現実と虚構が同居する不可思議な美しさ。|ツイン・ピークス(1992)

’90年から’91年にかけて第一次TVシリーズが放映され、その後に本作、そして2017年放映分の通称リミテッドイベント、さらにパイロットフィルムなどを加えると、なんと全50話超という圧倒的なボリュームを誇るカルトミステリー『ツイン・ピークス』。手嶋さんは知人から薦められ、その深い沼へと沈んでいった。
「監督のデヴィッド・リンチは『イレイザーヘッド』などで前から知っていて、彼の代表作ということで知人に薦められて以来、その不可思議な世界観にまんまとハマっていきました。ドイツの写真家アウグスト・ザンダーの人物写真にも通じる人間の奥底に潜む階級意識や差別意識の表出、さらにはスタンリー・キューブリックを思わせる狂気的な映像美が何よりのツボでした。とはいえ、最初に観た際は何が何だかさっぱりわからなかった(笑)。
TVシリーズから劇場版まで幾重にもギミックが張り巡らされ、序盤のわずか数分しか絡みのない人物が、後のイベントのカギを握っているなど、伏線と回収のバランスもさらに沼へとハマる推進力となっています。また、サントラ盤もリンチの不可思議な世界観に見事な彩りを添えていて、一聴してすぐにあの牧歌的な静寂と相反する狂気や闇が蘇る。テーマ曲ともなったジュリー・クルーズ「Falling」はもちろん、劇中歌として採用されたクロマティックス「Shadow」も収録されています」



(出典/「Lightning 2025年2月号 Vol.370」)
Text/T.Hakusui 白水健寛 Photo/N.Suzuki 鈴木規仁、N.Hidaka 日高奈々子
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