2.製法
靴作りの肝である製法。高級靴では必ずと言っていいほど話題にあがるが、実際にどういう構造なのかを知っておきたい。
グッドイヤーウェルト
ヴァンプ、インソールリブ、ウェルトを一緒にすくい縫いし、インソールとアウトソールの間にコルクなどのスポンジ状の詰め物を挟んで縫い込む。履き込むうちにインソールが適度に沈み込み、履いている人の足型にフィットしていく。ソール交換が可能。
マッケイ
グッドイヤーウェルト製法に比べると耐久性では劣るものの、最少限のパーツで作られるため、ソールを薄くすることができる。また、ステッチが靴の中にくるため、ウェルトの幅もせり出さずに作ることが可能で、スマートなフォルムを作りやすいのが特徴。
セメント
ほとんど縫い合わせることなく、アッパーとアウトソールを接着剤で貼り合わせる、最もシンプルかつ古典的な製法。作りにおいて制限がないため、自由な形にアッパーを作ることができる。耐久性よりもスタイルを重視した靴に適している製法だといえる。
ノルウェイジャンウェルト
その名の通り、ノルウェーをはじめとする北欧諸国で発達した製法。ウェルトがアッパーとアウトソールの隙間を埋めるように縫われるため、防水性が高く、半世紀ほど前までは、アウトドア靴の代表的な製法であった。手の込んだ作りで堅牢性にも優れている。
ステッチダウン
アッパーとソールをダイレクトに縫い合わせる製法。作業工程はとてもシンプルで、パーツの数も少ないため、それほど縫製技術も必要ではなく、コストパフォーマンスに優れている。しかし、リペア(修理)の観点からは、難しい製法として認識されている。
3.トゥ
代表的なトゥ(つま先の形状)を紹介。それぞれに異なった特徴があり、靴全体の印象を大きく左右する。
スクエア
先端が角ばったイタリアンブランドに多いデザイン。
ラウンド
丸くカットされた最もスタンダードでクラシックなトゥ。
チゼル
先端が鋭角に落ちたデザイン。チゼルは工具のノミのこと。
ポインテッド
細く尖った先端が特徴的。チャッカブーツに多く見られる。
セミスクエア
モード系の靴に多い、スクエアトゥより丸みを帯びたトゥ。
4.羽根
ハトメ(靴紐を通す穴)部分の革の名称。その仕様によってその靴のテイストを左右する重要なディテールだ。
外羽根ブルーチャー
羽根の外側部分がコバまで及ばずに縫い目によって切れているデザイン。米国靴に多い。
外羽根ダービー
羽根の外側部分がコバにつながっているデザイン。軍用のサービスシューズなどに多い。
内羽根バルモラル
羽根のトゥ側がアッパーのレザーに入り込むような形状で、ドレス靴に多いデザイン。
5.牛革
同じ牛革でも、実はこんなにも種類があり、それぞれに特性があるのだ。
カーフ(子牛)|生後6カ月以内の子牛
繊維が細くキメが細かいため、非常に柔らかい。さらにベビーやライトに分類される。
キップ(子牛)|生後6カ月~2年の子牛
カーフに比べてキメの細かさは劣るものの、繊維の密度が高いため薄くても丈夫。
カウハイド(雌牛)|生後2年以上の雌牛
成牛にも関わらずキメが細かい。出産経験があるため、腹部の繊維が弱く伸びやすい。
ステアハイド(雄牛)|生後2年以上の雄牛
生後6カ月以内に去勢されているためおとなしく、傷が少く品質が均一で重宝される。
ブルハイド(雄牛)|生後3年以上の雄牛
去勢されていないため気性が荒く、傷が多い。その分耐久性に優れ、革の表情も豊か。
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