極限の地を目指すエクスプローラーたちの命綱「カラコラムパーカ」誕生
第二次世界大戦で数多くのフライトダウンスーツやスリーピングバッグを提供したブランドの規模は格段に成長し、次のフェーズを迎えていた。1952年秋、あるアメリカの登山家チームは世界第2位の高峰であるK2の初登頂を計画し、その際の寒冷地用高所装備品をエディ・バウアーに依頼したのだ。
当時、最高の登山用品は主にフランス製だったが、それをアメリカに輸入するには高価でわずかな予算しかなかった登山家たちには手の届かないものだった。エディーはその依頼を快く受け入れ、登山家たちとアメリカ製による世界最高のエクスペディションアウトフィッターの開発に挑戦。完成したプロトタイプはK2を擁するカラコラム山脈から名付けられた。
翌1953年に第三カラコラム遠征隊はそのカラコラムパーカを身に纏い、K2の頂を目指した。残念ながら、登頂は成功しなかったが、極限状態のなかでも隊員たちを無事に帰還させた功績は世界に高く評価され、同年より自社カタログでも販売をはじめると瞬く間に人気を集めた。
1963年にはアメリカ人によるエベレスト初登頂に貢献するなど、30年にわたって、あらゆる大陸の壮大な初登頂を含む、世界中のアメリカ人登山家および科学探検家のための最高のアウトフィッターとして、地位を確立することになる。
現行カラコラムパーカをチェック!
前立てに並んだ無数のボタンや格子状のダウンパック、一体型フードが、まさに「最高峰」の風格を漂わせる、エクスペディションダウンパーカの元祖にして究極。いまだブランド随一の人気を誇るハイスペックモデルが細部に至るまでヴィンテージを再現して蘇った。4万4000円(水甚TEL058-279-3045)
【ディテール①】ボタン
1970年代前半にスナップボタンへと変更される以前の初期型ボタンフライ仕様を踏襲している。
【ディテール②】ドローコード
ウエスト部分にはドローコードを装備したヘビーデューティなデザイン。
【ディテール③】フード
一体化したフードが特徴。
【ディテール④】ラベル
カラコラム山脈をモチーフとしたネームは60年代に採用されたデザインを再現したもの。
ヴィンテージも気になる! 用途に合わせたあらゆる仕様変更が実施された形跡
上:1950s
カラコラム専用ネームを使用する以前の50s製。フードがコンマージッパーで脱着可能なレア仕様。当時のカスタムとも考えられるが、オーダーによる仕様だろう。参考商品(コズミックジャンパーTEL042-726-0610)
下:1960s
カラコラム専用ネームが付くので50s後期から60s製と推測。両サイドにカーゴポケットが付きテーパードが強いシルエットが特徴。冷気や雪の侵入を防ぐ裾リブもタイト。3万2780円(グレースTEL03-6416-3457)
1960s
着丈がダウンパック一段分長くなったスペシャルレア。さらに通常は存在しないチンストラップも付いている。共生地で作られるので特別なオーダーと思われる。13万2000円(ミスタークリーンTEL090-2206-1755)
1970s
三角EBロゴのスナップボタンとカラコラムネームが同居する希少種。おそらくネームが黒タグに変わる過渡期のもの。カラコラムネームが付くスナップボタン仕様のモデルは1970年代前半までと推察する(参考商品)
右:1970s
顔を覆うフードやハンドウォーマーポケットなど極寒地仕様となるカラコラムエクスペディションパーカ。このボリューム感はブランド内でも随一。6万円(ビーチ電話番号非公開)
中:1970s
スナップボタン留め仕様の新たなカラコラムがヘビーデューティカラコラムパーカ。ナイロン×コットンのシェル地。1万7000円(コズミックジャンパーTEL042-726-0610)
左:1970s
右と同じスタイルだがリップストップナイロン地をシェルに使用するウルトラライトカラコラムパーカ。70s中期頃のもの。3万2780円(アイアンドアイ ストアTEL03-6424-4994)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2024年2月・3月合併号 Vol.202」)
撮影協力/ウエアハウス
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