ライフスタイルの一部になったTriumph。
Triumphとの出会いは約20年前。Kaz氏は当時H‐Dに乗っていた。Triumphに乗るのに何かの影響があったわけではないが、ふと乗りたくなり、初めて手に入れたのが今回ライディングの撮影をさせてもらった’72年式ボンネヴィル。
当初H‐Dとの二台持ちだったが、軽快で扱いやすく、高回転まで回るボンネヴィルのフィーリングの虜になり、H‐Dを手放した。玄人のTriumph乗りは皆口を揃えて言う。「Triumphは回して乗るのが面白い」。Kaz氏もトルクで走るH‐Dとは真逆のTriumphの性質がフィットしたのだろう。
’72年式ボンネヴィルは、オイルインフレームを採用するモデル。タンク下のメインチューブが太く、車格も’60年代以前と比べてやや大きい。そのため、カスタムベースとしては不人気だが、カスタムを始めてから不人気な理由がわかり、それを自分なりのアイデアでカッコよくしようとむしろカスタム欲に火がついた。
往時のアメリカを走っていたTriumphをイメージして、カスタムを積み重ね、横浜ホットロッドカスタムショーに、13年連続エントリー。いま、個人で自分のバイクのマイナーチェンジを重ねながらショーで毎年お披露目する人は私が知る限りいないはず。情報もコミュニティも今ほどなかったが、Triumphを格好よくしたい、Triumphの魅力を他の人にも伝えたい、その熱量がKaz氏の原動力となっていた。
また、約4年前からダートレースの魅力にどっぷりとハマっている様子。Kaz氏はいま7台のヴィンテージTriumphを所有しているが、珍しいモデルを収集するコレクターとはまた違う。ストリートで乗るための車両もあるが、ここまで増えたのは、自分が走りたいレースに合わせた車両を用意するためなのだ。北は青森から西は広島まで、草レースに出るために全国を駆け回っている。
「Triumphをガレージに飾るのが楽しいタイプじゃないんですよ。全部乗りたいし、とにかく草レースが楽しいから、様々な草レースを全部Triumphで走りたい。よく壊れるのを心配されるんですが、それよりTriumphで遊びたい気持ちが勝ってるんでしょうね。街乗りも草レースもカスタムも、Triumphで遊び尽くしたいんです」。
Triumphと生きていくということ。乗り味からその魅力に取り憑かれ、そこからコミュニティが広がり、カスタムやレースなど熱中できる遊びも増えた。KazさんのライフスタイルにTriumphは欠かせない存在になっている。
そんなKazさんの愛車を紹介してもらった。
【1972 Triumph T120V】オイルインフレームの弱点を克服する緻密なモディファイ。
チョッパーのベースとしては不人気なオイルインフレームを採用する’72年式ボンネヴィル。このマシンは、ファーストトライアンフとして約20年前に手にいれて以来、何度も姿を変えながら走り続けているマシン。オイルタンクを兼ねるメインチューブの太さや車格の大きさなどの弱点を、トータルのバランスやそれ以前のパーツを加工したモディファイで克服している。
【1971 Triumph T100C】純正スクランブラーのストックを活かしたさりげないカスタム。
スモールユニットのT100Cは1960年代当時ダートレースが盛んに行われていたアメリカ市場向けに開発されたファクトリーカスタム。基本的な装備はストックだが、レース用ハンドルの採用やT100Cの象徴である左出しのハイパイプをよりシャープなフォルムのMCM製に変更するなど、ストックを理解した上で手を加えたさりげないヴィンテージパーツのチョイスにセンスが光る。
【1968 Triumph T100C】純正スクランブラーの操作性を高めたダートレーサー。
右の車両と同じT100Cをベースにダートレース用にカスタムした1台。エンジンや足回りのスペックは変更せずに、純正スクランブラーで草レースを楽しむというコンセプトのもと、軽量化と操作性を高めるモディファイを施している。タンクの左側のみオーナメントを外してフレイムスを描き、左右で異なる顔つきに仕上げた個性的なディテールもポイントだ。
【1974 Triumph TR5MX】BSAの意匠を受け継ぐTriumph純正モトクロッサー。
BSAが1971年に開発した純正モトクロッサー、B50のコンポーネンツをタンク以外そのまま使用して、Triumph がBSA を傘下に収めた1974年から2年間だけ販売されたレアモデル。Kaz氏はモトクロス用に手に入れたマシンだが、現状フラットトラック用のTriumphを修理中のため、このマシンでフラットトラックにも参戦する予定だとか。
【問い合わせ】
Triumph Riot
http://triumphriot.blogspot.com/
(出典/「CLUTCH2022年2月号 Vol.83」)
Photos by Masahiko Watanabe 渡辺昌彦Text by Yuta Kinpara 金原悠太
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