手間暇と経年変化が生み出す終わりなきアート。盆栽の市場価値って?

  • 2023.04.21  2023.02.13

大自然の中にある迫力ある姿を小さな鉢の中で再現する盆栽。手間暇かけて “経年変化” してゆく姿は生きるアート作品と呼ぶに相応しい。我が国が誇るジャパニーズヴィンテージの極みの世界を覗いてみよう。

盆栽作家 小林國雄さん

家業の園芸家を継ぐために学ぶなか第七回日本盆栽作風展で内閣総理大臣賞を受賞した五葉松「奥の巨松」と出会ったことで1976年より盆栽作家の道へ。これまでに数々の賞を受賞。盆栽普及のために海外でも講演会を行うほか、これまでに国内外で100名を超える弟子を育てている盆栽界の重鎮。

敷居が高そうかと思いきや手軽に始めることも可能。

こちらの木は「ボケ」。幹の中央から立ち上がりと呼ばれる幹の下部に空洞がみられるが、これは実は根っこで「根上がり」と呼ばれる樹形。また、左の方に流れているので「左流れ」というスタイルで、向かって左側に余白を作り、小物を添えることでお互いの存在を引き立たせ合う効果もある。ちなみに樹齢は80年ほどでお値段は80万円。床の間も似合うがシルバーアクセサリーやアメリカンな雰囲気にもよく似合う(撮影協力「ファーストアローズ」https://www.first-arrows.com

ヴィンテージ好きの読者諸氏のなかには「盆栽」は気になるけど、敷居が高そうと二の足を踏んでいる人も多いのでは。そこで今回は「盆栽」の世界を知るべく、東京・江戸川区にある「春花園BONSAI美術館」の館長の神康文さんと盆栽作家の小林國雄さんに話を伺った。

「盆栽ってのは何十年という時間がかかります。古いモノだと私が盆栽を始めた50年くらい前のモノもあるし、なかには何百年というモノもあります」(小林さん)

気になる価格は小林さんのような作家が手がける大物は数十万は当たり前で数百万、数千万円なんていうモノもある。樹齢も古いモノだと推定600年を超えるモノも。

「そういうのは『山取り』といって、ある程度出来上がったモノを山で見つけてきて、そこから盆栽へと仕立てていくんです。そういう木を取る専門の人もいます」

ただ、これはあくまでも芸術作品レベルの話で、安く始めようと思えば、樹齢の若いモノや小ぶりのモノであれば数万円から1000円以下で始めることも可能。生きている盆栽はまさに「完成のない芸術」。経年変化好きならば老後も楽しめる趣味として、今から始めておくべし!

名品に見る樹木の種類と樹形。

盆栽は小林さん曰く「完成のない芸術」。それだけに正解もない。最終的には自分の好みだが、とりあえず見方について基本的なことだけは抑えておこう。

木の種類は主に「常緑」「雑木」「花物」「実物」の4種類。そして樹形は幹の形や本数、形状などから「模様木」「直幹」「斜幹」「多幹」「株立ち」「懸崖」「吹き流し」「根上がり」「文人木」「石付き」などに分類される。ただ、「意外と手間がかかる」ことも知っておいてほしい。

「主に『3日に1度の水やり』、日光に当てるため『2週間に1度場所入れ替え』、『年に2回の消毒』、『3年に1度は植え替え』があります」(館長・神さん)

ほかにも、剪定や追肥、針金かけといった作業も入ってくる。と、これだけ聞くと敷居が高しそうだが、若木なら数百円で買えるし、小林さんも「僕もたくさん失敗してきました。だからいい作品も作れるようになるんです」とうように、いきなり立派なモノを買うのが気がひける人は、手頃なモノから挑戦するのがオススメ。

手をかけて仕立てるのは、デニムや革ジャンを育てることと通じるはずだ。また、昭和中期と比べると盆栽人口は激減しているとのことなので、意外と今は始めどきと言えるかもしれない。

種類:常緑(黒松)/樹形:直幹 樹齢:推定300年

盆栽の樹としてポピュラーな黒松で「老鶴(ロウカク)」という名を持つ。幹が根本から真っ直ぐ立ち上がった樹形。真ん中は上部まで幹が見えながら周りは緑に囲まれた均整の取れた形。3000万円

種類:常緑(真柏)/樹形:文人木 樹齢:推定150年

江戸時代の文人墨客が愛したことから文人木とよばれる樹形の真柏(シンパク)。白い部分は表皮が剥がれて白骨化した状態で「ジン」や「サバ幹」と呼ばれる。若いうちに人工的に作るテクも。120万円

種類:雑木(岩四手)/樹形:双幹 樹齢:推定200年以上

落葉する雑木も季節ごとに見応えがある。こちらは立ち上がりから幹が二つに分かれた双幹樹形の岩四手(イワシデ)。岩のような肌とうねる幹と奥行きを感じさせる枝振りが美しい。1000万円

種類:雑木(アメリカヅタ)/樹形:懸崖 樹齢:推定50年

アメリカ原産のツタの木だが形が作りやすく盆栽としても人気。鉢の下に垂れた枝が崖からぶら下がったような形から懸崖(ケンガイ)と呼ばれる樹形で、若木のうちから仕立てて作られる。30万円

種類:雑木(ブナ)/樹形:模様木 樹齢:推定80年

自然の中では巨木になるブナの迫力をそのまま盆の上に再現した作品。樹形は葉が多くて醜いが幹や枝が前後左右に模様のようにうねっている「模様木」。落葉樹なので四季折々に楽しめる。150万円

種類:実物(姉柿)/樹形:株立ち 樹齢:推定40年

名の通り果実をつける「実物」。こちらは小さいながらもたくさん柿が実っている。樹形は株元から3本以上の幹が立つ「株立ち」。花物や実物は変化も大きく素人でも楽しみやすいかも。12万円

市場価格を知る!

盆栽はアートと同じなので価格はあってないようなもの。基本的に樹齢が古く、樹形が美しく、そして作家が手がけたものとなると前ページのように100万円~数千万円なんて値が付くものもある。が、高価な逸品を入手したところで手入れを怠ると死んでしまうので、まずは数万円以内で買える手頃な価格のものか、数百~数千円で買える安価な苗木を入手して自らの手で育てていくのがオススメだ。

長寿梅

梅と名が付くがバラ科のクサボケの品種。春に美しい花をつけ、秋には果実が黄色く熟す。枝が細かく分岐するのも特徴。3万円

サツキ

春先に美しい花を咲かせるサツキ。こちらの樹形は何本か分かれる株立ちだが、いろんな樹形が楽しめるのもサツキの特徴。7万円

赤松

柔らかく繊細な姿は男松と称される黒松に対して女松とも呼ばれる。針金で仕立て済みのため動きのある形になっている。1000円

カエデ

四季を通じて変化が楽しめる落葉樹。すでに幹がうねるように仕立てられているのでキープしてもここから変化させてもよし。ASK

ヒノキ

強風に晒されたように横向きになった吹き流しのヒノキ。値上がりや一部が枯れて表皮が剥がれたジンなど見どころ多数。5万円

デショウジョウ

紅葉のなかでも人気のあるデショウジョウモミジ。小ぶりながら幹の太さやバランスのいい枝振りなどもすでに堂々たる姿。25万円

今や海外でも「BONSAI」で通じるほどポピュラーな盆栽だが、国内の盆栽人口は減少していて、名品も多数海外に流出している。高齢化が進む業界だけに日本文化継承のためにも始めてみては?

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年1月号 Vol.345」)

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