音楽の楽しみ方を広げてくれるアート作品、ミュージックTシャツのヴィンテージ市場の動向は?

  • 2022.10.10

ミュージシャンの顔写真やアルバムをモチーフとしたミュージックTは、Tシャツのなかでも独自のジャンルとして旧くから根強い人気を誇っている。そんなミュージックTのヴィンテージ市場の動向をチェックしていこう。

ファッションジャンルの一つとして定着しつつある。

それぞれのジャンルやミュージシャンの個性に合わせてデザインの幅も広いミュージックTは、自分の好きなミュージシャンのファンであることをアピールするというだけでなく、ひとつのアート作品としてコレクトする人も多い。生産数の少ない希少なモノや、有名アーティストがデザインした作品などは高値で取引されている。

ミュージシャンやバンドがモチーフのミュージックT(シャツ)。バンドTやロックTとも呼ばれるが、今回はバンドだけでなくソロのミュージシャンやまたロック以外のジャンルも取り上げることから「ミュージックT」という呼称で紹介することにする。

ミュージックTといえば、ミュージシャンの顔写真やイラスト、アルバムデザインなどが思いつくが、それ以外にもツアー会場でのみ発売されていた限定モノや、デザイナーによるアート作品のようなものまで実に多岐に渡る。

そのバンドやミュージシャンが好きだから着るというのは旧くから定番だが、近年では若い世代の間で特にそのミュージシャンのファンでなくとも、デザインがクールだからという理由で着用するなど、今やミュージックTはファッションアイテムの1ジャンルとして確固たる地位を確立している。

当然歴史もあるだけにヴィンテージシーンも存在する。なかには10万円以上で取引されるお宝アイテムや、ファンが喜ぶストーリーが秘められているモノも多い。

今回はオーナーが日本有数のTシャツ愛好家でもある名古屋の古着店「フィート」でミュージックTのヴィンテージ市場の動向や人気の傾向などを伺ってきた。

年代の新旧だけでなくアート性もポイント。

名古屋のカルチャータウン、大須に3店舗を構える「Feeet」。店舗ごとに異なるコンセプトを掲げ、それぞれに個性的なヴィンテージアイテムを揃えている。9月には周年イベントでレアなミュージックTが大量放出される予定。https://www.feeetshop.net

まずはミュージックTにおける最近の人気の傾向を伺った。

「ロック系は旧くから定番的に人気がありますが、現在でいうとニルヴァーナをはじめとした’90年代から2000年代のグランジ系やエレクトロ系とかですね。あと、最近日本ではジャズ系に注目が集まっています」(フィートスタッフの吉成さん)

年代ではミュージックTが出回り始めたのは’60年代頃からだが、現在市場で人気なのがボディの状態もよく、デザイン性も高まってきた’90〜2000年代が中心。

「年代も旧ければ高いワケでもなく、年代が新しくても生産数も少なくアート性が高いモノであれば希少価値がつきます。円安もあって今後ますます価格は高くなっていきそうです」(吉成さん)

また、ミュージックTでは本物のデザインを真似て作られるブートレグ品(偽物)も多く見られるのでオークションや個人売買で購入する場合は注意が必要だ。

よく掘って見てみると、近年日本で注目度が高まるジャズをはじめ2000年代以降のエレクトロやオルタナ系もアート性の高いモノが多く、音楽という枠に留まらないミュージックTの世界。ヴィンテージ好きで音楽好きの人には要注目のジャンルといえそうだ。

音楽のジャンルが違えばデザインの個性も異なる?

ひと口にミュージックTといってもバリエーションの幅はハンパないので、ここでは音楽のジャンルでその特徴を分類する。また、デザイン的に「アーティストの姿」「ジャケットデザイン」「ロゴマーク」「ツアー限定」「アート」などに分類することもできる。

ロック・ハードロック

ミュージックTといえば往年のロック・ハードロックが定番。ファンでなくてもロゴマークは知っているという人も多いはず。有名なバンドのモノはブートレグ(非正規品)も多いのでオークションでレアモノを買うときは注意が必要。

ジャズ

全体からすれば主だった動きは少ないが、現在日本において注目度が高まっているのがジャズ系。特に’90年代は「gear inc」という会社が主なアーティストを手がけている。黒をベースとしたシックなデザインが特徴。狙い目かも。

グランジ・オルタナティブ

ミュージックTブームの火付け役と言われるのが、ライブ中に仲間のバンドTを着ていたニルヴァーナのカート・コヴァーン。音楽的にも再注目が集まっているだけに’90年代シーンのミュージシャンのアイテムは価格も高騰中だ。

ヒップホップ

派手なグラフティやアーティストをあしらったデザインが多いヒップホップ系も1990年代のオールドスクールが再燃しているだけに当時活躍していたアーティストのモノを中心に人気も高い。オーバーサイズが多いのも特徴のひとつ。

エレクトロニカ

コアな層を中心に注目を集めているのがテクノロックやダンスミュージックなどのエレクトロニカ系。全体として数は多くないものの、デザインがシンプルで洗練されたものが多くオシャレアイテムとしても注目を集めている。

市場価格を知る!

大ブレイクはないものの1990年代以降アメリカやイギリスでもファッションアイテムとして認知されてきたことで価格も上昇傾向に。正規の古着店などでは数千円から1万円と普通の古着よりも若干高い価格帯というところ。だが、正規品で生産数の少ないモノやアーティストが手がけたモノなどは1枚数万円から10万円を超えることも。

ロック

KISS|キッスの87 年のアルバム「CRAZY NIGHTS」のリリースに伴った” 力” ツアーTシャツ。インパクト大の「力」という漢字がある通りこの時は来日も果たしている。今だに探しているコアなファンも多い1枚。背面にもプリントが施されている。1万7490円
THE GRATEFUL DEAD|ヒッピー文化を代表するグレイトフルデッドはロックT文化の立役者ともいえるほどTシャツの種類も豊富。こちらは「Europe’72」でも使用されたアイスクリームキッド。マウス&ケリーという有名アーティストの作品。4万3890円
PINK FLOYD|ピンクフロイドといえばプリズムのイラストが有名だが、こちらは1987年に発売された「A Momentary Lapse Reason」のワールドツアーT。過去のアルバムを多数組み合わせたデザインでポップな色使いが’80年代っぽい。3万2890円
GUNS N’ ROSES|未だに現役で活躍するガンズ・アンド・ローゼズの’90年代の1枚。ブラックのボディに前面のみならず背面までぐるりと1周スカルがあしらわれたインパクト大のデザイン。ボディはバンド系では有名なバルズアウト。2万8490円

ジャズ

Miles Davis|ジャズの巨匠マイルス・デイビスの上半身を大胆にあしらった1枚。オフィシャルのコピーライト入り。立体感のあるフォトプリントでモノクロベースながらトランペットだけ赤で際立たせたデザイン。目力半端なし! 3万2890円
Miles Davis|こちらもマイルス・デイビスのものだが、こちらは’90年代にジャズミュージシャンのマーチャンダイズを手がけたGear Inc.のもの。黒のボディにモノクロのプリントというのがGearのデザインの特徴。サイズはXXL。3万2890円

グランジ

KURT COBAIN|‘90年代を席巻しグランジロックというジャンルを確立した伝説のバンドニルヴァーナのフロントマンで、絶頂期の1994年に自ら命を絶ったカート・コヴァーンを追悼するデザイン。探しているコアなファンも多い。’90年代。5万4890円

オルタナティブ

BJORK|ジャンルにとらわれない独特の世界観で人気のアイスランド出身のシンガー・ビョークのロゴマークをあしらった1枚。ビョークのTシャツも非常に珍しい。こちらは保存状態も良好なレアモノ。’90年代USA製。14万800円
GREENDAY|ポップなパンクロックで一世を風靡したグリーンデイが2000年にリリースした6枚目となるアルバム「マイノリティ」の販促用Tシャツ。状態もよく価格もリーズナブル。サイズもMなので実際に着用して楽しむには最適。1万890円

ヒップホップ

2PAC|ヒップホップのレジェンド2PACが出演&サントラを手がけた’93年のバスケ映画「Above the RIm」のTシャツ。転写プリントされたポスターライクなプリントもクール。’90年代USA製。3万2890円
BEASTIE BOYS|白人ヒップホップグループの先駆者的存在として世界的にヒットしたビースティボーイズが1985年にリリースした12inchシングル「She’ On It」のデザインをプリント。’90 年代USA 製。1万7490円

エレクトロニカ

prodigy|1990年結成、それまで相対するテクノとロックを融合させた先駆者として人気のプロディジーの’90年代ボディ。人気の割にはマーチャンダイジングが市場に出回ることがない貴重な1枚。3万2890円
FATBOY SLIM|ビッグビートという新しいジャンルを切り開いて世界的にブレイクしたファットボーイスリムの’96年リリース「BETTER LIVING THROUGH CHEMISTRY」のプロモ用というレアな1枚。3万2890円

インテリアとして飾っても絵になるミュージックTは、まさに “着られるアート作品”だ。しかしさらに円安が進むことで価格の上昇も懸念されるところ。気になる人は今のうちにチェックしておいた方がいいかもしれない。

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

【問い合わせ】
Feeet 
https://www.feeetshop.net

(出典/「Lightning2022年9月号 Vol.341」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

Lightning, CLUTCH Magazine, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

ランボルギーニ三浦

Lightning

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

杉村 貴行

2nd(セカンド)

ブランドディレクター

杉村 貴行

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部