アップルは『断固としてこのアプリを承認していない』
『Hot Tub』というアプリはXで『アップルが認めた最初のポルノアプリ』という投稿を行った。が、アップルは『断固としてこのアプリを承認していない』という声明を発表した。
iPhone turns 18 this year, which means it’s finally old enough for some more ~mature~ apps…
Introducing Hot Tub by @C1d3rDev, the world’s 1st Apple-approved porn app!
Try it now on AltStore PAL — just in time for the season of love ❤️
Source: https://t.co/81ja9rSpCR pic.twitter.com/VW37rb6K5h
— AltStore.io (@altstoreio) February 3, 2025
アップルの公式声明は以下の通り。
「Appleは、この種のハードコアポルノアプリがEUの利用者、特に子どもたちに及ぼす危険性のリスクについて強く懸念しています。このようなアプリは、Appleが10年以上かけて世界最高を目指して築いてきたエコシステムに対する消費者の信用と信頼を損なうものです。当該マーケットプレイスの開発者による虚偽の声明に対して、私たちは断固としてこのアプリを承認しておらず、私たちのApp Storeで提供することも決してありません。実のところ、Appleは欧州委員会によって、ユーザーの安全性の確保に関してAppleと同じコミットメントを果たしていない、AltStoreやEpicのようなマーケットプレイス運営者によるアプリ配信を許可するよう義務付けられているのです」
EUの方針は、大きな収益を上げ続けているシリコンバレーのエコシステムに、少しでもダメージを与えようということなのだろうが、それによって損なわれているのは、世界のユーザーの安全性だということは実に皮肉なことだ。
EUの決定が生んだ危険なアプリ環境
EUにおいては、DMAによってサイドローディングが強制されたために、従来アップルが自社のApp Storeで行ってきた、ポルノなど有害なコンテンツに関する規制や、タバコや電子タバコ、違法薬物、過度のアルコール摂取を助長するアプリ、海賊版のコンテンツが含まれる(あるいはほかのデベロッパからアイデアや知的財産を盗用する)アプリが代替アプリマーケットプレイスに出回ることを阻止できなくなっている。
また、同時にこれは、これまで同社のApp Storeでコードレベルで審査されてきた詐欺や悪徳商法、不正行為などを含むアプリや、不法、不快、または有害なコンテンツにユーザーをさらすアプリを制限できないことを意味する。悪意のあるハッカーや詐欺グループがユーザーのデータを盗み取るリスクも高まるし、フィッシング詐欺やスパイウェアの拡大につながる恐れもある。
『Hot Tub』には、未成年を題材にしたチャンネルや、Porn Hubから流用されたコンテンツも含まれている。Porn Hubは、性的人身売買を含む違法な金銭取引に関与したことを認め、米国司法省による3年間の観察対象となっている。そんなアプリが、子どもたちや高齢者の方を含め、誰もが手にするiPhoneにインストール可能になってしまうということだ。
AltStore PALは『あの』Epic Gamesから資金提供を受けている
実はこの一件には、ゲーム『フォートナイト』においてシステムを迂回して決済する方法を導入して訴訟になり、アメリカ司法当局から360万ドル(約5億5000万円)の支払いを命じられたEpic Gamesとの因縁も絡んでいる。Epic Gamesは、児童のプライバシー侵害とゲーム内の課金をめぐる問題で、米連邦取引委員会(FTC)から5.2億ドル(約790億円)の支払いを命じられている企業でもある。
『Hot Tub』を公開したAltStore PALはEpic Gamesの資金提供を受けている。Epic Gamesの支援を受けた代替アプリストアがポルノアプリを配信するという事態は、Appleが懸念するセキュリティリスクを象徴する出来事となっている。
多くのアプリから、アップルが30%の手数料を取っている現実の是非については議論の余地はあるかもしれないが、すべてのアプリにコードレベルに至るまで厳格な審査を行って、安全な環境を実現しているアップルの功績は評価されるべきだろう。この点が覆されると、Apple Storeがスパムだらけのメールボックスのように、常にポルノや違法薬物、そして詐欺などに警戒しなければならない場所になってしまう。
日本の著名なアプリ開発者も、アップルのアプリの審査はむしろ望ましいもので、サイドローディングを許可するのは危険と述べている。
日本のApp Storeは、安心な場所であって欲しい
以前にも書いたように、日本でも内閣官房デジタル市場競争本部事務局が『モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告』の中で、この案件に触れており、その中で「サードパーティのアプリを、純正ストア以外からでもインストールできるようにするべきではないか?」と述べている部分がある。
おそらく、『iPhoneに自社アプリを強制的にインストールしたい誰か』がロビー活動を行ってこんなレポートを上げさせているのではないかと思うが、iPhoneやGoogleのアプリストアを危険な場所にしないために、ぜひその意見は取り下げていただきたい。
それとも、内閣官房デジタル市場競争本部事務局は、ポルノアプリをインストールしたいのだろうか?
(村上タクタ)
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