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バブル崩壊後も続いた円高輸入バブル。
日本経済を振り返ってみると、ちょうどライトニング創刊直前の’92年にバブル景気は崩壊する。ところが株価は急降下したものの、庶民が実態を伴って不景気を感じるまでにはブランクがあった。合わせて円高ドル安は続いており、景気が下降気味の世の中に反して、アメリカ車の輸入ビジネスは、「円高輸入バブル」が依然として続いていた。ちなみに円高のピークは’95年の4月、1ドル=79円75銭という当時の史上最高値を記録。ライトニングは、そんな激動の最中、’94年に創刊されている。
この時代、’80年代に主流だったマッスルカーやスポーツカーは徐々に減少し、変わって増えてきたのが、当時数多く輸入されたシボレー・アストロやダッジ・ラムなどのバン、シボレー・カプリスやビュイック・リーガルなどのステーションワゴン、シボレー・C1500などのピックアップといったクルマたちだった。
それまで「クルマ好きだけが乗る」というアメリカ車の立ち位置が、「アメリカ好きのおしゃれな人が乗る」ものへと変化したものちょうどこの頃。アメリカ車自体は数多く輸入されて珍しいものではなくなってきたため、アメリカ車に乗ることが最終目標ではなく、アメリカ車を使って遊んだり、仕事をすることがかっこよさの象徴となった。言い換えれば、アメリカ車が一般化することで、ファッションの一部としてアメリカ車を所有する人が増えたともいえるだろう。
誰もが知っていたアメリカ車アストロの輸入ブーム。
当時はいわゆる「アメ車屋」と呼ばれる輸入車を中心に取り扱うショップが数多く存在し、アメリカ車が飛ぶように売れた時代。中でも当時の人たちの印象に最も残っているのが、シボレー・アストロだ。ほとんどがアメリカで使われていた中古車を並行輸入した個体で、ローダウンした上で、当時一世を風靡したBOYDをはじめとしたビレットホイールを装着して販売された。
当時はストック車両を見ることのほうが稀で、カスタムアストロを特集した本が何冊も発行された。それほどカスタマイズが一般的だったのだ。
当時ダッジ・ラムバンやエコノラインをベースとしたコンバージョンを輸入販売していたのが、横浜のDEEZ CREWだ。日本では数少ないアメリカンフルサイズバンの専門店として今でも業界を牽引する同ショップのオープンは’89年というから、まさに輸入バルブ時代を経験しつつ、現存している数少ないショップと言っていいだろう。
「当時は中古並行のアストロがローダウンされてビレットホイールを履いて、300万円くらいで飛ぶように売れた時代でした。うちは当時フルサイズバンやコンバージョンモデルと、’50sカーをメインにやってましたが、それでも問い合わせはすごい多くって、信じられないかもしれませんが、アストロの見積書をもらうために店に行列ができることも珍しくありませんでした」とマネージャーの中村さんは当時を振り返る。
今では考えられないが、在庫をすれば確実に売れる時代。ところが中村さんはこんな指摘も。
「もちろんいいことばかりじゃないんです。全体からすると一部なんですが、いい加減な販売をするショップが目立ち、“アメ車屋”に対する悪い印象が強くなってしまったのも、振り返ってみるとこの時代だったと思いますね」
輸入車の隆盛と衰退一方その頃、日本では……?
それでは’90年代中盤の日本車はどうだったのだろうか? ちなみに’94年にデビューをした国産車を見てみると、トヨタはRAV4、日産がルキノクーペ、ラシーン、三菱がFTO、デリカスターワゴン、ホンダがオデッセイといった面々。実に面白い車種が発表されている。
オデッセイやデリカスターワゴンの登場は、間違いなくアメリカのバン文化に影響受けたものと言えるだろう。この後続けてさまざまなミニバンが登場し、2000年代の国産ミニバンブームへと繋がっていく。あれだけアメリカ車が大量に輸入されたにも関わらず、徐々に景気が悪くなっていく日本では、一気に税金面でも有利な国産の小型車が台頭していくことになるのだ。
バブル崩壊後も自動車業界は好調を続けていたものの、’90年代後半になるとさすがに陰りが見えはじめ、輸入車台数も年々減少していく。これに追い討ちをかけるように、アメリカ車にもあまり魅力的な車種が登場しなかったことから、アメリカ車離れは急速に加速し、2000年代に入るとあれだけ走っていたアメリカ車はあっという間に街から姿を消してしまう。
ちょうどその頃、トヨタは世界初の量産ハイブリッドカー、プリウスを’97年に発売。ちなみにこのプリウスのプロトタイプが東京モーターショーに参考出品されたのはライトニング創刊直後の’95年のことである。明暗両面で、この時代はその後の自動車業界に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。
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(出典/「Lightning 2019年4月号 Vol.300」)
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