実用品でありながら美術品としての風格も併せ持つ。ナイフのヴィンテージの世界とは?

  • 2023.04.01

狩猟、釣り、キャンプ、登山など、アウトドアの活動には欠かせない道具でありながら、その美しさから美術工芸品としても愛好者の多いナイフのヴィンテージの世界。ギアオタクならこれはハマるかも?

「アウトドアクラブ」代表・小泉宗一さん

1987年オープンの輸入販売店「アウトドアクラブ」代表。当初はアウトドア用品が中心だったが、現在はナイフを中心としたヴィンテージギアの専門店に。ショップもあるが基本アポイント制なのでまずはHPをチェック。自身の愛用品はスパイダルコのレディバグとランドールのM-1。

美術品・工芸品としてコレクターも数多く存在。

ヴィンテージナイフの数々。パーツの素材や刃の鋼材などは時代と共に進化を遂げるが基本的な形は昔から変わらないので、廃盤となったモデルはともかく、現在も発売されるモデルはマニアでないとヴィンテージとは見分けがつかないかも。それだけにマニア度の高い世界といえるが、モノにこだわる人にとっては奥深い世界だ

石器時代から使われていると言われるほど太古の昔から人類の暮らしに欠かせない道具、ナイフ。実用品としての側面がある一方で、ナイフ作家や量産メーカーのなかでもデザインにこだわって作られたモノなどは美術品・工芸品としての側面もあり、欧米を中心にコレクターや愛好家も数多い。歴史もあってコレクタブルなアイテムとなれば、当然、そこにはヴィンテージの世界が存在する。

だが、欧米に比べて規制も厳しく、またキャンプが普及したとはいえ、ナイフが身近でない日本ではかなりマニア度の高い世界だ。そんなニッチなヴィンテージナイフを約25年前から扱っているのが「アウトドアクラブ」だ。

「ギター好きな人が何十本と集めるのと同じです。その世界がわかってきてこだわりが強くなるほどに人と同じモノを持ちたくない、レアなモノが欲しい、歴史的に有名なモデルが欲しいとなるとヴィンテージにたどり着いていきます」と、代表の小泉宗一さん。

ただ、ナイフは『より切れる、錆びにくい』などを求めて常に進化を続けている。古くても普通に使えるが、切れ味や機能を求めれば現行品の方が優れているので、ガンガン使い込むというよりはスタイルを楽しみつつ適度に使うくらいがオススメといえそうだ。

用途や好みに応じてナイフの種類も多種多様。

ナイフと一口にいってもその楽しみ方は幅広いので分類と有名メーカーだけでも押さえておこう。

まず分類として折り畳めるフォールディングタイプか折り畳めない固定刃の2つに大別できる。さらに、用途に応じてハンティング(狩猟用)、キャンプ、釣り、登山、ミリタリー、タクティカル、アーミー(多徳)、バタフライ、ダイバーズ、キッチン、デスクなどが主なものとして挙げられる。自身の使い方や好みのタイプを知っておくのも重要だ。

そして、メーカーに関しては、歴史的にはイギリスやドイツが古いが、近代はナイフ需要が最も高いアメリカブランドが主流で、日本のメーカーも精度の高さから世界的には非常に評価が高い。有名なところでいえば、アメリカのバック、ガーバーが超定番でランドールが高級志向、ほかにケース、ソグ、アルマー、スパイダルコ、スミス&ウェッソンなどなど。日本だとGサカイ、モキなどが知られるところ。

「日本だと危ないイメージが先行しがちですがナイフは優れた道具です。道具とは相棒のようなもので、使っていくうちに愛着も湧くし大切に使いますよね。この奥深い世界と正しい使い方をぜひ知ってもらいです(小泉さん談)」

ここでヴィンテージ市場でも人気のナイフメーカーをみていこう。

バック

1902年創業。’64年に現在も販売されるモデル110フォールディングハンターを発表。革新的なロックブレードで世界的に大ブレイク。アウトドアナイフの代名詞

ガーバー

1939年創業。’66年に発表したMKⅡコンバットナイフがベトナム戦争で採用され地位を確立。品質、耐久性の高さから各国の群や警察などで正式採用されている

ランドール

1938年創業。創業時より鍛造で手づくりを貫く。切れ味には定評があり、スミソニアン博物館にランドールナイフが展示されるほど。アメリカンナイフの横綱

スパイダルコ

1978年創業。片手での開閉を可能にした刃のサムホールが特徴。’91年にスウェーデンとアメリカのエベレスト登頂隊に採用。登山家やアウトドア界で人気

バリソン

1980年創業。バタフライナイフで日本でも一世を風靡したことで記憶にある人も多いはず。現在はベンチメイドと改名しタクティカル系を中心に展開している

モキ

1907年岐阜県関市で創業。精度の高さから欧米のメーカーのOEMを手掛けた後、自社ブランドも設立。繊細な仕上げと抜群のフィット感で世界でも評価が高い

市場価格を知る!

ナイフ市場の中心地であるアメリカではヴィンテージ市場も確立されているが、市場の小さい日本ではナイフ専門店でもヴィンテージを扱っているところは数少ない。市場価格としては大きな値動きはないものの、昨今の円安の影響から全体的に価格が上昇傾向に。また、有名モデルだとプレミアム価格が付くので数十万円というものもあるが、安いものだと数千円から1万円代での入手も可能だ。

バック  110 フォールディングハンター1stバージョン2ndバリエーション

1965年製。名作110フォールディングハンターの最初期モデル。2ndバリエーションはブランド名はエッチング。ただでさえレアなのにこの極上コンディションは奇跡的。27万5000円

バック 110 フォールディングハンター 2ndバージョン1stバリエーション

1965 ~’66年製。刃の形状や細かいパーツの素材が変更された2ndバージョン。ブレード側面に刻印ロゴ。砥ぎ跡があるが刃は減っておらず状態はいい。13万円

バック 111 クラシック

1980 ~’81年製。110フォールディングハンターの特別モデル。ハンドルの刻印がエレガント。シース(ケース)もレザーカービングが施される。4万円

ランドール M14

このベトナムランドールは米国ではなくドイツのゾーリンゲン製。米国だけでの生産では間に合わなかったためゾーリンゲンで製作されたというレア物。30万円

ガーバー フォールディングスポーツマン2

1980年代製。ガーバーの名作のひとつ。スリムで軽量。ハンティングやキャンプで活躍間違いなし。ハンドルはシカの角。ミントコンディション。3万3000円

ガーバー ビッグハンターアーモハイド

1960年代後半製。オールドガーバーのなかで人気のアーモハイドシリーズ最大のモデル。大藪春彦の小説に数多く登場しハンター&キャンパーに人気。5万5000円

スパイダルコ ミリタリー(上)、エンデューラ エベレスト(下)

(上)1994年頃製。ブレードがギザギザなのはロープを切るため。またブレードのネック部分の下(ジョイント付近)が凹凸になっているのが最初期モデル。4万4000円、(下)1991年にエベレスト登頂に挑んだスウェーデンの遠征隊に採用され見事に登頂を遂げたことで世界的に注目されたモデル。刃にエベレストのマーク入り。1万5000円

スミス&ウェッソン #6060フォールディングハンター

1970年代。銃器で知られるスミス&ウェッソンのハンティングナイフ。現在は中国製となっているが、こちらはコレクターにも人気のアメリカ製。3万3000円

スミス&ウェッソン #6020 アウトドアズマン

1970年代製。S&W社人気モデルのひとつ。ハンドル内部が空洞になっていてキャップを外すと薬品や小物が収納できる。銃の箱と同じ色とデザインの箱付きの完品。5万5000円

バリソン #68

1980年製。知名度は高いがアメリカで販売&所持が禁止になった州があるほか、オーストラリアも販売中止になるなど市場から姿を消しつつあるバタフライナイフ。バリソン社が最初に作ったモデル。13万円

バリソン USAカスタム ウィーホーク

1980年代製。バリソン社初期のモデルでジョディ・サムソンのグラインド。美しいグラインドとシェイプ。バリソン(欧米ではバタフライナイフをバリソンと呼ぶ)は現在ベンチメードの登録商標。17万円

モキ ベスタ

1992年頃製。ハンドル部夜蝶貝のインレイが施されるほかパールのバックグラウンド(底)が立体感を演出し、ひとつの作品としても見どころがある。3万3000円

モキ MK-550AP

1992年頃製。ハンドルにアップルコーラルというサンゴを使った小ぶりながら高級感あふれる1本。3万6300円

アメリカに比べて日本は規制も厳しく愛好家が少ないうえに、近年の円安の影響、さらに若い世代の新規参入者も少ないため、シーンは縮小傾向だが、世界には熱狂的コレクターも多い。気に入ったものを見つけたら即購入した方が賢明だろう。

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年3月号 Vol.347」)

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