グルメ通を唸らせる!? いまが旬な山海の幸めぐり。

民俗や地域伝統文化のあれこれに没頭しがちなエディターが、あなたの日々の暮らしに、とても小さなときめきをお届けしましょう。

言葉だけは知っている作法や行事、未来をひらく温故知新、興味はあるけどよくわからない民俗のことなどについてわかりやすく紹介します。

タンポポだって食べられる! 山の恵みは山あいだけにあらず。

右から、タラの芽、コシアブラ

山の恵みが増えてきた。

タラの芽は「山菜の王様」とも呼ばれるなか、先日は懇意でいただいた「山菜の女王」を天ぷらで美味しく食べた。女王の名は、コシアブラ。希少ゆえに市場に出回ることも少ない山菜といわれる。

山菜は主に山中で採取となるが、東京圏のような住宅街でも、田舎暮らしのような食体験をやってみようと思えばできてしまう。

たとえば、春は(採取してもよい、きれいな地で)ツクシやタケノコ採りができるし、初夏は都市に自生する野生果実でジャムを作ってみたり、秋は食べられるドングリなどを調理してみたりして過ごしている。

身近なタンポポだって、実はまるごと食べられる。先日は、有志でこちらも天ぷらに。さらに、野草のノビル、ユキノシタなどを採って一緒に天ぷらに(ノビルの見ためは有毒のスイセンにも似ているので気をつけたい)。

あたたかさの到来とともに、いわゆる山の恵みが手に入りやすくなってきた。

ノビル
ユキノシタ

海ではサクラエビ、初カツオなどが旬に。

海からの恵みも増えてきた。

たとえば、サクラエビ漁。春と晩秋だけ解禁される漁で、国内の水揚げのほぼ100%が、その豊富な漁場である駿河湾産だ。漁業許可を受けてもいるのも静岡県だけ。水揚げされる静岡県・油比(ゆい)港付近の食堂などに行けば、生サクラエビ、釜揚げ、桜色が食欲をそそるかき揚げなどが盛られた、頬がゆるむメニューを味わえる。

春は、初カツオ漁も盛んだ(秋になれば、戻りカツオ)。

初カツオとは、暖流の黒潮に乗って北上してくるカツオで、さっぱりとした旬の味。カツオといえば高知県をイメージしてしまうが、宮崎県日南市に行ったときは、地場のカツオ自慢の話をたくさんうかがった。日南市こそ、近海のカツオ一本釣りの水揚げ日本一を誇っているという。だから日南で食えば旨いといわれ、地元の方と一緒に名物の定食を頬張ったこともある。

初カツオは脂少なめ、だからカツオ節の原料にもいい。

本枯節

初カツオは、カツオ節の原料にもなる。

カツオ節にも実は種類があり、お好み焼きにのせている一般的なカツオ節は、花カツオとも呼ばれ、その元は「荒節(あらぶし)」なるものである。荒節は、製造工数が少ないので求めやすい価格帯で売られている。

一方、この荒節にカビを数回つけて水分を徹底的に抜き、数ヵ月間熟成させるという昔ながらの製法で作ると、「本枯節(ほんかれぶし)」ができる。この本枯節は、発酵食品だ。

かつてカツオ節工場で工程を学び、できたての現物を見たとき、荒節は燻された真っ黒な棒状物、本枯節は木材のような棒状物だった。この棒状物が、1本のカツオから4本取れる計算。背中側の左右で2本(背節、または雄節<おぶし>という)、腹側の左右で2本(腹節、または雌節<めぶし>)になる。

ニッポンの生活文化、カツオ節削り。

カツオ節のフレッシュパックが昭和40年代中頃に登場することを思えば、それまでは台所にカツオ節削り器を置いて、カツオ節を削る行為は家庭の日常だった。削りたてをいつも食べられたなんて、今思えば贅沢なことだ。

想像するに、自宅で毎日コーヒー豆を挽いて、至極の一杯を味わっている人は世の中に多くいるだろう。しかし、本枯節を削って、毎日その素晴らしい風味をいただいている人は非常に少ないはず。

日本古来の伝統的保存食、それがカツオ節。

スローライフが根づく昨今、キッチンの新たなルーティンとしてカツオ節削りをひそやかに復活させれば、食卓もライフスタイルもいっそう豊かになれるのかも。

この記事を書いた人
中川原 勝也
この記事を書いた人

中川原 勝也

民俗と地域文化の案内人

エディター。地域伝統文化のこと、民俗のあれこれ、古民家・民藝・暮らしのこと、などを当サイトでは担当。これまで日本カルチャーを主なフィールドにしながら、国内の法人・自治体・商品のブランディングにまつわるメディア等を手掛けてきた。温故知新好きが募って、ただいま、月刊古民家誌『じゃぱとら』編集長。
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