音楽史に革命をもたらした数々の名機を生んだ名門、ギブソンの現在の市場価値は?

  • 2023.02.21  2022.06.08

ギブソン。ギターを弾く人ならずとも、一度はその名を聞いたことがあるはずだ。時を超えて世界的なミュージシャンも魅了し続けてきた名門ブランドの歴史的名品をはじめ、世界にもコレクターが多いヴィンテージ市場を覗いてみよう。

「ナンシーギター」代表・岸田邦雄さん

東京・渋谷と名古屋に実店舗があるヴィンテージギターの専門店「ナンシーギター」の代表。’80年代よりヴィンテージギターの魅力にハマり’92年に創業。世界の名だたるミュージシャンとも親交があるだけなく、自身もプロのミュージシャンとしても活躍。レコーディングやライブでは惜しみなくお宝ヴィンテージギターが登場する。https://www.nancy-g.com

世界のスーパースターたちをも魅了したデザインとサウンド。

左が1958年製のレスポールゴールドトップ、右は’68年に再生産されたレスポール。どちらもなかなかお目にかかれない激レアモデル

ジョン・レノン、デュアン・オールマン、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジなど音楽史に名を残すミュージシャンに愛されてきたギターの名門・ギブソン。その歴史は古く、創業は1902年。当初はアコースティックギターを制作していたが、1936年に初のエレキギターを発売。その後、ジャズギタリストのレス・ポールと共同でエレキギターを開発。こうして1952年に生まれたのが「レスポール」だ。

独特のフォルムと好きな人なら聴けば一発でわかる特徴的な骨太サウンドで、音楽史に残るエポックメイキングな1本となった。ほかにもSG、ES335、ファイヤーバード、フライングV、アコースティックに至るまで多数の名機を生み出してきた。歴史も長く名作も多数あるだけに、プロアマ問わずヴィンテージのマニアも多く、古くからヴィンテージ市場も確立されている。

オールマン・ブラザース・バンドのデュアン・オールマンはSGを愛用し、スライドギターの名手として未だに根強いファンも多い

国内にもヴィンテージ専門に扱うショップは多数あるが、なかでも1988年よりヴィンテージを専門に扱ってきた老舗の東「ナンシーギター」(東京・渋谷、名古屋に店舗あり)のオーナーで、ヴィンテージギターのコレクターで、かつ御歳69歳の現役のミュージシャンである岸田邦雄さんにヴィンテージシーンを伺った。

ジョン・レノンとセッションするクリーム時代のエリック・クラプトン。クラプトンがこの写真で弾いているのは後に紹介する「1964 ES-335TD」。ジョンはギブソンのアコギを使用していた。写真はエピフォン・カジノ

近年は、米英日本に加えてアジア圏もマーケットに参入、音質の良さにこだわるなら’65年製造のモデルまで。

ナンシーギターに置かれたギブソンのスーパーヴィンテージの数々。これらはほぼ全部がオリジナルだが、最近はオリジナル品は品薄で後に発売されたリイシューモデルも高い値で取引されている。リイシューモデルや現行品もいい音だが、聴き比べ・弾き比べをしてみると、やはり圧倒的にオリジナルの方が豊潤な音色。いい音を求めると最後はここにたどり着くというのも納得だ

「今は’80年代もヴィンテージと言ったりしますが、ギブソンの場合、本当ならヴィンテージとは65 年以前のモノを指すんですよ」

その理由のひとつに「ビートルズ」があるという。

「ビートルズが世界的に売れた時、ジョン・レノンはリッケンバッカーというブランドのギターを弾いていましたが、リッケンバッカーは増産しなかった。そこで別で使っていたギブソンにも注目が集まった。ギブソンは増産したんだけど、そこから音質が変わっちゃったんだよね」

30周年を迎えるナンシーギターの名前は海外にも轟いており、オールマン・ブラザーズ・バンド、エリック・クラプトン、ボズ・スキャッグスなど世界的なミュージシャンも来日時に訪れている。こちらは旧店舗時代に壁に書かれたサイン部分を保存したもの

特にレスポールに関しては’60年で一旦生産が終了してしまうこともあり、’57~’60年製造モデルが史上最高と言われている。ちなみに、現存数も少ない今だと、この年代で保管状態が良ければ1000万円は下らないとも。

「この年代はもちろんずっと価格は上がり続けています。今では後年に出たリイシューや限定モデルも価格は上がっているという状況ですね。でもね、やっぱり弾くとわかりますよ。単に古いからいいというのではないんです。音にこだわっていくと最後はヴィンテージにたどり着いちゃうんですよ」

岸田さんは2002年よりプロのミュージシャンとして活躍していて、9枚のアルバムをリリース。どれも極上のヴィンテージギターサウンドが楽しめる
ナンシーが取り扱ってきたヴィンテージレスポールの写真集「NancySoundToneMan」。見て感じて楽しむヴィジュアルブック。通販も可能。7333円

市場価格を知る!

ギブソンでダントツ人気なのがレスポール。1952 ~’60年製造のなかでも’57 ~’60年が最高。その後1968年に復活し’71年までの3年間も人気が高く、数百万円で取引されることも。他に人気のES335も人気の年代だと数百万円、SGで数十~百万円台あたり。最近では後年に作られたリイシューや限定モデルも価格が高騰しているという。逆に’40年代以前の旧いアコギの方が実用性は低いが狙い目か。

Les Paul

1958年製。レスポールの “ゴールデンエラ”といわれる1957 ~’60年製のものは状態によっては1000万円を超えることもあるほど。こちらのゴールドトップは1958年製の本物。市場価格は400 ~ 600万 円程度。当時ですら数百本しか作られていないため現存数は極 めて少なく、もはや博物館クラスのスーパーヴィンテージ。ちなみに聴き比べると音の良さは歴然
1968年製。1960年に製造中止になったレスポール。その後スタイルをSGに 変えてしまったが、人気ギタリストがこぞって愛用したため1968年に復活。特に’68年製造モデルはクオリティが高く、市場価格も250万円以上となっている。近年ではこの時代のリイシューも出ているが、そちらもハイクオリティなものは現在価格が高騰気味

SG Standard

1967年製。1961年から製造が始まったSG。’66年後期にピックガードがラージタイプに変更された後のもの。ソリッドギター発売時から続いていたワンピース材で製作されたマホガニーネックの最終モデル。翌年からはスリーピースでの製作に変更される。市場価格は80~100万円程度

2002 Gary Rossington Les Paul Standard Murphy Aged

2014年製。音楽史にも重要なサザンロックのレジェンドであるゲイリー・ロッシントン(レイナード・スキナード)が長年愛用した1959年製のレスポール・スタンダードの再現モデル。最近のリイシューだがクオリティも高く市場価格は120~200万円

ES-335TD

1958年製。セミアコースティックギターであるES-335TD発売初年度となる’58年製。マウスイヤーといわれるカッタウェイの形状、サンバーストカラーが非常に美しい。市場価格は500万円以上という超プレミアムヴィンテージモデル
1964年製。1958年に発表されたセミアコースティックギター。エリック・クラプトンが長年に渡り愛用していたことでファンには知られる1964年製のES-335。まだシャープなホーンカッタウェイになっていない。チェリーの色合いも美しい。市場価格200~300万円程度

Style O

1915年製。1908年にギブソンは新しいアーチトップスタイルOギターをリリース。非常に美しいカッタウェイのフォルムはおそらくフィレンツェスタイルのマンドリンの影響から。インレイ装飾で施されたヘッドのロゴが「The Giblson」となっている。エリック・クラプトンも同モデルを使用する。市場価格80~100万円

L-3

1920~29年製。1900年代初頭のギブソン創業当時から作られていた最古のモデルのひとつ。ラウンドホールスタイルの小型アーチトップギター。アーチトップと背面のアーチバックは平面ではなく立体的な曲線を描いている。厚い木材から削り出されたという現代ではなし得ない贅沢な作り。当時のギブソンのレベルの高さを物語っている。市場価格50~80万円

EB-2D

ES-335と同じボディを採用したベース。1958年から発売されたが生産数が多くなかったようで美品は意外とレア。こちらは2ピックアップを搭載し、より幅広い音作りに対応する。市場価格35~45万円

これまでギブソンのヴィンテージの主なマーケットは米英日本だったが、近年はアジア諸国もマーケットに参入してきたことに加え、マニアが手放さないこともあって、価格も高等気味で品薄傾向にあるようだ。簡単に手を出せる価格帯ではないが、気になっているのであれば早めに手に入れた方がいいのかもしれない。

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(Lightning2022年4月号 Vol.336)

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