「趣味の文具箱」編集長・清水のつぶやき<第7回> 「アントウ」が作る21世紀型の“SDGs”なボールペン

エシカルなのにラジカル。
(道徳的なのにとっても過激)

サスティナブルなのに、物欲を揺さぶる
(汎用性がありずっと使い続けられるのに、さらなる物欲を喚起する)

アントウのボールペンS/Cは不思議な魅力を持つボールペンだ。

日本の文具市場は、万年筆もボールペンでもインクや替え芯は「純正主義」が本流。でも文房具に潜む趣味(=快楽)がこれだけ多方面に開花している昨今においては、万年筆でも、ボールペンでもインク選びを自由に楽しみたい。万年筆インクは手軽に買えるものだけでも軽く2000色を超える時代になった。ゲルインクの進化で、ボールペンの色数も激増し、発色のバリエーションも広がっている。

台湾ブランド「アントウ」のボールペンS/Cには、純正のリフィルがない。なぜなら、他社製のほとんどのボールペンのリフィルを使える万能の作りをしているから。万力のような緻密な固定装置が先端にあり、ここで一般的なボールペン替え芯を確実に固定できる。マグネットで簡単に着脱できるキャップもあるので、水性ボールペン(ローラーボール)の替え芯も使える。唯一無二の機能を持つ独創的な筆記具なのだ。

自分は、新しいボールペンが登場すると書き味やインク色を試したくなり、替え芯をとりあえず買う。気がつくとこの替え芯が引き出しにかなり溜まった状態になっている。編集部ではこの引き出しは「替え芯生け簀」と呼ばれている。そんな生け簀に眠っている替え芯を有効活用するのにボールペンS/Cは重宝する。アルミを精密に削り出した軸はグリップしやすく、替え芯が秘めた能力(インクフローや滑らかな書き味)を底上げしてくれる。

2022年6月には、ボールペンSに新色の「コーヒーブラウン」、ボールペンCでは2つの新色「宝藍(バオラン)」「今紫(イマムラサキ)」が登場する予定。※クラウドファンディングのマクアケでは3月から先行販売を開始している。(www.makuake.com/project/antou02/)

エシカルで、サスティナブル。21世紀型の“SDGs”なボールペンとして、今後はより注目が集まっていくだろう。

この記事を書いた人
清水茂樹
この記事を書いた人

清水茂樹

編集長兼文具バカ

雑誌「趣味の文具箱」編集長。1965年福島県会津若松市生まれ。文房具に関する雑誌の編集、オリジナル文具の開発を担当。2004年に「趣味の文具箱」創刊し、世界中の文具メーカーの取材を勢力的に続け、最新の文具情報を発信。筆記具や文房具の魅力と、手で書くことの楽しさを伝えている。
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