至極のポジティブソング! a・chi-a・chiが歌う『魔神英雄伝ワタル』

1988年のテレビ放送より今に至るまで人気のロボットアニメ『魔神英雄伝ワタル』。今年の1月に最新シリーズが始まり、過去作品も再び脚光を浴びている。いつまでも輝き続けるアニソン屈指の名曲「Step」とその歌手であるa・chi-a・chi(アチアチ)について語らせてほしい。

温泉旅館から羽ばたいた双子の歌手

a・chi-a・chiのデビューシングル「Step」は『魔神英雄伝ワタル』のオープニングテーマとなった。カップリングとしてエンディングテーマ「a・chi-a・chiアドベンチャー」を収録。ⒸSUNRISE・R 資料提供:taku1

2025年1月より放送中のテレビアニメ『魔神創造伝ワタル』が話題だ。

本作は小学四年生の星部ワタルと従弟の天部カケルが異世界である宙部界(ちゅうぶかい)に飛ばされ、その世界を我が物にしようとする悪者エンジョーダを退治するために、宙部界で出会った仲間と協力し合いながら、ワタルはロボットである魔神(マシン)・龍神丸に乗り込み成長していくという冒険物語である。

本作は1988年からテレビアニメとして放送開始した『魔神英雄伝ワタル』の正当なシリーズ作品である。

『魔神英雄伝ワタル』は37年という歴史のなかで、1年放送のテレビアニメが3作、オリジナルビデオ作品(OVA)が2作、WEB配信用と劇場公開アニメ作品が各1作のシリーズ続編が制作されている。他にもラジオドラマやCDドラマ、マンガや小説、ゲーム、舞台等、そのあまりの豊富さゆえにすべてを把握できているファンはいないのではないかと思えるほどだ。

『魔神英雄伝ワタル』の語り口はさまざまあるが、本稿では主題歌を歌ったa・chi-a・chiに注目したい。

今井 永(のり)と今井 久(ひさ)の双子の姉妹からなるa・chi-a・chi(アチアチ)は老神温泉で有名な群馬県の沼田市の出身だ。1987年暮れと1988年正月明け、その沼田の温泉旅館に当時ビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)に所属していた金子秀昭氏が宿泊したことから、彼女たちのシンデレラストーリーが始まる。

この時、金子氏はちょうど『魔神英雄伝ワタル』の主題歌選定を行っている最中で、旅館の女将から歌の上手い双子の姪がいると紹介された。正月明け、姉妹は金子氏を前に温泉旅館の宴会場の舞台の上で「ダンシングヒーロー」「タッチ」「恋のバカンス」でその歌声を披露すると、すぐにビクター青山スタジオでデモ録音することになり、その勢いのまま主題歌デビューをする事になる。

実は、二人は幼い頃から平尾昌晃氏の音楽スクールに通い、ちびっこ向けののど自慢に出演しては賞を総なめする地元でも名の通る存在だった。小学生の時には、国民体育大会で老神温泉に来訪した皇族の三笠宮崇仁親王に歌を披露している。金子氏は二人の声を「非常に耳触りのよく、妙にゾクゾクする声をしていて、そして何よりも『ワタル』という作品の世界観に合った明るい声」と評している。

確かに二人がユニゾンで歌っている時は歌声から非常におもしろい効果を感じる。

金子氏も「双子ではない他人同士が2人で歌うのとは異なる、1人で同じパートを2回重ねるのとも異なる、魅力的な歌声になる。今井 永と今井 久がユニゾンで歌うと2人の声ではないa・chi-a・chiの声になる」と語る。

双子だからなのか、声質が似ているけど声帯の違いからきているのかはわからないが、永のストレートな歌声に久がアシストするかのような一体感で、ユニゾンと言う言葉では言い表せない歌声に魅了される。

そのデビューとなる『魔神英雄伝ワタル』のオープニング主題歌には「Step」(作詞・作曲:立花 瞳)という楽曲が選ばれた。

「実は、当時デビューを目指していたシンガーソングライターの立花 瞳が自分自身で歌うために作成したデモテープに収録されていた楽曲のなかの1曲だった。ワタルの世界観とa・chi-a・chiの明るい声質にぴったりの楽曲だった」(金子氏)

ちなみに「Step」は、アニメで使用された曲とCDへ収録された曲とで歌詞の一部が違う。アニメでは「ドリームハンター」という部分がCDでは「プロローグ」となっている。これについては、「CDはオリジナルの歌詞でやりたいという立花 瞳の強い希望で、アニメは作品のイメージから関係者の意向で変えました」(金子氏)とのことで、a・chi-a・chiの二人も両バージョンを当時収録している。

「Step」のカップリングには、エンディング曲の「a・chi-a・chiアドベンチャー」を収録。曲名に歌手の名前が入ることは珍しいことではないが、こちらはちょっと特殊なパターン。

「エンディング曲の作詞の発注の際に、作詞家の伊藤アキラに温泉地での双子姉妹との出会いをおもしろく愉快に話したら、それを受けておもしろく愉快な遊び心満載の歌詞と曲名ができ上がってきた。伊藤アキラと相談してカタカナの“アチアチ”を双子を連想させる“a・chi-a・chi”に変えて楽曲のタイトルと歌手のユニット名の誕生となった」(金子氏)

熱い温泉イメージも内包したある種の必然を感じるエピソードだ。

予期せぬ失速…そして復活

『魔神英雄伝ワタル』の主題歌「Step」は視聴者のハートをガッチリつかんだ。2024年に行われた「80年代アニメソング総選挙 ザ・ベスト100」では22位にランクイン。この曲の魅力に音楽評論家のDJフクタケは「美しいメロディとキラキラ輝くような浮遊感」「凛とした声で聴くものの心にやさしく寄り添い、励ましてくれるような歌詞の説得力」を挙げる。

だからといって「Step」は発売当時に売れていた曲とは言い難い。

「名曲=売上ランキング上位」とは限らない一例としても「Step」は快挙である。

通常のCDは発売された初速が一番のピークとなり、あとは緩やかに下降していくものである。

ところが「Step」の場合は最初のテレビシリーズ『魔神英雄伝ワタル』の放送終了後も数年の間はメーカー側に毎週のようにバックオーダーがかかるという、とても不思議な売上グラフの描き方をしていたとも金子氏は語る。映画のロングラン上映さながらまさにロングランヒットといえる部類の名曲となる。

「Step」のヒットを契機にa・chi-a・chiの二人も歌手として羽ばたいていくと思われたが、祖父の反対や通っていた学校の方針により芸能活動を断念。当時『夜のヒットスタジオ』にも出演も決まっていたが、自主的に見合わせたことでそれも果たせなかった。

一方、『魔神英雄伝ワタル』はヒットを受けてテレビシリーズの続編が制作されたが、『魔神英雄伝ワタル2』(90年)は高橋由美子、『超魔神英雄伝ワタル』(97年)は三重野 瞳に主題歌歌手が交代している。

テレビ放送のアニメタイトルは関連会社との兼ね合いから、芸能活動ができる歌手を起用するのは仕方のないことだ。ところが『ワタル』ファンのa・chi-a・chiを切望する声は続き、a・chi-a・chiは文化放送で放送されたラジオドラマの『魔神英雄伝ワタル3』(1991年)にて主題歌歌手としてカムバックを果たし、その後も『ワタル』作品とのタイアップが続いていく。

だが、残念ながら『ワタル』作品は98年以降に動きがなくなり、a・chi-a・chiも活動を休止した。

『ワタル』とぴったり寄り添う歌声

冒頭で述べたように、『ワタル』ファンの熱は時代を経ても変わることがない。本誌『昭和50年男』vol.26(2024年1月号)「いくつになってもおもしろカッコいいぜ!!『魔神英雄伝ワタル』35周年」の記事にてインタビューに応じた戦部ワタル役を演じる田中真弓はファンについてこう語っている。

「今でも『好きです』と言ってくれる方がすごく多いです。通常、終わった作品はすぐに流れていくものなんですが、『ワタル』だけは常に何か盛り上がっている印象です」

田中の言葉どおり『ワタル』作品の復活を望む声は途絶えることはなく、その声と同じ大きさでa・chi-a・chiの活動再開を願う声もやむことはなかった。

そしてその時は来た。

前作から22年の時を経た2020年に『ワタル』作品は奇跡の復活を遂げた。

続編として制作された『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』ではa・chi-a・chiの「Step」が主題歌に再び起用されたのだ。それは新規に録音された音源ではなかったが、この「Step」という曲が『ワタル』作品の主題歌として再起用されることには大きな意味をもっている。ファンのみならず制作側もこの楽曲への思い入れも強く、作品への親和性が高いと認識しているからに他ならない。

さらに2年後には『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸』を再編集した映画『魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 -再会-』として劇場で上映され、全国どころか世界のスクリーンで「Step」が流れることとなった。a・chi-a・chiの二人も劇場に足を運び「Step」が流れた途端、自然と涙があふれたと言う。

これら一つひとつの積み重ねにより、2024年1月に開催されたイベント『魔神英雄伝ワタル 35周年感謝祭』では、a・chi-a・chiはとうとう舞台に舞い戻ってきた。その間およそ27年ぶり。ファンの長年の切望がひとつのカタチとして現れた瞬間である。それは、『ワタル』と言う作品において「Step」という楽曲とa・chi-a・chiはなくてはならない存在であることを知らしめるには充分な出来事だった。

そして、2025年5月には、仙台フィルハーモニー管弦楽団の定期公演にて、『魔神英雄伝ワタル』の劇判を中心とした演奏会が行われ、歌手としてa・chi-a・chiが出演する。a・chi-a・chiがオーケストラの生演奏をバックに歌を披露することは初めてのこと。長年親しまれてきた「Step」に新たな歴史が刻まれる瞬間を、会場にて生で体験して欲しい。

「特別演奏会 エンターテインメント定期
第4回魔神英雄伝ワタル&ワタル2~おもしろカッコいいコンサート~」

シリーズ最新作『魔神創造伝ワタル』が2025年1月から放送されて話題の『ワタル』シリーズ。そんな『ワタル』シリーズから、『魔神英雄伝ワタル』『魔神英雄伝ワタル2』の主題歌と劇伴をオーケストラサウンドにてお送りいたします。杜の都でも「おもしろカッコいいぜ!」

●日時:2025年5月3日(土・祝) 開場 14:00/開演 15:00
●会場:仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
●出演:指揮 神成大輝/ゲスト a・chi-a・chi
※本公演ではアニメーションなどの映像演出はございません。
●チケット:¥ 8,000円
※未就学児のご入場はできません。
●主催:公益財団法人仙台フィルハーモニー管弦楽団
●エンターテインメントパートナー:バンダイナムコフィルムワークス、バンダイナムコミュージックライブ、バンダイナムコピクチャーズ
ⒸSUNRISE・R

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昭和50年男 編集部
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昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50(1975)年生まれの男性に向けて、「ただ懐かしむだけでなく、ノスタルジックな共感や情熱を、明日を生きる活力に変える」をテーマに、同世代ならではのアレコレを振り返ります。多彩なインタビューも掲載。
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