ファッションジャンルの一つとして定着しつつある。
ミュージシャンやバンドがモチーフのミュージックT(シャツ)。バンドTやロックTとも呼ばれるが、今回はバンドだけでなくソロのミュージシャンやまたロック以外のジャンルも取り上げることから「ミュージックT」という呼称で紹介することにする。
ミュージックTといえば、ミュージシャンの顔写真やイラスト、アルバムデザインなどが思いつくが、それ以外にもツアー会場でのみ発売されていた限定モノや、デザイナーによるアート作品のようなものまで実に多岐に渡る。
そのバンドやミュージシャンが好きだから着るというのは旧くから定番だが、近年では若い世代の間で特にそのミュージシャンのファンでなくとも、デザインがクールだからという理由で着用するなど、今やミュージックTはファッションアイテムの1ジャンルとして確固たる地位を確立している。
当然歴史もあるだけにヴィンテージシーンも存在する。なかには10万円以上で取引されるお宝アイテムや、ファンが喜ぶストーリーが秘められているモノも多い。
今回はオーナーが日本有数のTシャツ愛好家でもある名古屋の古着店「フィート」でミュージックTのヴィンテージ市場の動向や人気の傾向などを伺ってきた。
年代の新旧だけでなくアート性もポイント。
まずはミュージックTにおける最近の人気の傾向を伺った。
「ロック系は旧くから定番的に人気がありますが、現在でいうとニルヴァーナをはじめとした’90年代から2000年代のグランジ系やエレクトロ系とかですね。あと、最近日本ではジャズ系に注目が集まっています」(フィートスタッフの吉成さん)
年代ではミュージックTが出回り始めたのは’60年代頃からだが、現在市場で人気なのがボディの状態もよく、デザイン性も高まってきた’90〜2000年代が中心。
「年代も旧ければ高いワケでもなく、年代が新しくても生産数も少なくアート性が高いモノであれば希少価値がつきます。円安もあって今後ますます価格は高くなっていきそうです」(吉成さん)
また、ミュージックTでは本物のデザインを真似て作られるブートレグ品(偽物)も多く見られるのでオークションや個人売買で購入する場合は注意が必要だ。
よく掘って見てみると、近年日本で注目度が高まるジャズをはじめ2000年代以降のエレクトロやオルタナ系もアート性の高いモノが多く、音楽という枠に留まらないミュージックTの世界。ヴィンテージ好きで音楽好きの人には要注目のジャンルといえそうだ。
音楽のジャンルが違えばデザインの個性も異なる?
ひと口にミュージックTといってもバリエーションの幅はハンパないので、ここでは音楽のジャンルでその特徴を分類する。また、デザイン的に「アーティストの姿」「ジャケットデザイン」「ロゴマーク」「ツアー限定」「アート」などに分類することもできる。
ロック・ハードロック
ミュージックTといえば往年のロック・ハードロックが定番。ファンでなくてもロゴマークは知っているという人も多いはず。有名なバンドのモノはブートレグ(非正規品)も多いのでオークションでレアモノを買うときは注意が必要。
ジャズ
全体からすれば主だった動きは少ないが、現在日本において注目度が高まっているのがジャズ系。特に’90年代は「gear inc」という会社が主なアーティストを手がけている。黒をベースとしたシックなデザインが特徴。狙い目かも。
グランジ・オルタナティブ
ミュージックTブームの火付け役と言われるのが、ライブ中に仲間のバンドTを着ていたニルヴァーナのカート・コヴァーン。音楽的にも再注目が集まっているだけに’90年代シーンのミュージシャンのアイテムは価格も高騰中だ。
ヒップホップ
派手なグラフティやアーティストをあしらったデザインが多いヒップホップ系も1990年代のオールドスクールが再燃しているだけに当時活躍していたアーティストのモノを中心に人気も高い。オーバーサイズが多いのも特徴のひとつ。
エレクトロニカ
コアな層を中心に注目を集めているのがテクノロックやダンスミュージックなどのエレクトロニカ系。全体として数は多くないものの、デザインがシンプルで洗練されたものが多くオシャレアイテムとしても注目を集めている。
市場価格を知る!
大ブレイクはないものの1990年代以降アメリカやイギリスでもファッションアイテムとして認知されてきたことで価格も上昇傾向に。正規の古着店などでは数千円から1万円と普通の古着よりも若干高い価格帯というところ。だが、正規品で生産数の少ないモノやアーティストが手がけたモノなどは1枚数万円から10万円を超えることも。
ロック
ジャズ
グランジ
オルタナティブ
ヒップホップ
エレクトロニカ
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インテリアとして飾っても絵になるミュージックTは、まさに “着られるアート作品”だ。しかしさらに円安が進むことで価格の上昇も懸念されるところ。気になる人は今のうちにチェックしておいた方がいいかもしれない。
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
【問い合わせ】
Feeet
https://www.feeetshop.net
(出典/「Lightning2022年9月号 Vol.341」)
Text/M.Terano 寺野正樹 Photo/M.Kato 加藤政憲