横浜に焙煎所を構え、ビーンズショップ&カフェとして成長し続ける「堀口珈琲」の世田谷にある基幹店。

鮮度が高く生豆重視の視点、そしてコーヒーの産地の個性をどこよりも早く打ち出してきた堀口珈琲。創業33年の老舗が30周年を迎える前年に、自家焙煎とは異なる次なるステージに向かうべく、横浜に新しいロースタリーを構えた。すべてはここ「堀口珈琲 世田谷店」から。国内4店舗、海外1店舗を構える堀口珈琲の基幹店だ。

なぜ堀口珈琲は横浜に焙煎所をつくったのか。

堀口珈琲1号店となる世田谷店。だが、創業の’90年当初は2階のみで、ビーンズショップがメインだった。1階に拡張したのは’96年

堀口珈琲の開業は1990年のこと。コーヒーの自家焙煎の珈琲御三家(「カフェ・ド・ランブル」「カフェ・バッハ」「もか」)に対して、カフェ形式ではなく自家焙煎のビーンズショップとして登場。当時としては異色のスタイルだった。

堀口珈琲が目指すべきコンセプトは明確だった。「コーヒーの評価基準であるピラミッドのトップに位置する最高のコーヒーを提供すること。これまでにない味で感動してもらいたいと思っていました」と振り返るのは創業者の堀口俊英さん。ショップを開店するにあたり3年間、世界中を巡ったという。

ちなみに現在よく耳にする「スペシャルティコーヒー」というワード。SCAA(アメリカス ペシャルティコーヒー協会)’82年からあったものの、’90年代の日本ではまったく浸透していない。だが、堀口さんは新しいコーヒームーブメントの機運を肌で感じていた。

日本でSCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)が設立されたのは随分あと。2003年のことだ。堀口珈琲は1999年に狛江に出店し焙煎能力を増強。2000年代は店舗を拡充し、生豆共同購入グループ(LCF)で全国店舗とネットワークを形成。2017年には上海にブランド初の海外出店を実現させた。

そんな堀口珈琲が横浜の港町・新山下に新しい焙煎所を始動させたのは2019年の6月のこと。理由のひとつは、横浜港に到着した生豆の輸送コストの削減だが、実はもっと重要なミッションがあった。

横浜の港町、新山下の倉庫街の一角。天井高く、抜けのよい焙煎室ではフジローヤルの直火式焙煎機20kgが2台設置。船便で送られてきた生豆を焙煎して出荷まで行う

従来の自家焙煎店とは次元が異なる、豆のクオリティコントロールを行うためである。生豆と焙煎後の豆が混在しないようフロアを完全にわけ、焙煎後の豆がクリーンで衛生的でいられるように徹底。さらに異物や不良豆を極限まで除去できるような体制をつくりあげた。焙煎過程のすべてを管理した、まさにスペシャルティコーヒーの究極の焙煎所である。

サードウェーブのムーブメント以降、自家焙煎するロースターが増え、COE(カップオブエクセレント)を受賞するような豆を扱う店も出始めている。だが、その間、堀口珈琲は次のステージへと進もうとしていた。

大切なのはその豆がどう管理されて製品になるかということ。味の追求は、衛生管理も当然含まれることを横浜ロースタリーは教えてくれる。ピラミッドのトップクオリティを生み出す。堀口さんの理念は、設立30年目にして、今本当の意味で実現されたのだ。

2019年6月から本格始動をした堀口珈琲の横浜ロースタリー。フジローヤルの直火型20kg釜を2台完備。さらに2台ほど設置可能

生豆は、保管室から人の手を解せず空気搬送機で上部のパイプを伝って直接焙煎機へと送り込まれる。このクリーンなシステムが横浜ロースタリーの要である
コーヒーの品質維持に、異物や不良豆の除去は不可欠。その徹底した選別もこの焙煎所ならワンストップ。生豆の状態で1粒ずつ選別

焙煎後は色差選別機による一次選別。焙煎機での冷却後の異物や不良な焙煎豆を除去
その後ハンドソーティングによる二次選別。最終的に人の手で選別を行う
2台の焙煎機は、火元とシリンダーの距離がカスタムされ遠火でじっくり焙煎することができる。焙煎師いわく「堀口珈琲のクリーンな風味には欠かせない焙煎機です」
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Lightning 編集部
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