元ラジオディレクターが立ち上げた、気分がアガる「ホームセンター」

  • 2024.06.25

新潟県にある、ちょっとおしゃれなアメリカの工具や日用雑貨、キャンプ用品などを揃えたセレクトショップ「FEELIN’ GOOD GENERAL STORE(フィーリングージェネラルストア)」。新潟に生まれ育ったオーナーの村田和之さんに、地元にこのような店をオープンした経緯とその思いを訊いた。

「FEELIN’ GOOD GENERAL STORE(フィーリングージェネラルストア)」オーナー・村田和之さん|1975年新潟県上越市生まれ。学生時代にアメカジ、渋カジなどのファッションにのめり込み、洋服店、セレクトショップをやりたいと考えるように。FM局に就職後は、ディレクターなどを経てフリーランスのディレクターに。その頃に個人で家具の製造販売や古着売買なども始めるようになる。やがて自分の店を持つ夢を叶えるべく仕事を辞めて準備をし、2015年に『FEELIN’ GOOD GENERAL STORE』をオープン

子どもの頃からずっと 「自分の店」が持ちたかった。

「気分がよくなる雑貨店」。実に響きのよい名を持つこの店には、工具、文具、園芸用品からウエアまで、オーナー村田さんがセレクトした雑多な商品が揃う。コンセプトは「おしゃれなホームセンター」

「セレクトショップを開きたい」

村田和之さんの中学時代からの夢がそれだ。ヘビーな厚みを持ったコットンTとか、定番の501じゃないリーバイスとか、某ブランドのあのジャケットとか。

「目利きで選んだ本当に欲しいものだけを揃えた店を、生まれ育った新潟でやりたかったんですよ」

そして今、村田さんが新潟市中央区で営むのが『FEELIN’ GOOD GENERAL STORE(フィーリングージェネラルストア)』だ。

DIYでつくった壁や床に、自作のドライフラワーで飾った味のある店内。そこには、もちろん村田さんが自ら選んだ商品が並ぶ。アメリカ製の脚立とか、ブリティッシュグリーンが洒脱な園芸用品とか、西海岸のガレージにあるようなブラシ、とか。

『あれ? セレクトしてるの服じゃないの?』と思うのは当然だ。『フィーリングージェネラルストア』は名前通りのジェネラルストア(雑貨店)。もっと正確に言うと「ホームセンター」だという。

「途中で洋服より普段使いの日用品やツールに魅かれるようになっちゃったんですよね。掃除にしろ洗濯にしろ、日常の作業って、わずらわしいこともある。けれど、使うモノが素敵だったら、そういう作業も、ちょっと楽しくなったりするじゃないですか。そういうのを、提供したかったんです」

USA 5ガロンバケツ。ロゴやフォントがさりげなくカッコいいポリのバケツ。ソックスや下着を放り込んで、ごろんと置いておくとか、いいですよね。2200円〜
VOIRYのワークエプロン。キャンバス地のVOIRYのワークエプロン。ヴィンテージ感あるプリントもいい。ガシガシ使って、汚して、洗って、育てて! 4180円

ルーツは電気店、工具と技にシビれていた。

最初の夢は電気屋さんだった。上越市の実家で亡き父が電気店を経営。村田さんも小学生まではクーラーの取り付けや冷蔵庫の設置をたまに手伝っていたからだ。

「まず工具がかっこよかった。あと田舎の電気店でしたからね。『棚が壊れちゃって』なんて言われると親父、『いいよ』なんて軽く言ってサッと直しちゃうんですよ」

ただ中高生になると情熱はファッションに傾く。1990年前後、渋カジの頃。ディスカスのパーカーやビッグマックのシャンブレーシャツなんかをタマ数が少ない新潟で探し、好んだ。次第に夢は電気店から洋服店になっていった。だから新潟大学経済学部に進学したのも夢に近づくためだった。

「本当は経営を学びたかったけど、当時、新大には経営学部がなくて経済学を。仕方ないので……」

実地で学んだ。新潟市万代地区にある大手セレクトショップでアルバイト。夜はDJブースのあるバーでレゲエやソウルのレコードを回していた。周囲がヒップホップばかりかけている中でその辺を選ぶのは、あえて505を選ぶ村田さんの“らしさ”だ。そう考えると、以降のキャリアにも、“らしさ”が漂う。

『好きなモノがある人、募集!』

ある日、そんな一文だけを乗せた求人広告を見つけた。

「その年に新潟に開局する新しいFM局の求人でした。音楽と服が好きな僕が、呼ばれた気がした」

ラジオなんてほとんど聴かなかったが「心地よいレゲエやソウルをかけたい。聴きながら家事をすると、いつもの掃除や洗濯もなんだか楽しく感じるような番組がしたい」と伝えると、採用された。

「新潟だと特に他と少し違う仕事ですからね。飛び込みました」

ディレクターとなって音楽番組や情報番組を手がけた。土曜日の深夜番組では自らラジオブースでMCも務めたこともあった。テレビからは聴こえないソウルやレゲエの渋い選曲が「何げにいい曲がかかる」と静かな話題となった。気がつけば、15年が経っていた。

文具も村田さんのルーツのひとつ。「子どもの頃から文具好き。パッケージのロゴなんかも味わって欲しい」

洋服よりも日用品に欲しいモノ」がなかった。

40歳に控えた頃、「ココで店をやらなきゃ一生ない」と腰をあげた。ただし、洋服よりも「足りないもの」があることに気づいた。

「その頃には結婚して子どももいたので、洋服より家のもの、日用品を買う機会が増えていたんです。するとちょっとした掃除用品とか食器とか、普段使いのモノこそ、自分好みが少ないなって」

起業の準備中、アウトドアショップで働いた経験もヒントになった。「メスティンを買いにきた。弁当箱にしたくて」「キャンプ用品をリビングで使っている」とアウトドアな用具を普段使いしている人が多かった。よくある日用雑貨より「気分がアガる」からだ。

「だから洋服店じゃなく雑貨のセレクトショップにしたんです。しかも普通の雑貨店にないような、なんというか男っぽいアメリカの工具や日用雑貨、キャンプ用品などから縦横無尽にセレクトした店にね。並べてみると『おしゃれなホームセンター』みたいだった」

こうして『フィーリングージェネラルストア』は生まれた。場所は今と違う中央区礎町のビルの3階。それでもじわじわとファンが増えた。新潟ではなかなか見かけられなかった商品が並び、「何げにいいモノが揃っている」と来店客を増やしていったからだ。その中に、今テナントとして入っている商業施設「S.H.S鳥屋野店」の会長で、地元のカリスマ経営者である城丸正氏もいた。

「突然、ふらっと訪れて『移転しないか?』と言うんですよ」

『こんな場所でこんな商売できているのは大したもの』『うちに移れば、もっと売れる』。城丸氏の目利きで、セレクションされた。

「そして2018年から今の場所、ココです。言われたとおり、売上もお客さんも増えましたね」

新潟の有名家具店S.H.Sが運営する元倉庫3棟を改装してつくった「S.H.S TOYANO」。店はその中のテナントとして入る。「施設自体はファミリー層が多い。中でもうちはお父さんたちが『おっ!』と寄ってくれることが多いですね」

もうオープンから9年目。村田さんは今も変わらずレアグルーヴをかけるように、あまり見かけないカッコいい用具や道具を売る。使う人の時間と日常と心を潤す。そうそう。店をはじめてから、村田さん自身も凄まじく心を潤わされた瞬間があったらしい。

「長男がね、学校で将来の夢をと聞かれて『雑貨屋さん』って」

店内は約8坪。アウトドアグッズをインドアの普段使いにしたり、ヴィンテージの木箱や園芸用品をインテリアにしたり。ふらっと歩くだけで、DIYのヒントが得られるのもたまらない
伊サタルニアのチボリや長崎の波佐見焼、ハサミポーセリンなど食器もよきセレクト。「料理もDIY扱いで」
US USEDの木製ボックス。棚にも椅子にもなり、部屋の雰囲気を200%アメカジ風にしてくれる魔法の木箱。入荷するとすぐに売れていく人気商品だ。1万4300円
BOTANYのハンドツール。鉢植えや鉢替えのときに使えるプラスチック製ハンドツール。ブラックで無骨な顔なのがいい感じです。550円~

 

LOUISVILLEのラダー。もちろん脚立として使うのもいいが、ベンチや棚として使うのも良さそう。無骨さとかわいらしさが共存する使いやすい脚立。1万3200円
Prosperplastのジョウロ。園芸用品だけど、どこかミリタリーテイストを感じさせるのがいいProsperplastのジョウロ。2970円

【DATA】
FEELIN’ GOOD GENERAL STORE
新潟市中央区女池南3-5-1 S.H.S TOYANO 1F
TEL025-378-3277
営業/10:30〜19:00
休み/水曜
instagram:@feelingoodgeneralstore

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2024年6月号 Vol.362」)

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