3年4カ月ぶりの #天キー は、250人が1日経たずにいっぱいに
『天下一キーボードわいわい会』は、自作キーボード界の古参、Mint60の設計者である、ゆかり( @eucalyn_ )さん、そこにマツコの知らない世界にも出演された、びあっこ( @Biacco42 )さんや、ぺかそ( @Pekaso )さんなど、自作キーボード界の方々が集まって、運営が行われているようだった。2023年3月4日開催、場所は渋谷のGMO Yours・フクラス。
最初に開催されたのは2018年11月。そこから、半年後の2019年5月、さらに半年後の2019年11月に第3回が、いずれも約250人規模で開催されたが、以降感染症の拡大により開催が行われずにいた。「触れてこそのキーボードイベント」であるからして、開催できなかったとのことだ。
従来のイベントではかなり密集した状態で行われていたので、3年4カ月ぶりの開催では、GMOインターネットグループの協力を得て、広めの会場で開催された。会場は、参加者がキーボードを展示できるエリアと、スポンサー企業のブースエリア、トークセッションエリアの3エリアに分けて運営されていた。また。キーボード展示エリアは、キーボードをアルコール消毒して触れるエリアと、アルコール消毒せずに触れるエリアに分かれていた。これは、アクリルや3Dプリンターの出力などで作られる自作キーボードが、アルコール消毒に弱い(割れやすくなる)ことを鑑みた配慮とのことだった。
参加料500円の有料イベントであるにも関わらず、250人の定員は1日を待たずしていっぱいになったとのことで、すべてのエリアは、開催中ずっと、異様な熱気をもって盛り上がっていた。
自作キーボードマニアといっても、いろいろな人がいる
参加して初めて分かったのが、自作キーボードマニアといってもさまざまな人がいることだ。
まず、源流にいるのが、自分で基板を設計しオリジナルのキーボードを作っている人。また、それを少量とはいえ量産して販売している人。そして、それを買って組み立てている人だ。また、機能にこだわる人もいれば、デザインや、キートップのカスタマイズに凝る人もいる。
電子工作的にキーボードを作ること自体が楽しいという人もいれば、自分の利用目的があり、その必要性にしたがって最適なキーボードを作ることに熱中している人もいる。
主流はエンジニアの方々で、コードを書くためにキーボードを最適化している人が多数派だが、筆者のように日本語文章を書くことにフォーカスしている人もいるし、ゲームや、デザインワークなどのために、マクロやショートカットを割り振るボタンとしてのキーボードを探究している人もいる。
この多様性こそが、自作キーボードマニアの方々が、変に尖り過ぎず、上下関係をつくり過ぎず、独特なコミュニティを作り上げている理由ではないかと思う。
世界に、キーボードユーザーは数十億人いるわけだから、キーボード自体のユーザー層はとても広い。毎日使っているキーボードを、自分にピッタリフィットしたものにしたい……そう思えば、自作キーボードマニアへの道はすぐそこに開かれているわけだ。
主催ゆかりさんに聞く、今回のトピック
主催のゆかりさんに聞いたところ、日本の自作キーボード界隈は、そもそも始まった時から分割式キーボードがほとんどで、自作=分割式であった時代が長かったとのこと。それが「今回は一体型の人も多かったので、だいぶ傾向が変わってきた」と感じたとのこと。
また、「『キーボードイベントは初めて』という人が、かなり多く、全体の半分弱ぐらいはいらっしゃった。これはユーザー層が広がってるということで、とても嬉しい」ということだった。3年4カ月も間があったので、ユーザー層の新陳代謝が進んだのかもしれない。
展示されているキーボードは実にさまざま。購入できるタイプもあれば、ひたすら自身の使いやすさを追求した特殊な形状のもの、使い勝手よりむしろ面白さを追求したようなもの、本当に見ていて飽きないイベントだった。
また、協賛スポンサーのブースがあったのも良かった。HHKBや東プレをはじめ、自作する工作技術がなくても買えるキーボードがいろいろ展示されていたので、これはこれで『自作はできないけど、上質なキーボードが欲しい』という人には良い選択肢だと思う。
読者の皆さんもいろんなキーボードを見たいことと思うので、記事の末尾になるべく多くのキーボードを掲載しておいた。ぜひご覧いただきたい。
実に面白く多彩なセッション(YouTubeのリンク付き)
セッションの方も非常に興味深かった。あまり詳細にはここでは書き切れないが、概要だけ記しておく。それぞれ、非常に勉強になる。YouTube中継のリンクを掲載しておくので、ぜひご覧いただきたい。
最初のゆかり(@eucalyn_)さんの「自作キーボードの楽しみ方」は、日本の自作キーボードの界隈を俯瞰した初心者にも分かりやすい実にいい講演だった。
ヨーキース (@Yowkees)さんの、「自作キーボードにおける射出成形の活用と現実」は、実際に金型を使った射出成形をされた経験から、初めての金型設計のポイントや、どのぐらいの予算がかかるのか? 損益分岐点は……など、自作界隈の製品化について興味のある人には面白い話だったと思う。
ぎーくらびっと (@geek_rabb1t)さんの「Timothyのひみつ」は、販売が開始されたばかりの、3Dプリントボディを持った左右分離型自作キーボード『Timothy』(https://booth.pm/ja/items/4213539)の開発秘話。親指キーが少し低い点など『できるだけ、手を楽にして打鍵したい』というコンセプトには非常に共感できるもので、このキーボードが欲しくなってしまった。
「それはそう」座談会は、ぺかそ(@Pekaso)さん、びあっこ(@Biacco42)さんはじめ、計6人の対談。現在の自作キーボード界隈の様子を知る上で、必見の対談となっていた。『自分のお気に入りで仕事をしたら、アガる』とか、『自分の好きなキーボードを他人に見せたい』というのも重要なポイントだと感じた。
https://t.co/UFj6nn2KvP
大岡俊彦さん( http://oookaworks.seesaa.net/#gsc.tab=0 )の、「レイヤー入門とカナ配列の話」も興味深い。こちらは、物理的な設計だけでなく、配列の話。JIS配列だけでなく、小梅配列、月配列、薙刀配列など、より効率的に日本語の入力を行うための配列の研究があり、これはこれで興味深い分野だと思った。
https://t.co/y4h23xgWtT
最後のsatromi (@satromi)さんの「エルゴノミクスキーボードの歴史から自作キーボードの未来を考える」も、TRONキーボードから始まり、日本人の手の形状に合わせたさまざまなキーボードの形状の追求の話が非常に面白い。
https://t.co/kRo5k7h2Ax
ぜひ、次回はあなたも!
誰もが使う『キーボード』という道具を追求していくところが、この自作キーボード趣味の面白さだ。1日に何時間も使う道具なのに、2〜3000円の安物キーボードを使うのは本当にもったいない。長時間使う道具にはお金をかけるべきだと思う。
次回開催時には、ぜひみなさんも、このイベントに参加してみていだたきたい。
ここからは協賛ブースを出展した企業のご紹介(全部撮影したつもりだが、抜けてたらごめんなさい!)。
(村上タクタ)
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