「メイカーズ」手嶋慎さんおすすめ! 全50話超の鬼才リンチならではのカルトミステリー「ツイン・ピークス」

まだインターネットの無い時代、憧れた海外の情報を得るツールは映画だった。そのスタイルに、信念に憧れた若き日の自分がいまの自分を作り上げている。スクリーンに映る格好良い男たちから、ボクらは様々なことを学んだ。今回は「メイカーズ」手嶋慎さんがお気に入り「ツイン・ピークス(1992)」を紹介!

現実と虚構が同居する不可思議な美しさ。|ツイン・ピークス(1992)

「メイカーズ」デザイナー・手嶋慎さん|東京靴シーンのメッカ浅草にて経験を重ね、2009年にメイカーズを発足。自社工房にて一貫生産されるプロダクトはシューズからブーツまで多岐にわたる。傍らクルマ(ポルシェ)、自転車を趣味とし、趣味人としても知られる

’90年から’91年にかけて第一次TVシリーズが放映され、その後に本作、そして2017年放映分の通称リミテッドイベント、さらにパイロットフィルムなどを加えると、なんと全50話超という圧倒的なボリュームを誇るカルトミステリー『ツイン・ピークス』。手嶋さんは知人から薦められ、その深い沼へと沈んでいった。

「監督のデヴィッド・リンチは『イレイザーヘッド』などで前から知っていて、彼の代表作ということで知人に薦められて以来、その不可思議な世界観にまんまとハマっていきました。ドイツの写真家アウグスト・ザンダーの人物写真にも通じる人間の奥底に潜む階級意識や差別意識の表出、さらにはスタンリー・キューブリックを思わせる狂気的な映像美が何よりのツボでした。とはいえ、最初に観た際は何が何だかさっぱりわからなかった(笑)。

TVシリーズから劇場版まで幾重にもギミックが張り巡らされ、序盤のわずか数分しか絡みのない人物が、後のイベントのカギを握っているなど、伏線と回収のバランスもさらに沼へとハマる推進力となっています。また、サントラ盤もリンチの不可思議な世界観に見事な彩りを添えていて、一聴してすぐにあの牧歌的な静寂と相反する狂気や闇が蘇る。テーマ曲ともなったジュリー・クルーズ「Falling」はもちろん、劇中歌として採用されたクロマティックス「Shadow」も収録されています」

『マルホランド・ドライブ』のOSTをはじめ、デヴィッド・リンチの盟友でもある映画音楽家アンジェロ・バダラメンティが手掛けた2作のシリーズサントラ。牧歌的ながらもどこか不穏な空気も漂う世界観を見事に表現している
ワイマール共和制期の社会とその副産物を写し続けたドイツの写真家アウグスト・ザンダー。貴族階級から退役軍人、ホームレスまでをまるで等価値のように切り取っている
手嶋さんが手掛けるメイカーズ初期のシーズンイメージでは、ザンダーの影響下、かつての欧州労働階級を思わせるモノクロ画像が採用された

(出典/「Lightning 2025年2月号 Vol.370」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

Pick Up おすすめ記事

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...