選曲/矢島和義(ココナッツディスク吉祥寺店)
聞き手/不気味くん(セカンド編集部)
サーフィンからアヴァンギャルドまでをモットーに、昨年20周年を迎えた吉祥寺店を切り盛りする矢島さんと当時週2くらいでノホホンとバイトしていた不気味くん。写真は2014年4月。再開発の途中だったJR吉祥寺駅にて。
ネオアコ、ギターポップは初夏の音楽。
不気味くん(以下、不)/矢島さん、ご無沙汰してます! 念願のココナッツディスクとの音楽カルチャー連載企画をついに実現させることができました!
矢島さん(以下、矢)/ありがとうございます!
不/というのも、いきなり私事で恐縮なんですが、実はココナッツディスク吉祥寺店でバイトをしていたので……。
矢/そうだよね。どのくらいいたんだっけ?
不/細々ですが7年くらいやってましたね。
矢/そんな長かったんだ。
不/学生時代からはじめて、大学卒業しても結構やってましたから。
矢/最近もレコード買ってるの?
不/それが編集部に移ってからはゆっくり音楽を聴いたり掘ったりすることも少なくなっちゃって。新しいアーティストも全然追えてないです。でもこの連載が始まったら、またレコード熱が再燃するかも。
矢/上田くん(不気味くんの本名)以外も、これがきっかけでレコードに興味を持ってくれるひとが増えたら嬉しいよね。なるべくアナログで選曲しようと思ってるし。
不/そうですね。最近の動向はインスタやブログで見てますが、コロナ騒動以降、お店の営業って大丈夫ですか?
矢/いまのところお店は閉めてて、オンラインを充実させてるって感じかな。
不/そういう状況ですよね。そんな最中でスタートするこの連載なんですが一応趣旨説明しておくと、毎回、ひとつのテーマで矢島さんにプレイリストを作ってもらい、曲に纏わる話やそれに紐づくいろんなカルチャーにも触れられたらと思っています。
矢/なるほど。テーマも基本はボクが決める感じだよね?一応、今回は「初夏へと走り出そう」っていうテーマで選曲してみました。
不/かせきさいだぁの「冬へと走り出そう」オマージュ(※1)ですね。
矢/そうそう。音楽は季節によって聞こえ方が全然変わってくるし、まず大前提におうち時間で聞く音楽っていうのがあると思うから。それを踏まえた上で。
不/というのは?
矢/曲のフレーズで「冬へと走り出そう、でもいまはまだコタツの中さ」ってフレーズがあるじゃない? いまは
STAY HOMEだけど、初夏の気持ちいい風を音楽で感じられたらと思って。
不/矢島さんが考える初夏のイメージって音楽だとどういうものですか?
矢/キラキラした感じかな。とくにギターの。だから、今回は’80年代から2000年代頃までの「ネオ・アコースティック」とか「ギターポップ」って呼ばれてたジャンルの曲が多くなった。
※1 かせきさいだぁの「冬へと走り出そう」・・・文化系ラップの初期大名曲。この題名もアズテックカメラ・オマージュ。
僕らにとってあまりにも大きな曽我部恵一という存在。
不/まず一曲目に選んでもらったのがサニーデイ・サービスの「春の風」。これ新曲(※取材時)ですね。
矢/そう。「いいね!」ってアルバムの先行配信されたMVがめちゃくちゃよくって。
不/ボクも見ました。最高にエモかった!
矢/久々にまたキラキラした曽我部さんが帰ってきた! って感じだよね。とにかく甘酸っぱい。MVの中では青年が突然走り出すシーンがあるんだけど。これ見た瞬間、プレイリストの一曲目はコレしかないなと思った。
不/サニーデイから始まるあたり、とても矢島さんらしくて嬉しかったです。
矢/上田くんの企画だから、当時のココナッツの雰囲気に引っ張られたのかも。
不/しかもそれが新曲ってのがいい。中古のレコ屋って、やけに懐古主義な印象を持ってる人は少なくないと思うんですよ。
矢/そうかもね。「ロックはビートルズとストーンズしか聞きません」みたいな。もちろんボクも旧い音楽は大好きだけど、いまのインディーアーティストでも同じ感覚で聞ける音楽はいっぱいある。そういう無駄な垣根を壊してくれたのは、いまでも現役バリバリな曽我部さんとかに影響を受けてるのかもしれない。
不/曽我部さんのいいところって、まさにそこですよね? いつまでも少年のココロを忘れないというか、渋くなりすぎない。
矢/ホント、その通り。
◆
不/最近、曽我部さんって下北沢でレコ屋を始めたじゃないですか。ココナッツにも来てたりはしないんですか?
矢/実はこの前来てくれたんだよね。多分、初めて。
不/そうなんですね。
矢/残念ながらボクはいなかったんだけど。同じタイミングでスカートの澤部くん(※2)もお店にいたらしくて(笑)。
不/すごい偶然!
矢/これは澤部くんから聞いた後日談なんだけど、「お店の隅でしゃがみながら特価コーナーまでしっかり見てた」って。感動しちゃうよね。
不/なかなかそこまでディグる人って少ないですよね。やっぱり少年だなぁ。
矢/しかも、その時買ってたのがウェザープロフェッツっていう、80年代のネオアコバンドで。また、このあたりを聴き直してるのかなと思ったらやけに嬉しかった。
不/もともと曽我部さんも好きなジャンルですもんね。
矢/面白いのが、そのレコードを売ったのが鈴木くん(※3)で。鈴木くんが売ったレコードって結構バンドマンが買っていくんだよね。
不/面白い(笑)。
矢/澤部くんが前に買ってくれたトニー・コジネクの『バッド・ガールズ・ソングス』も前所有者は鈴木くんだし、どついたるねんのワトソン(※4)が買っていったパンクの12インチと矢沢永吉が出てた映画『お受験』のビデオも、元々は鈴木くんの(笑)。
不/めちゃくちゃヒット率高いですね!
矢/そんな事があって、今回も誰が買ってくかなと少し期待してたんだけど、まさか曽我部さんが買ってくれるとは。
不/いまのインディーシーンを影で操ってるのは鈴木さん説。マニアック過ぎます(笑)。
矢/それは偶然だけど、曽我部さんがいままたギターポップとかネオアコを掘ってるのがめちゃくちゃ嬉しくて、ホント新譜が楽しみだわ。
※2 スカートの澤部くん・・・チャーミングなルックスに反する男前ボーカル。稀代のポップマエストロ。
※3 鈴木くん・・・ココナッツディスクの数少ない初期スタッフ。写真はオープン準備の店内。
※4 どついたるねんのワトソン・・・進化し続けるパンクバンド。過去にビームスでモデルをしたことも。
アメリカ人が奏でるギターポップ。
不/一曲目から話が長くなってしまいましたが(笑)。続いての曲をにいきましょうか。
矢/次はGirlsの「Lust For Life」。
不/きたっ! 大名曲!!
矢/ これが出る少し前の2000年代半ばって、ギターポップが世間的にかなり下火だったんだけど、ガールズが出てきた2009年頃からまたこの辺の感じが最新の音楽として取り上げられたんだよね。しかも、アメリカのバンドってのがポイントで。それまでは完全に英国が主流。まずアメリカからは生まれてこない音楽性とされてたから。
不/なるほど。
矢/たぶんガールズは、80、90年代のギターポップを再発見的に聴いてて、自分たちでやってみようと思ったんじゃないかな。
不/2010年代はアメリカのインディーシーンが輝いてた時代ですね。
矢/それまでも、新しいギターポップバンドは出続けてたんだけど、いつからか“色気”みたいなものがなくなった気がして。80年代のバンドにはそういう魅力ってすごいあったんだけど。でも、ガールズの登場で、ギターポップがまた色気のあるカッコいい音楽っていう認識を世間に広めた重要なバンドだよね。MVもよかったし。
不/すごい短い曲だけど、イントロのギターの高揚感とかヘロヘロなボーカルにネオアコ、ギターポップの魅力がすべて詰まってますよね。でもこれが2009年。もう10年以上経つのかぁ……。
◆
矢/その次が80年代中期〜後期の英国バンドRazorcutsの「I Heard You the First Time」。これには理由があって。1曲目で紹介したサニーデイのアルバムが配信された直後くらいに、ハイハワの原田くん(※5)に道でばったり会ってご飯食べに行ったのね。すでに原田くんは新譜を聞いてて、「レザーカッツみたいだった!」って言ってたんだよね。
不/なかなかピンポイントでレザーカッツには例えないですよね(笑)。
矢/その時は、まさかそんなアルバムになると思ってもいなかったから驚いた。あと(昨年)6月頃にアメリカでレザーカッツのアルバムが再発がされるんだけど、やっぱりさっきも話した通り、80年代の英国ギターポップの再発見みたいな動きがまだ続いてるんだと思う。
不/この時代ってプライマル・スクリームとかパステルズが花形ですけど、レザーカッツって個人的には玄人好みのバンドってイメージです。
矢/どうだろうね、ボクもリアルタイムで通ってないからなんとも言えないけど。彼らが所属していたクリエイション・レコーズ(※6)の存在が超重要だったのは間違いない。この12インチシングルはクリエイションじゃないけど、アルバム2枚はクリエイションだし。プライマルやウェザープロフェッツも当時クリエイションに所属してたから。
※5 ハイハワの原田くん・・・ハイハワユーの中心人物。京都のジョナサン・リッチマン。
※6 クリエイション・レコーズ・・・’83 年設立。ビッグネームを多数輩出した伝説の英国インディーレーベル。
◆
矢/ちょうど、クリエイション・レコーズつながりで4曲目に選んだのがFeltの「Ballad of the Band」。
不/うわー、もうこれはジャケから好きですね。
矢/まさにこれも、イントロからキラッキラ! この曲を聞いたら木と木の間から太陽の光がキラキラ見える映像がはっきりと浮かぶんだよね。これってギターポップに描くイメージそのものなんだけど。
不/そのイメージってボクもすごくわかるんですけど、きっかけが全く分からない。過去にそういうMVとか映画とかがあったのか。すごい謎。
矢/確かに。でもシャムキャッツの「おしえない!」(※7)って曲のMVが自分の思い描くネオアコとかギターポップのキラキラしたイメージを、まさに映像化していて。それを夏目くん本人に伝えたら、「だろ〜!」って(笑)。
不/なんだそれ。でも夏目くんも確実にこの辺の音に影響受けてるはずですからね。
矢/そのMVの曲も良いんだけど、シャムキャッツは「SUNDAY」の方がギタポ度が高くて、今回のテーマには合ってるかなと。
不/最近の日本のインディーシーンでも、ギタポバンドは多いんですか?
矢/結構いる。でもサウンドは良いけど歌詞がイマイチなバンドが多いかな。でもシャムキャッツはちゃんと歌詞もいい! 夏目くんにはインストアライブもしてもらってるし、お世話になってます!
不/夏目くんとの出会いってなんですか?
矢/それこそ、スカートの澤部くんとかミツメの川辺くん(※8)とのつながりで仲良くなったけど、最初は昆虫キッズ(※9)繋がりかな。」
不/昆虫キッズ、懐かしい!
矢/セロと昆虫キッズとシャムキャッツはその世代の御三家って感じ。
不/そうか、セロもそこに入ってくるんですね。
矢/で、ちょうどこの曲が入ってるアルバムが出るちょっと前くらいに、夏目くんがギタポとかネオアコとか、この辺のインディー音楽をすごい聞きたいって時期があったみたいで。それでお店に通ってくれるようにもなったし仲良くなったんだよね。
不/矢島さんと夏目くんがそんなに仲良かったのは意外だったんですが、そういうきっかけがあったんですね。
矢/そう、コロナ騒動の前、最後に飲みに行ったのも夏目くんだったからね(笑)。
不/ボクはシャムキャッツの曲で「GIRL AT THE BUS STOP」が好きなんですけど、この辺でシャムキャッツの音楽性が開花した感じがありますよね。
矢/あと、ジャケも最高。完全にエイドリアン・トミーネ(※10)じゃん!って。
不/確かに。これって誰が描いてるんですか?
矢/サヌキナオヤさん(※11)ていう漫画家さんなんだけど、サヌキさんを紹介したのが澤部くんなんだって。
不/へぇ〜、繋がるな〜(笑)。
※7 シャムキャッツの「おしえない!」・・・MVの撮影はVo.夏目くん。プライベート映像のような甘酸っぱさ満点。
※8 ミツメの川辺くん・・・超初期からココナッツとも交流のあるインディーロック重要バンドのVo.。
※9 昆虫キッズ・・・スカート澤部くんも心酔した’00sロックバンド。2015年に惜しくも解散。
※10 エイドリアン・トミーネ・・・ソフティーズのジャケを担当するなど’90sUS オルタナ勢に人気の漫画家。
※11 サヌキナオヤ・・・ホムカミ福富くんとの共作「CONFUSED!」で知られるイラスト漫画家。
ギターポップにも色々ある。
矢/Altered Imagesの「Happy Birtheday」は、なんとなく中盤の繋ぎとして選んだから、とくに理由はない(笑)。
不/ボクはこれ知らなかったです。
矢/あ、ホントに? 80年代のニューウェーブなんだけど、ガールズボーカルのちょっとアイドルっぽいノリもあったバンドで。この曲はギターポップとして聞ける曲だったから、90年代のインディー好きは結構知ってると思う。
不/これはUK盤のコーティングジャケの7インチですね。
矢/当時は日本盤も出てたよ。それこそ、レザーカッツとかプライマルって当時は売ってる店も少なかったんだけど、これ見つけたらギタポ好きはとりあえず買っとこみたいな。
矢/お次がThe Smithsの「William, It Was Really Nothing」。やっぱりこのバンドは入れとかないとって感じだよね。
不/このアルバムって一応、編集盤ですよね。
矢/だね。でも、ほとんどセカンド・アルバムみたいな位置づけだよね。所謂、ギターポップの超名盤のひとつ。
不/ボクもレコードを買い始めた当初に買った記憶があります。入ってる曲全部好き。
矢/特にこの曲はスミスのなかでもギタポ度が高いかな。なんといってもジョニー・マーの美しいアルペジオ。あと、話は戻るけど、1曲目に選んだ「春の風」の歌いだしに「今夜でっかい車にぶつかって死んじゃおうかな」っていうフレーズがあって、スミスにも「いま二人でドライブしてて、大きなバスにぶつかって死にたい」みたいな歌詞があったり。スミスに「心に茨を持つ少年」って曲があるんだけど、サニーデイの新譜には「心に雲を持つ少年」って曲があったり。
不/とにかくスミス・オマージュがたくさんあると。
そして夜の疾走感へと。
矢/ 続いて8曲目がThe Teenagersの「starlett Johansson」。スカーレット・ヨハンソンのもじりね。
不/ジャケもギリギリですね。このへんて今いくらぐらいなんですか?
矢/1000円以下で買えるよ。2000年代末のちょっとシンセが入った、ダンスロック系の7インチはいま買い時だと思う。当時クラブとかでかかってた、SNOOZER系とかニューエキセントリックとか言われてたジャンル。
不/Twee grrrls club(※12)がDJやってた時代ですね。でも、矢島さんってこの辺の音も聞いてたんですね。
矢/掘って聴いてた訳じゃないけど、一部のバンドは好きだったね。この系統だとグッドシューズも好きだった。
※12 Twee grrrls club・・・’00s 後半に活動していたインディー大好き女子6人のDJユニット。
◆
矢/ずーっとキラキラした曲ばっかりも芸がないから、ちょっと夕方〜夜にかけて聞きたいような感じで、9曲目はNEW ORDERの『Age of Consent』を選んでみました。
不/レコードだとB面みたいな、折り返し地点ですね。
矢/ニュー・オーダーの初期ってまだジョイ・ディビジョンを引きずってる部分も感じられて、それがちょうどいいんだよね。レザーカッツとかフェルトみたいな昼の疾走感じゃなくて、夜の疾走感。ギタポ好きは一番聞きやすいと思う。なにより曲間のカッティングギターが最高。
不/これはレコードだといくらぐらいなんですか?
矢/普通の日本版だと2000円くらいかな。オリジナルはもうちょっとすると思うけど。あと帯付きはすごい人気で値段が上がってる。
不/この時代の帯付きって、邦題とかキャッチコピーが面白くて欲しくなりますよね。
矢/ちなみにこの邦題は「調和の時代」。まさに、そういうことだったんだろうね。
◆
矢/で、この流れで次にかけるとしたらThe Clashの「Lost in the Supermarket」を選びたくなる。
不/普通ギターポップの流れで選ぶとクラッシュって出てこないけど、こうやって聞くとすごい自然ですね。
矢/ミック・ジョーンズのちょっとへなちょこなボーカルが良いんだよね。夕方のワクワク感もあるし。
不/ちなみにクラッシュっていつから聞き始めました?
矢/小学生の高学年くらいかな。当時、シャムロックの「ブリティッシュグリーンガレージ」(※13)っていうラオ番組がすごい好きで。
不/昔のお店のブログでよくそのラジオ番組での話が出てましたよね。矢島少年にとってめちゃくちゃ影響力があったんだなと思ってました。
矢/イギリスの音楽しかかけない硬派な番組だったんだけど、パンク特集の回があってその時がクラッシュとの出会いだった。他にもピストルズ、ダムド、ジャムと4曲連続で流れたんだけど、小学生には刺激が強すぎたよね(笑)。
不/次に選んでもらったThe Libertinesの「Don’tLook Back Into The Sun」も時代は全然違えどクラッシュの弟分的な存在ですよね。なんてたってミック・ジョーンズ・プロデュース。
矢/ピートのヘロヘロしたボーカルもミック直系な感じがするし。
不/とにかくドンルクは青春の一曲。
矢/ペラペラなギターの音がいいよね。それこそ、上田くんがバイトしてた15年くらい前と言ったらリバティーンズか銀杏BOYZばっかり聴いてた。いま思えばなんか混沌としてたよね、レコードも全然売れなかったし(笑)。
不/確かにボクが働いてたときって、不遇の時代というか(笑)。いまみたいに大学生とかがレコードをスタイリッシュに買う文化とか全く無かったですもんね。ロック親父か一部のスキモノだけの世界。まさか自分がやめた途端にレコードブームが来るとは思ってもいませんでしたし。
矢/少なくともセカンドで連載が始まるとは誰も想像できなかったからね。
不/そのレコード不遇の時代って、ココナッツもギタポやネオアコより、モッズとかガレージのほうがお店の主力だった印象です。だから次にネオモッズの王道、ザ・ジャムの「thick as thieves」が入ってくるのは個人的にモノ凄く納得できる。
矢/ジャムはどの曲も好きなんだけど、これは疾走感プラス切なさがあっていいんだよ。
不/久しぶりに聞きましたが、やっぱりいいですね!
矢/それこそ、上田くんがいた2000年代半ばから後半って、日に日にギターポップがダサいってイメージが強くなってて、好きなんだけどあまり公にギターポップが好きって言えない風潮があった(笑)。結構馬鹿にされてたじゃん、『デトロイト・メタル・シティ』とかでさ、ちょっと渋谷系がネタにされてたというか。
不/主人公がおかっぱ頭でボーダーのTシャツ着て、ヘナヘナしてる感じですよね。
矢/自分もそうだったんだけど、あの頃はひた隠しにしてたよね(笑)。
上/渋谷系をリアルタイムで通ってるから、余計にそう感じたんですかね……。
※13 シャムロックの「BRITISHGREEN GARAGE」・・・稀代のネオモッズ、ポップンロールバンドがやっていたラジオ番組。
オザケンの本当の良さに気づけなかった、あの頃。
矢/それで、次が小沢健二の「流星ビバップ」になるんだけど(笑)。一応、自分的にはこの曲でプレイリストのラストって感じ。昼のキラキラした感じから夕方になって、気づいたら夜のはじまりみたいな時間帯に聴いて欲しい。
不/やっぱりオザケンって特別な存在ですか?
矢/特別と聞かれるといろんな解釈があると思うけど、ギターポップとかネオアコを深く知ったきっかけって、結局のところフリッパーズギターがいたからなんだよね、僕ら世代は。それこそ雑誌とかラジオで当時の最先端にお洒落な音楽をバンバン紹介してて。
不/「流星ビバップ」が出た当時って、矢島さんは大学生?
矢/大学一年生くらいかな。
不/リアルタイムでこの空気感を感じれたのは羨ましい限りです。
矢/でも、大学生にはこの曲の本当の魅力って計り知れなかったと思うよ。あの頃は、まずフリッパーズ・ギターのお洒落さがあってオザケンも好きになれたけど。小沢くん本人は、そんなことやりたいんじゃないっていうか、もっと神聖な音楽をやりたかったんだろうなと今になって気づく。「愛し愛されて生きるのさ」とか「喜びを他の誰かと分かち合う、それだけがこの世の中を熱くする」って歌詞が他の曲にあるけど、人生の最も大切なことがあって、それを伝えたいって音楽じゃん。だから、いま聞くとより沁みる。
不/その当時、オザケン自身も20代の半ば。それも今思うとすごいことですよね。
矢/一応、ここで本編終了って感じなんだけど、来る夏本番に向けて走り出すような曲として選んだのがVelvet Crushの「Drive Me Down」。
不/これもさらにギアが一段アガるような疾走曲ですね。
矢/2019年にまさかの来日公演があったんだけど、やっぱりヴェルクラは最高だった。アンコールの一曲目でこの曲をやってくれたんだよね。
不/オリジナルメンバーが揃ったんですよね! 僕も行きたかったなぁ。
矢/今回のプレイリストでは映画でいうとオザケンで一回本編は終わって暗転して、エンドロールでこれが爆音で流れるようなイメージ。
不/それって「春の風」のMVの構成そのまんまじゃないですか(笑)!
矢/やっぱり曽我部さんにはなにからなにまで影響受けっぱなしだよねー。
このプレイリストはSpotifyで全曲聴けます!
01. サニーデイ・サービス/春の風
02. Girls/Lust For Life
03. Razorcuts/I Heard You the First Time
04. Felt/Ballad of the Band
0 5. シャムキャッツ/ S U N DAY
0 6. Altered Images/Happy Bir theday
07. The Smiths/William, It Was Really Nothing
08. The Teenagers/starlet t Johansson
09. NEW ORDER/Age of Consent
10. The Clash/Lost in the Supermarket
11. The Libertines/Don’tLook Back Into The Sun
12. The JAM/thick as thieves
13. 小沢健二/ 流星ビバップ
14. Velvet Crush/Drive Me Down
ぜひ聞いてみてください!
(出典/「2nd(セカンド) Vol.160」)
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