嫌いなものが好きなものへと変わり、第2の人生を彩ってくれる。
今は職であり生きがいでもある手芸は驚くことに元々は嫌いな分野だったという。きっかけは6~7年前、伝統刺繡を教える知人から、ビーズ刺繡が盛んなルーマニアで行う“手仕事の旅”という企画に誘われて参加したこと。
10日間ほど滞在して、現地の村のおばあちゃんたちが施すビーズ刺繡をみて手仕事の良さを再確認したのだ。子どもが生まれた当初、古着のTシャツを繋ぎあわせたマットやヘアゴムなどを手作りしていたことを考えるとその時からすでにこうなる兆しがあったのかもしれない。
作品制作の上であえてルールは作らない。今日はここまで終わらせる、毎月何個作るとは決めず自分の気持ちを尊重し、自由に。好きの感情を大事にしているからこそ、本や映画から素敵だと感じた言葉を刺繡で吹き込んでいくYuccoさんの作品は量産型の商品とは違い、1つ1つに意味が込められ、Yuccoさんの等身大を感じられる。
作品で使う生地は旧いことが重要で針を通した感覚や質感が柔らかいもの、ビーズと糸は基本日本で仕入れるが、近所の人が使わなくなった糸を家まで届けに来てくれることもあるそうだ。クールなスタイルと裏腹に愛嬌のあるYuccoさんの人柄があってこそ。
今後の目標は、「言葉を添えた作品集を出版すること。なのでこれからも言葉拾いを継続して頑張ります」
考えるよりも直感で選ぶ、Yuccoさんの愛おしいもの。
インドに伝わる使い古された古布を重ねて刺し子を施したカンタという生地を主に作品に使用する。カンタの端切れにタンバリンステッチでカラフルに刺繡を施していく。
デザインのイメージは特に決めず、その時頭に浮かんだものを形にするのがYucco流。
大振りで原色が目を惹くアクセサリーの中には友人のハンドメイドもある。それは宝石以上に価値のあるモノで永く使いたくなる。
インテリアやデザインの写真集。洋書ならではの独創的な絵からインスピレーションを受け、常に感性を刺激することを忘れない。
ルーマニアのトランシルヴァニア地方に伝わる伝統刺繡。現地のおばあちゃんから貰ったものと自分で制作中のもの。
お世辞でもきれいな状態とは言えないアンティークのカーテンも刺繡を足し、白糸で上から補強すればご覧の通り生き生きする。
アメリカン・ヴィンテージのピクニックバスケット。他にも日本製の小さなかごを多く所有している。実は無類のかごコレクター。
20代から愛用しているDr.Martensのブーツはこれで5足目。普遍的でどんなシチュエーションでもマッチしてくれるこのブーツに一途だ。
(出典/「CLUTCH2023年8月号 Vol.92」)
Photo by Masahiro Nagata 永田雅裕 Text by Tamaki Itakura 板倉環
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