ブラックカルチャーの香りを感じる、ネオアメリカンヴィンテージ。
吉祥寺にあるセレクトショップ、ジ・アパートメントは、’90年代のニューヨークのストリートの空気を色濃く感じさせる独自の空間。国内外で厳選されたアイテムからオリジナルのウエア、さらにリアルな’90s古着までが並んでいるが、すべてに共通するのは当時のブラックカルチャーの匂い。
「初めてアメリカのカルチャーに触れたのは、小学生のときにテレビのバラエティで見た『ダンス甲子園』です。このダンスで使われている音楽はなんだろうって。それでヒップホップを知り、ニューヨークのブラックカルチャーに興味を持ち始めました。とにかくアフリカンアメリカンのスタイルが格好良く見えたんです」
そう話すのは、オーナーの大橋高歩さん。アイテムのバイイングからオリジナルウエアの企画まで、ほぼ1人で担っているが、そうした審美眼は、もちろん自身のルーツが大きく影響している。’90年代に10代を過ごした大橋さんにとって、当時のニューヨークで流行していたファッションや音楽は、とても刺激的だったとか。
「10代後半からBボーイのカルチャーにどっぷり浸かり、当時のラッパーのスタイルを真似していました。ヒップホップの専門的なブランドも多かったけど、僕が興味あったのは、アメカジブランドのアイテム。特にスポーツウエアやアウトドアウエアを、ストリートっぽく着こなしていました」
折しもその頃の日本は、アメカジブーム全盛期。ヴィンテージのデニムやハイテクスニーカーがプレミア化して話題となっていたが、大橋さんはそうしたトレンドの文脈とはちょっと違う角度で、アメカジを通ってきた。
「あくまでブラックカルチャーの視点から見たアメカジです。ラッパーが高級感のあるカジュアルなアイテムを、スマートに着こなす姿が魅力的に見えたんです。その影響で、僕もちょっと背伸びして、ポロスポーツやティンバーランド、ザ・ノース・フェイスのベーシックなウエアばかり選んでいました。おかげでオトナになった今でも愛用できます。むしろ、最近になってやっと上手く着こなせるようになってきた気がする(笑)」
実際に現在もデイリーで活躍しているアイテムが多いが、20年の時を経て、ヴィンテージらしい風格を漂わせてきている。
「’90年代のアメカジのアイテムは、現地の工場で作られていた最後の世代になるんですよ。まだ細部の作り込みもしっかりしているし、本当にタフ。だから長く愛用できるし、着込むほど風合いも出てくるんですよね。
ちょっと前までレギュラー古着扱いだった’90年代のアイテムも、最近は“オールドニューエラ”や“オールドギャップ”とか言われて、再注目されてきています。それもやっぱりアメリカ製って部分が大きい。そういう意味では、この世代のアイテムが、最後のヴィンテージになるのかなって思います」
【DATA】
The Apartment
東京都武蔵野市吉祥寺本町 1-28-3 ジャルダン吉祥寺 106
TEL0422-27-5519
営業/12:00~20:00
休み/不定休
https://www.the-apartment.net
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)
Text/M.Kuwabara 桑原将嗣 Photo/T.Yadori 宿利泰蔵
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