音好きならいつかは辿り着きたい究極の世界! ヴィンテージオーディオの世界。

ネットを通じた定額配信やさらには無料でも楽しめるなど、時代の変化と共に音楽の楽しみ方も変わってきたからこそ、真に「いい音」を楽しむならヴィンテージオーディオの世界を知るべし!

「サウンドピット」代表・坂口昌司さん

東名名古屋IC近くで新品、中古に加えてヴィンテージのハイエンドオーディオを扱う「サウンドピット」の代表。オーディオや音に対する造詣の深さと修理も手がける知識に愛好家からの信頼も厚い。

“音” そのものを楽しむ究極の趣味ワールド。

オーディオファンのなかでもさらにマニアックといえるヴィンテージオーディオ。当時の木材などの素材と真空管をはじめとした現行品にはないパーツで作られた音質は、月並みだがアナログならではの暖かい印象。音質は好みなのでどちらがいいというのはないが、現行品にはないレトロなデザインはインテリアとしても最高

今や音楽はネット配信が主流。また、スピーカーも小型化&音質も向上したことで、手軽に音楽を楽しむことが可能となった。

それでも十分事足りるが、より音にこだわる人ならば音源はデータではなくアナログレコードに、そして、最終的によりよい音にこだわれば行き着くのがヴィンテージオーディオの世界だ。

「最後は個人の好みなので正解はありませんが、個人的には最新の音楽は最新の装置で、古い音楽は古いオーディオで聞いた方がいい音が楽しめると思います」

と話すのは、名古屋市名東区でハイエンド&ヴィンテージオーディオを扱って約40年という「サウンドピット」の坂口昌司さん。

「昔の音楽は当然その時代のシステムをモニターとして使ってレコーディングしていますから。わかりやすい例を挙げるとビートルズ。今のスピーカーでは聞こえないような音も聞こえますよ」

実際に試聴させてもらったが、大音量で聴いてもストレスが全くなく、各パートの音がクリアなだけでなく、レコーディング当時の空気感まで感じられるかのよう。

「 “音を楽しむ” と書いて音楽ですから音そのものを楽しむヴィンテージオーディオの世界は、音楽の究極の楽しみともいえます」

入口ははスピーカーから揃えていくのがオススメ。

ご存知の人もいるだろうが、オーディオもハマればワンセットでクルマ1台どころか、家が一軒建つ世界が待っている。現行品だがペアで1億円を超えるスピーカーも発売されているほどだ。そんなハイレベルな世界。いざ足を踏み入れようとしたらどこから手を付ければいいのだろうか。

「音の出口で見た目にもわかりやすいスピーカーをおすすめしています」と、坂口さん。

もし、かつて使っていたオーディオセットがあれば、スピーカーだけ入手すれば、それだけでも音は大きく変わるはずだ。その後に、パワーアンプ、プリアンプ、プレイヤーを揃えれば完成。

ただ、ここもアンプの真空管やプレーヤーのトーンアーム、カートリッジ(針)などパーツごとに深い世界がある。それは別の機会に掘り下げるがまずスタートしたいとお考えの方には100万円程度で一式揃えられるという。

大量生産時代以前となる1960~’70年代が黄金期。ちょうどその年代の音楽が一番好きな人も多いはずだ。大音量もちろん、小さい音で聴いても音質の良さがわかるので、興味のある人は、まずはヴィンテージショップやジャズ喫茶などで「いい音」の気持ちよさを体感してみてほしい。

アメリカ系かイギリス系か。まずは好みの音を探る。

まずは自分好みの音を知っておく。基本はアメリカ系かイギリス系を中心とした欧州系。坂口さん曰くアメリカ系は「西と東ではまた違いますが特に西海岸サウンドはカラッと乾いた感じでロックやブルース向き」でイギリス系は「しっとりとしていてオーケストラやオペラとの相性抜群です」

アメリカ系

有名ブランドにJBL、マッキントッシュ、マランツ、ジェンセン、エレクトロボイス、アルテックなど。

イギリス&欧州系

有名ブランドにタンノイ、クォード、KEF、DECCA、ガラード、バウワースアンドウィルキンス、トーレンス、EMTなど。

スピーカー以外にもこだわるポイント多数!

音の好みが決まったまずはスピーカー。そして、アンプとレコードプレイヤーだが、アンプにもプリアンプとパワーアンプがあり、アンプに使う真空管一つとっても種類豊富。また、プレイヤーも本体だけでなくトーンアームや針(カートリッジ)など各パーツごとにいろんなメーカーが存在するなど、その奥の深さはハンパない。さらに、セットが置けていい音を出せる住環境も必要となる。こだわる人は専用のシアタールームを所有するなどハイエンドな世界だ。

市場価格を知る!

個体数の少なさや人気によってある程度価格は異なるものの、躯体の程度や音質、さらには修理がどれほどなされているかなどで価格はかなりバラつきがある。オークションや個人売買で安く入手したとしても、音がよくなければ意味がない。慣れていない人は試聴もできるヴィンテージショップに相談するのが吉。一式揃えるにはおよそ100万円が目処だそう。

JBL/Paragon

オーディオ好きには知られるJBLの名機パラゴン。1958年から発売されていて年代によっていくつか仕様があるが、こちらは60年代初頭の中期タイプユニット構成の前期モデル。スピーカー、ウーハー、ネットワークなど細部に渡りリフレッシュ済みの美品。試聴も可能。350万円

JENSEN/Imperial PR-100

ジェンセンが1954年に開発した大型3ウェイスピーカーシステムを搭載したインペリアルPR-100。軽くて低い重低音、この相反する形容を実感できる人気のスピーカー。ペア308万円

JENSEN/TYPE H

1927年創業のジェンセンが手がけた38㎝同軸2ウェイユニット「ジェンセンTYPE H」が入ったシステム。タンノイの原型になったという説もあり、こちらのモデルも希少でファンには人気。ペア63万8000円

JENSEN/Imperial G610

幻のユニットとも言われるジェンセンG610を搭載したジェンセンインペリアル。坂口さんをして「このシステムは入荷した時点でびっくりした数少ないひとつ」と言わしめた良品。ペア352万円

Electro Voice/ジョージアンⅣ

アメリカを代表するメーカーのひとつ、エレクトロボイスのジョージアンⅣ。クリプッシュホーン型のスピーカーシステム。左右の色褪せが若干異なるが必要以上の補修もされていないため程度は良好。ペア242万円

Electro Voice/The Patrician 103B

46cmウーハー入りのクリプッシュホーン型システム。展示ルームにはマホガニーカラーのモノが展示されていて、倉庫に保管されている。ペア440万円

TANNOY/Lockwood Mini Slim Monitor Red15

タンノイのモニターRED/15インチが搭載されたスピーカー。キャビネットは小さいもののかなりスケール感のある音が出るのが特徴。ビートルズもモニタースピーカーにロックウッドを使用していたと言われるなどプロにも信頼が厚い。ペア176万円

MARANTZ/8B K

マランツ社初のステレオパワーアンプとして1959年に発売されたモデル8の系統。近年もレプリカモデルが発売されるなど真空管アンプの名機として名高い。メンテ済み。試聴も可能。38万5000円

年とともに状態のいい名品は品薄傾向になるのは当然だが、近年の日本の景気や愛好家人口の縮小からこれまで日本にあった在庫も中国をはじめアジア諸国に流出しているという。新規参入者が増えてほしい。

【DATA】
サウンドピット
愛知県名古屋市名東区上社2-13
TEL052-775-7901
営業/10:00~18:00
休み/水・木曜
https://www.sound-pit.jp

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)

この記事を書いた人
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