自分だけの趣味嗜好が垣間見えるカッコいいライフスタイルを送る人たち、彼らはどんな空間で過ごしているのか。モノ作りに携わる人の中にはワークスペースに無頓着な人もいるが、自分自身のクリエイティビティを刺激するような空間を作り上げることがスタイルある作品を作り上げるための第一歩になるだろう。カスタムバイクショップ勤務、インテリア制作を経て、自らのブランドを立ち上げた滝川史也さんこそ、そんな空間で過ごすひとり。その生活空間を見せてもらった。

本当にカッコいいモノをつくるための、お気に入りだけを集めた空間。

名古屋に拠点を置くブラックスミスは主に鉄を使い、1900年代初頭のアメリカで見られるインダストリアルデザインに日本の伝統技法をミックスした作品を生み出す家具ブランド。
「元々、アンティークが好きで、でも、壊れやすいとか使いづらいとかストレスを感じていて、それを解消するために作り始めたので、売れそうだからとかじゃなくて、純粋に自分が『カッコいい』と思うものを作りたいんです」
そうモノ作りの原点を話す滝川さん。彼のファクトリーにお邪魔すると、作業場横にはホットロッドが鎮座し内装もレンガの壁で映画のセットのような雰囲気。そして、ショールームにもなっている2階には作品に混じって数々のヴィンテージ品が並べられている。

「23歳で渡米してカスタムバイクショップで修行しましたけど、向こうのビルダーって洋服も作業場もカッコいいんですよ。日本の職人って技術は高いけど、作業場も格好も気を使わない人が多い。見えないから関係ないんだけど、それじゃ本当にカッコいいモノってできないと思うんです。
作業場は多くの時間を過ごすし、カッコいいモノを作るならその空間はお気に入りのモノしか置きたくないし、作業服だって気に入ったモノしか着たくない。そういう職人が増えて、ああなりたいって思う若い人も増えたらいいですよね」





ファン垂涎のスペシャルなアイテムが並ぶショールーム。
商談で使用する2階ショールームはお気に入りのヴィンテージを中心に自身の作品も展示。滝川さんの好きな世界観を凝縮したスペースだ。
中央に見えるレディス用のライダースも実はスペシャルアイテムだったりと、ファンが見たら驚くようなアイテムもさりげなく並んでいる。
1920年代頃の仏インダストリアルのチェア。この実物をベースにしたのが「CH-1」
こちらは「FC-1」の元になった1920年代頃の仏ビエネーズ社の世界初の工業用折りたたみ椅子。
「売れそうなモノではなくて、ヴィンテージをベースに自分がカッコいいと思うモノを作っています。アパレルでいうと、レプリカブランドと同じような感じですよね」
(出典/「Lightning2023年3月号 Vol.347」)