盆栽作家 小林國雄さん
家業の園芸家を継ぐために学ぶなか第七回日本盆栽作風展で内閣総理大臣賞を受賞した五葉松「奥の巨松」と出会ったことで1976年より盆栽作家の道へ。これまでに数々の賞を受賞。盆栽普及のために海外でも講演会を行うほか、これまでに国内外で100名を超える弟子を育てている盆栽界の重鎮。
敷居が高そうかと思いきや手軽に始めることも可能。
ヴィンテージ好きの読者諸氏のなかには「盆栽」は気になるけど、敷居が高そうと二の足を踏んでいる人も多いのでは。そこで今回は「盆栽」の世界を知るべく、東京・江戸川区にある「春花園BONSAI美術館」の館長の神康文さんと盆栽作家の小林國雄さんに話を伺った。
「盆栽ってのは何十年という時間がかかります。古いモノだと私が盆栽を始めた50年くらい前のモノもあるし、なかには何百年というモノもあります」(小林さん)
気になる価格は小林さんのような作家が手がける大物は数十万は当たり前で数百万、数千万円なんていうモノもある。樹齢も古いモノだと推定600年を超えるモノも。
「そういうのは『山取り』といって、ある程度出来上がったモノを山で見つけてきて、そこから盆栽へと仕立てていくんです。そういう木を取る専門の人もいます」
ただ、これはあくまでも芸術作品レベルの話で、安く始めようと思えば、樹齢の若いモノや小ぶりのモノであれば数万円から1000円以下で始めることも可能。生きている盆栽はまさに「完成のない芸術」。経年変化好きならば老後も楽しめる趣味として、今から始めておくべし!
名品に見る樹木の種類と樹形。
盆栽は小林さん曰く「完成のない芸術」。それだけに正解もない。最終的には自分の好みだが、とりあえず見方について基本的なことだけは抑えておこう。
木の種類は主に「常緑」「雑木」「花物」「実物」の4種類。そして樹形は幹の形や本数、形状などから「模様木」「直幹」「斜幹」「多幹」「株立ち」「懸崖」「吹き流し」「根上がり」「文人木」「石付き」などに分類される。ただ、「意外と手間がかかる」ことも知っておいてほしい。
「主に『3日に1度の水やり』、日光に当てるため『2週間に1度場所入れ替え』、『年に2回の消毒』、『3年に1度は植え替え』があります」(館長・神さん)
ほかにも、剪定や追肥、針金かけといった作業も入ってくる。と、これだけ聞くと敷居が高しそうだが、若木なら数百円で買えるし、小林さんも「僕もたくさん失敗してきました。だからいい作品も作れるようになるんです」とうように、いきなり立派なモノを買うのが気がひける人は、手頃なモノから挑戦するのがオススメ。
手をかけて仕立てるのは、デニムや革ジャンを育てることと通じるはずだ。また、昭和中期と比べると盆栽人口は激減しているとのことなので、意外と今は始めどきと言えるかもしれない。
種類:常緑(黒松)/樹形:直幹 樹齢:推定300年
種類:常緑(真柏)/樹形:文人木 樹齢:推定150年
種類:雑木(岩四手)/樹形:双幹 樹齢:推定200年以上
種類:雑木(アメリカヅタ)/樹形:懸崖 樹齢:推定50年
種類:雑木(ブナ)/樹形:模様木 樹齢:推定80年
種類:実物(姉柿)/樹形:株立ち 樹齢:推定40年
市場価格を知る!
盆栽はアートと同じなので価格はあってないようなもの。基本的に樹齢が古く、樹形が美しく、そして作家が手がけたものとなると前ページのように100万円~数千万円なんて値が付くものもある。が、高価な逸品を入手したところで手入れを怠ると死んでしまうので、まずは数万円以内で買える手頃な価格のものか、数百~数千円で買える安価な苗木を入手して自らの手で育てていくのがオススメだ。
長寿梅
サツキ
赤松
カエデ
ヒノキ
デショウジョウ
◆
今や海外でも「BONSAI」で通じるほどポピュラーな盆栽だが、国内の盆栽人口は減少していて、名品も多数海外に流出している。高齢化が進む業界だけに日本文化継承のためにも始めてみては?
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年1月号 Vol.345」)
Text/M.Terano 寺野正樹 Photo/H.Yoda 与田裕章 S.Kai 甲斐俊一郎 取材協力/春花園BONSAI 美術館 http://www.kunio-kobayashi.com
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