UKファッションのメッセージ性の強さに魅かれます。
クルマ一台分の車庫の中身は大量のレコードと音響機器、さっぱりとした仕事机とソファが置かれたガレージ。この空間のオーナーはDJやフードデリバリー配達員など様々な顔を持つ大村達郎さん。そして、ここに集うのは路上やクラブなどで意気投合した仲間たち。シンプルな空間だが、趣味を通じて親交を深める仲間が、言葉と音楽を使って有意義な時間を過ごすのには十分なのだろう。
「どれが表の顔で裏の顔っていう意識はなくて、全部誇りを持って好きなことをやっていたら、似たライフスタイルの仲間との出会いが増え、様々なサブカルチャーを持つ人間が共存するようになりました。ココは他ジャンルで活動する人間との交流や路上で得た経験を、何かしらの形で発信する基地のようなイメージです」
大村さんの愛用品として目立つのはUKカルチャーに紐づくアイテムだが、そこに共感するのには明確な理由があった。
「UKのストリートカルチャーに特に魅かれるのは、モッズにしてもスキンズにしても労働者のメッセージ性を強く感じるからです。その影響もあってか自分も言葉にこだわり、ミューラー(=運び屋)というプロジェクトを今年から始めました。表現の形に捉われず、プロダクツやイベントを通して自分が伝えたいメッセージを届ける活動をしていく予定です」
大村さんのフェイバリット5枚をピックアップ。
1.Wired / Jeff Beck
「ROCKを感じるJAZZサウンドが、ジェフ・ベックを好きになったきっかけ。追悼の意を込めて」
2.The Royal Scam / Steely dan
「お気に入りは“Kid Charlemagne” と“The Fez”。ラリー・カールトンのギターにスリルと哀愁を感じます」
3.Doc Severinsen / DJ Harvey
「トランペット奏者、Doc Severinsenの名曲をDJ Harveyがエディットした2010年の名作」
4.Street Life/ Randy Crawford
「ここぞという時のために忍ばせている1枚。UBERで初めて月収100万円を超えた後の一服中にランダムでこの曲が流れた時は不意に涙しました」
5.Powder blue tux / Container Zero
「Jamiroquaiの初期メンバーで結成されたSamuel Purdeyが名義を変えてリリースしたシングル。ブリージンな現代版AORディスコサウンド」
Mulerプロジェクト始動。
Movement of Deliver with Subculture(サブカルチャーを持ちあわせたデリバリーボーイのムーブメント)をコンセプトに、言葉と音楽を使ってメッセージを届ける大村さんのニュープロジェクト。A面ではミュージシャンや役者、アパレルデザイナーなど、自由に活動する傍でB面で配達員の顔を持つ男たちのコミュニティを牽引する。
Muler第一弾のイベントは2月26日に神奈川県の日吉で開催された音楽イベント『RIOT CLUB』。オリジナルバッジは非売品で路上で出会ったクールな配達員に配っていく予定だとか。インスタグラムアカウントにて、様々なクリエイターたちのプレイリストをまとめた“Music Muler” 企画も進行中だ。
最強の二輪デリバリー仕様。
相棒はHONDA ベンリィ110にYAMAHAギアの屋根とボックスを装備し、マットブラックでペイントした都会的なフードデリバリー仕様。「ピザ店のデリバリーバイクを塗装したらイケてるのでは?」という着想からスピードの弱点を克服。
雨や極寒の時期など、配達員が少なくなる時間が稼ぎ時。天候に左右されずオールマイティに走れるカスタムが大村さんの機動力をサポートする。
リアに搭載するボックスには2種類の保温保冷バッグを入れておくことで、あらゆるサイズのフードをスマートに収納することができる。
(出典/「Lightning2023年3月号 Vol.347」)
Text/YT.Kinpara 金原悠太 Photo/S.Sawada 澤田聖司 取材協力/ Muler Instagram:@muler.jp
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