、よりよく生まれ変わらせるプロセスのことだが、ReSewの行う作業は、まさにクロージングのアップサイクルに他ならない。昔、愛したレザージャケットが、ReSewの手により、再び息を吹き返す。

現在、ReSewにリペアやリサイズを依頼すると、程度にもよるが、完成までに約半年かかるという。もし箪笥の中に着なくなった革ジャンを見つけたら、すぐにReSewに連絡するといい。半年後には、生まれ変わった〝相棒〞に出会えるはずだ。

依頼によりルイス・レザーズのリサイズ作業を行う。今回は身幅を詰めるため、必要な箇所をばらして作業を進める。縫製糸を解いていく時も革を傷つけないように丁寧に解いていく
次は裁断。どの部分をどれだけ詰めればベストな仕上がりになるか、計算しながら慎重に行っていく。革裁ち包丁で一気にしっかりと裁断していく。決して失敗できない作業だ
裁断の後は縫製の工程へと移る。使用するのは革用の上下送りミシン。ジャケットを裏返しにした状態で縫製していく。ヴィンテージなどで革の状態が悪く裏返せない場合は、ミシンが使えないため、手作業で縫っていくという
必要な箇所のみを解いて作業を行っていく。すべてパーツをばらした方が作業は楽だが、解く箇所が少ないほど、仕上がりが綺麗になるのだ。そのため、覗き込みながらミシンで縫っていく

日本屈指の洋服修理工房、ReSew。

洋服専門の修理工房としてその名を馳せるReSewだが、特に人気なのがレザーアイテムのお直し。東京・渋谷のSchott Grand Store TOKYO内にあるReSew渋谷Schott店の工房には、リペアを待つレザージャケットがずらりと並んでいる。あらゆるリペアやリサイズ、カスタムに対応するため、数えきれないほどの種類のリペアパーツが用意されている。ReSewの人気の所以は、卓越した技術と、丁寧な手仕事による仕上げの美しさ。他店で断られたレザーアイテムも、諦めずに是非一度ReSewに相談してみてほしい。

1.リサイズ

ReSewの依頼の中でも多いのがレザージャケットのリサイズ。依頼者の要望に応え、ぴったりのサイズに作り変えてくれる。ここではヴィンテージのBROOKSのシングルライダースの身幅を詰め、現代風にリサイズ。

肩のラインを作り直すため、すべてばらすことに。すべてのパーツに戻した後、カットする部分にラインを引いてカットしていく。「パーツをカットして詰めた後に縫い合わせるんですが、その部分が上手く縫い合わさるよう、長さを合わせるのが難しい」と上田氏。

こちらがリサイズ前の1970 年代のBROOKSシングルライダース。腕周りや身幅の広いヴィンテージ特有のシルエットを持つ。今回は背中のプリーツも無くし、すっきりとさせる予定。破れたライニングも交換したい。

リサイズ後のBROOKS。肩を詰め、身幅と腕周りも細くしたので、シャープに生まれ変わった。アクションプリーツも取ったため、背中もすっきりした印象に。新しく張り替えたライニングにタグを移植した。

2.スタッズカスタム

“スタッズカスタム” も、ReSewの得意とするところ。ReSewでは常時20種類以上のスタッズを用意しているので、きっとお気に入りのスタッズが見つかるはずだ。手軽にレザーアイテムの雰囲気を変えることができる。

まずどこにどんなスタッズを打つのか相談した後作業を進めていく。まずストラップスタッズ用の穴を開け、そこにスタッズを差していく。ReSewではヴィンテージによく見られる爪で留めるタイプや、カシメタイプもラインナップ。今回は爪式を使用。しっかり爪を差し込み、スタッズを取り付ける。

ベースにするのはRED WINGの♯2972。「カッパー ラフ&タフ」というカラーで、オイルを多く含んでいるのが特徴。エンジニアのストラップにスタッズカスタムを施し、雰囲気を変えることに。

センターにジュエルスタッズを置き、その周囲を大きさの違うラウンドヘッドで飾るという、ヴィンテージブーツによく見られる王道のスタッズレイアウトでカスタムした♯2972。寸分違わぬ正確な配置で、ReSewならではの高い技術が見て取れる。

レザージャケット・カスタムサンプル

ここでは、ReSewの手掛けたレザージャケット・カスタムの一部を紹介する。ReSewの高い技術力と、革ジャンを知り尽くした圧倒的なセンスの良さを体感せよ。

1.AVIREX G-1

イントレチャートとステッチワークでG-1を飾った、大人のレザーカスタム。イントレチャートとは、革に切り込みを入れ、その間にレザーのレースを編み込んでいく技法のこと。ポケットフラップやジッパー脇に施された手作業のステッチワークも効いている。

2.AVIREX G-1 TOPGUN

元々パッチカスタムが施された米海軍のフライトジャケットG-1の背中を、なんとイントレチャートによるエアフォースマークで飾るという大胆かつ遊び心溢れた一着。左肩と左ポケットフラップはジュエルスタッズで飾り、背面のスコードロンパッチにはパンキッシュなピラミッドスタッズでアクセントを加えている。

3.Schott ONESTAR 217US

アメリカンライダースジャケットの代名詞、Schottワンスターをベースに、スタッズカスタムでデコレイト。ステアハイドと比べて落ち着いた感じのするシープスキン製の217USだが、各所にスタッズを施すだけでゴージャスに生まれ変わる好例。襟元にはジュエルスタッズを中心にゴールドとシルバーを織り交ぜ、美しいレイアウトを実現させた。ベルトループの楕円スタッズもアクセントに。

【DATA】
ReSew 渋谷Schott 店
Tel.03-6427-0848
http://www.resew.tokyo

(出典/「CLUTCH2022年6月号 Vol.85」)

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