※本機は、アメリカで販売されている商品を個人で入手したもの。日本では販売されていないし、入手してもアップル日本法人からサポートは一切受けられない。機材に関する情報提供に関しても同様。
※本機は技適未取得機器を用いた特例制度の届け出無線局として申請済み。
今のところ入手は容易ではない
6月に初体験した時に『絶対に手に入れる』と決心したVision Pro。上記のように、購入争奪戦には敗北したが、ようやっと手にすることができた。予約順位が遅くなったので、今になって『アメリカまで買いに行きました!』という記事も出遅れ感甚だしいので、アメリカ在住の友人に受け取ってもらい、別の友人が日本に来る際に持ってきてもらった。
ひとつ学んだのは、今、リチウムバッテリーの入った製品を送ってもらうことの難しさだ。日系の宅配便業者には必ず断られるし、そうでなくても「バッテリーを取り出して梱包しろ」とか、「バッテリーが破棄されても文句を言わないと誓約書を書け」とか、言われるとのこと。Vision Proは専用のバッテリーが要るから、バッテリーを破棄されたら、ただの『75万円の目隠し』だ。
そこで、たまたま日本に帰国する予定があった友人に持って帰ってもらい、それを成田まで受け取りに行ったというわけだ。まったく、持つべきものは友。感謝に堪えない。
そうそう、本体価格(256GBだと3月以降になったので512GBを選択(+200ドル))、トラベルケース(199ドル)、アップルケア(499ドルなので、入るかどうかすごく迷った。修理をしてもらおうにも現時点ではアメリカのApple Storeに行く必要があるからだ)、税金などを含めると、およそ75万円ほどの買い物になった。ThunderVoltの経費でなく、自腹である。ひー。
それにしても、箱はデカイ。そして重い。内容物などに関しては、また詳細に述べるが、精密機器だしこれを安全に運ぼうとしたら、このぐらいの箱になってしまうのは止むを得ないというところか。iPhoneなどで、できるだけ箱を小さくしてCO2排出量を減らそうとしているアップルが、このサイズの箱を使うということは、その必要性があるということなのだろう。
顔の形状、目の状態は千差万別。フィットが体験を大きく左右する
今後、Vision Proを体験したり、購入したりする人のために書いておくと、Vision Proは非常に繊細に個人にマッチングされるデバイスだ。フィッティングが合っていないと、ちゃんと見えなかったり、視線入力が動作しなかったり(これは非常に重要で、視線入力が正しく動作しないというのは、パソコンでマウスのケーブルが断線しているような状態だ)、視野角が狭かったり、頰やおでこ、頭が痛くなったり、デバイスを重く感じて長時間使えなかったりする。
だから、借りたVision Proを使って『なんだ、こんなものか』とは思わないで欲しいし、できれば安定して試用できる環境で、ちゃんとフィッティングして使ってみて欲しい。
まず、購入前にiPhoneのセンサーを用いて顔を計測することで、個別に提供されるのがSight Sealというパーツだ。筆者のは33W(33mmのワイド?)というサイズだが、噂では28種類ほどが存在するらしい。とはいえ、日本人の場合、21W、25W、33Wに収斂するようだ。
このパーツは目とデバイスの距離を決定し、顔へのフィット感を決める。合わないと、遠すぎたり近すぎたり、頰に一部が強く当たったり、鼻や頰のあたりから光が漏れ入って、視線入力に誤動作をさせたりすることになる。
どうも、近づけた方が視野角は広くなるようで、筆者の場合昨年WWDCで体験した時より視野角が狭いように感じるのだが、もしかしたら21Wなどを使うと、本体が近づくので視野角が広くなるのかもしれない。これは今後試してみたいポイント。Apple Storeの店頭で受け取ると、これを試してベストフィットのものを買える。それぐらいこのパーツのフィッティングが重要だということなのだろう。ちなみに別売り(199ドル)で購入することができる。
筆者は裸眼で使えるのだが、目の悪い人は、処方箋に基づいて作られるZEISSのレンズを入れて使う。眼鏡はNG。ソフトコンタクトレンズは利用可能だが、ハードコンタクトは(おそらく黒目の途中に段差ができるので)利用不可とのこと。目の悪い人で、Vision Proを体験してみたい人は、ソフトコンタクトを用意しておく必要がある。
「帰ってきた」と思える体験と、実感の違和感
箱を開けたら、どんなパーツが入っているかなどの詳細は、また別途レポートしようと思っているが、とりあえずファーストインプレッションならぬ、セカンドインプレションを。
約8カ月を経ての2回目の体験は、やはり感動的ではあったが、8カ月前の記事にいくつか修正をいれる必要があるように感じる。
まず、お伝えしておかなきゃならないのは、あらためて『空間コンピューティング』デバイスとしての可能性を感じたことだ。8カ月前の体験では、とにかく驚きが先行したが、それら機能をいろいろ調べて、意味を考え、あらためて体験したことで、このデバイスが『実用的な』デバイスであると実感した。仕事をするのに便利で、新しい価値創造が可能だし、どこでも効率的に仕事をこなすことができる。
ちなみに、実は、現在もこの記事をVision Proを使って、デスクの前、少し上部に浮かべたウインドウを見ながら書いている。ディスプレイを上に配置できると、ワーキングチェアのヘッドレストに頭をもたせかけられるので楽だ(姿勢は、どの姿勢が便利で、長時間疲れないのか試行錯誤する必要があるとは思う)。
たぶん、Vision Pro単体でも書けるようになるとは思うが、現時点では日本語入力が少々手間なので、MacBook ProにHHKB Studioを接続しているのを、まるごとVision Proに表示して書いている。
こうすれば、なんの手間もなく執筆環境をVision Proの中に持ち込むことができる。また、MindNodeのアイデア出しなどは、空間内で作業すると新しいアイデアが湧いてきそうだ。
また、鍋の上にそれぞれキッチンタイマーを浮かべた動画が話題になったが、料理しながらレシピを見るとか、機械を組み立てながらマニュアルを見るとか、そういう利用の仕方も普及していくに違いない。
また、詳細は後日書くが、3D映画や、イマーシブ映像、立体パズルなどのエンターテイメントも非常に楽しい。
フィット感については、解決される問題
多くの人が書いている装着感などに関しては、あまり論じても意味がないかなと思っている。たしかに、興奮していて疲れなどまったく感じなかった8カ月前に比べると、重さも感じるし、疲れも感じる。
しかし、ドゥカティ(筆者が最初に携わったメディアはバイク雑誌だった)について論じる時に、レバーが遠いとか、足がつかないとか、ハンドルが切れないとか論じても仕方がないのだ。そのあたりは、自分で調整したり、フィットさせたりするもの(それができない人がドゥカティを買っても意味はない)。論じるべきはL型エンジンのもたらす優れた操縦性、デズモドローミックの提供する低回転からトラクションフィールあふれる出力特性なのだ。つまりは、Vision Proもこの体験が何をもたらすかというビジョンを語るべきなのだ。
とはいえ、このSight Sealや、バンドの装着感が体験を大きく左右することはたしかなので、このあたりは今後アフターマーケットパーツがたくさん出るのではないだろうか? たとえば、帽子のように頭全体に分散すれば重さは感じにくくなるだろうし、Sight Sealも社外品がいろいろ出そうな気がする。単にフィット感だけの問題ではなく、iPhoneケースのようにファッション性も求められるようになるだろう。顔に着けるものだけに、多くの人がこだわる商品になるだろう。
カーボン製の軽いものや、レザー製のファッショナブルなもの、ピカピカ光るものなど、出てくると面白そうだ。
Vision Proのために引っ越すことにした
解像度に関しては「視力0.7の世界」と言っていたが、0.5ぐらいかもしれない。「ほとんど見たままでブレもない」と言っていたが、歩き回ると多少ブレる。このあたり、昨年6月に体験した部屋がラグジュアリーなリビングを模した部屋で、照明も暖色系でソファーやカーペットなど柔らかいものが多かったが、蛍光灯の自室で角張ったデバイスがいっぱいある部屋で見るのと、だいぶ印象が違うのかもしれない。あの部屋は、なるべくいい体験をするために『よくできていた』ということなのかも。
Apple IDの問題や、日本語入力の問題など、現在先行して試しているから発生している問題もまた後日。
いろいろ書きたいことはいっぱいあるのだが、ここまでご覧いただいて分かるように、画面キャプチャを撮ると散らかったデスクが写るし、筆者自身が体験している場面を撮影しても薄汚れた古いソファーや、散らかったリビングが写る。そこで、筆者はVision Proの撮影がしやすいように(実のところ、それだけではないが)、少し広い場所に引っ越すことにした(といっても、家賃を抑えるために、立地は不便になり、建物もより古くなるのだが)。
今週末に引っ越すので、新しい家に引っ越したら、Vision Proを満喫しながら、いろいろと記事を書きたいと思う。というけで、本編の続きは、いましばらくお待ちいただきたい。
ご質問などあったら、X(旧Twitter)にいただけたら、返答したり、記事内容に反映したりしたいと思う。
(村上タクタ)
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