ロサンゼルスのアートシーンで注目を集める、Mark Acitelli氏のアトリエを訪問!

アメリカのアートシーンといえば、クリスティーズやサザビーズのあるニューヨークが中心のイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか? ウォーホール、バスキアなどに代表される現代アートの旗手たちが活動の場とし、第二次世界大戦前のパリにかわってアートの発信地として地位を築いてきました。一方、私の活動拠点であるロサンゼルスは街中のいたるところにグラフィティ・アートが描かれ、ストリート、スケートカルチャーなどと密接な関係にあり、東海岸のアートシーンとはまた違った雰囲気を持っています。今回はそんなロサンゼルスで活躍するアーティストを取り上げます!

絵になる、Mark Acitelli氏のアトリエ。


ロサンゼルスのダウンタウンにある、Bendix Buildingというビルの最上階。そこにアトリエを持つ画家Mark Acitelli氏。このビルは1929年に、Florence Caslerによって建てられ、建築家は、Chateau Marmountをデザインしたことで知られるWilliam Douglas Lee。もともとBendix Aviation Corporationのビルだったという、なかなか由緒ある場所にあります。

母の影響もあり、独学でアートの道へ。

Mark Acitelli /画家。1969生まれ

Markは、完全に独学でアートを学んだ画家です。母親もアーティストだったため、その影響を受けているのだそう。幼い頃は絵を描くよりも音楽に夢中で、13歳の頃、ギターを始めましたが、今考えれば、それがクリエイティブ活動の始まりでした。いつも、何かを表現するのが好きだった彼は、バンドを組み何年もの間音楽を続けたが、レコード契約も切れバンド活動が終わってしまった時、音楽の他に自己表現の他の方法を探しました。それが、絵画だったというわけです。母親の後を追うように絵画を始め、それが、自分にしっくりき、独学で画家として歩みだしたのです。

“Absence and Presence”がテーマ。


真っ白なキャンバスに、自分の好きなように絵を描いていく。静かに、たった1人で絵を描いていくことは、ロックバンドの世界とはまったく真逆。音楽は好きだけれど、ギターはケースにしまい、キャンバスをたくさん買い、毎日白いキャンバスに向かい合った日々。それから20年、今日もまた世界中の人たちに自分の作品を披露するため、描き続けているMark氏。
彼のスタイルは何かを描写をするより、物事のエッセンスをキャプチャーするというもの。“Absence and Presence”。人や物が、実際にはいなくなってもそのエッセンスは残る……そういったスピリチュアルなものと、実際の存在がミックスしたようなものをキャンバスに描いています。

残像のようなシルエットが描かれ、背景の白に溶けていく……アトリエに置かれた作品はどれもが同じテーマで描かれていた。

ほとんどがオイルペイントとビーズワックスを混ぜたもので描かれている。そうすることによって、絵の具がより固くなり、より立体的な絵を描くことができるのだそう。

筆はあまり使わず、ヘラやボロ布、手を使って描く。独学で学んだことが、このユニークなスタイルを生んだ。

より自由に、よりチャレンジができるように、キャンバスは大きなものを選ぶようにしている。今描いているキャンバスは比較的小さめ。
ちなみにロサンゼルスのアートシーンでは、ウォールアート、グラフィックアートが多くあり、ニューヨークにに比べ広い住宅が多いこともあり、大きなサイズに需要があるんです。日本だとなかなかこのサイズを飾るのは大変ですよね。

これは娘さんのハロウィン用に買った魔女の箒。これも今では立派な制作ツールに。実際すごくコントロールしにくく描きにくいが、それがまた面白いんだとか。「型にハマった考え方ではなく、ありのまま、なるようにしてなったような自然な姿が美しい」とMarkは言います。

Mark Acitelli氏を形作るもの。

アトリエの窓際に置かれたフォトフレーム。この道にMarkが進むことに少なからず影響を与えた、アーティストだったお母さんの写真が飾られていた。アーティスティックな精神がより強くなると、いつも飾っている。

もはこれがアートなのでは? と見紛うばかりの15年前に買ったブーツ。一度ペイントが入ったバケツをひっくり返してしまい汚れた時から、絵を描く時用の靴に。もうボロボロだがテープを貼ってまだ履いている。

デニムも同様に、一度汚れてしまってからずっと絵を描く時には履いているもの。これは計算して出せない味。めちゃくちゃカッコいいですね。

街中にアートが点在し、ゲッティ・センターなどスケールの大きなミュージアムがたくさんあるロサンゼルス。せっかくならエキシビジョンなどを訪れて、旬なアートに触れてみてはいかがでしょうか? 日本だけでなく、東海岸ともまた異なる西海岸らしいアートシーン、面白いと思いますよ。彼の作品はインスタグラム@mark_acetelliでも見ることができるのでぜひチェックしてみてください。

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
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